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メディアグランプリ

友達は温故知新の存在


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 小林 千鶴子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
高校卒業後、そろそろ40年になろうとしている今、私達は同期で合宿なんてのをやっている。
 
地方の県立校。旧制中学からの長い歴史があり、OBも多士済済。先輩も後輩もいーっぱい。中には一家言どころか、百家言くらいあって口うるさいのもいて、煩わしいこともある。代々の決まりごとなんてのが、鬱陶しいこともある。
でも、私はこの高校が大好きだ。先年、百歳近い高齢で長寿を全うされた在学当時の校長が、交友会誌に書いていた言葉「母校は心のよすがである」が、40年前同様、今も鮮やかに脳裏に浮かぶ。
 
私達は母校の96期卒業生。毎年9月6日(前後)に「96期の日」というイベントを催している。
 
郷里が会場になるが、東京近辺の関東勢も多いことから関東でのスピンオフが生まれ、数年に一度、合同開催。
 
数年前、郷里を貫く川の河原で開催された同期BBQに参加した。私は、郷里を離れて東京で暮らすものであり、実家を頻繁に訪れるとはいえ、郷里で開催される母校の集まりには殆ど参加してこなかった。高校時代から親友が誘ってくれなかったら、いくら食い意地のはった私でもBBQには行かなかったかもしれない。
 
何しろ人見知り。何しろアウトドア苦手。何しろ「しみ」体質で日焼けが怖い。
でもたまには自分の「何しろ」を裏切ってもよいと思う。
 
そして、人生半分も過ぎてる年齢で、ドキドキしながらの初参加。
 
卒業後30年以上も経っていれば、同窓生の見かけだって変化する。私だって変わってるけど、特に男子の変化は夥しい。
体型の変化、頭髪の変化。
かつて見知っていたような、でも知らないような人が何人も。
おそるおそる自己紹介して、どうやら在校時に接触がなく、互いに存在も知らぬ人とわかるとおもむろに自己紹介。
「はじめまして」
 
30年目の「はじめまして」に笑う。同じ場所で同じ時間を3年間過ごしているのに。なんだか可笑しい。
でも、なんだか嬉しい。古くて、新しい友達ができたことが。
 
郷里に根付いて、社交的でリーダー的素質があって、知り合いがたくさんいる親友と違って、私は知らない人と話すのに勇気がいる。でも、私は食いしん坊故に料理好きだったりするもので、調理助手をしようと決めた。料理人の手先や視線を観察しながら、何をしたらよいか考える。自分の頭の中のレシピブックをめくり、次に何が必要になるかを想定したり、料理人との話題を探したり。そうして、何人かと話をするようになった。
居場所があるということは人間関係において大切なことだ。
 
あのBBQでお手伝いした牛タンの塩釜。今じゃ私が任されて、同期の集まりの度に卵白を泡立て、塩を混ぜ込んだもので牛タンを包み、丁寧にアルミホイルで巻いて火にくべ蒸し焼きする。
卵白の泡立て具合とか、塩の濃度とか、焼き具合とか、要所要所で料理人の指示を仰ぎつつ、私は名誉の牛タン塩釜係になった。
 
今年も96期の会が開催された。会の名を借りた合宿。
郷里と東京の中間のリゾート地に借りた古い貸別荘が会場。公式日程は一泊二日なのだが、料理人連中は下ごしらえの準備もあり前泊するという。
ならば、と私も前泊組に手をあげる。
 
二泊五食、温泉つき! 親友達も前泊組。類は友を呼ぶで、私の親友達は美味しんぼだから。
 
金曜日の午後、会社勤めの身は半休とったり、やりくりして三々五々会場に集う。料理人達の食材や道具を車から運びだし、エッサエッサ。はぁはぁしながら、汗かきながら、みんな口元がほころんで笑顔全開。箸が転んでもおかしい年頃に逆戻り。
 
前泊組の夜メニューは各種カレー。料理しつつ、呑んだくれつつ、片づけしつつ、話に花が咲く。
 
ともに同じ学び舎で暮らした3年間よりも、もっとずっと長い間同じ時間や同じ場を共有した人はいくらでもいるはずなのに、なぜかこの人々は格別の存在のようだ。
40年近く前の古い友達なのに、彼らといると時が新たな歩みを進めるような気がする。
 
半世紀以上生きていれば、いろんなことがある。今、この場で笑っている友達も、一歩うちに帰れば、一歩会社に足を踏み入れれば、労苦と忍耐なのかもしれない。健康を一時害して復活した友もあれば、ついに回復せず鬼籍に入った友もいる。
年回り的に親の介護がのしかかっている世代だから、本人が元気でも、こういったイベントに参加できない友もいる。
みんな、この場では笑っているけど、生きることは生やさしいことではないし、そうかと言って、苦労話を長々するよりも、この時を心ゆくまで無心に味わいつくしたい。
 
だから、みんな笑ってる。くだらないことを高校時代みたいに話題にし、大口わけて無邪気に笑い飛ばす。冗談のネタにする。ネタにして、また次回へと語り継ぎ、さらに笑いを伝承しようかというように。
この人たち、ひとりひとりがみんな等しく愛しい。古くて新しい友達。みんな、今を生きてる。
 
「牛タンの塩釜」を彼らが舌鼓打って平らげてくれてる姿に、私は勇気をもらう。
 
温故知新は、人間に対してもいえることだ。掛け替えない友達の皆に、この言葉を感謝とともにささげたい。
 
温故知新の友よ、ありがとう。

 
 
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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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