メディアグランプリ

オリジナル心電図


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:江盛咲子(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
中学一年生になりたてほやほやのある日。初めての国語の授業の日。
教室に入ってきた国語の先生は、ドキドキして先生を見つめていた私たちに向かってこう言った。
「お前らぁ、元気かぁ?」
私はものすごく驚いた。先生が、しょっぱなからそんなラフに話しかけてくるなんて! しかも「お前」だなんて言うなんて! 
そして、その次の一言はあっという間に私たちを先生の授業に引き込んだ。
「『しんないご』って知ってるか?」
なんじゃそれ? 心の中は、はてなでいっぱい。きっと皆同じような顔をしていたと思う。
先生は黒板に書いた。心内語。そして続けた。
「心内語っていうのは、心の中で発している言葉。つまり、皆が心の中で考えたり思ったりしている言葉」
反対に、しゃべって外に出す言葉を何というかは忘れたが、先生はもう一つ私たちに問いかけた。心内語と外に出る言葉とどちらが多いか。
私は一生懸命に頭をひねらせて、心内語のほうが多い……ような気がする……。と考えていた。先生が教えてくれた答えは、「心内語のほうが、圧倒的に多い」ということ。
確かに言われてみれば当たり前だ。起きている時間中、ほぼ常に何かしら心内語を発している。その多さは、時に頭をパンパンにさせる。
 
そんな心内語を外に出す手段を、私たちは一生懸命、鍛えようとしている。誰かの心に残るような言葉、画像、映像、音、感動を届けたくて、自分に合った方法で皆工夫を凝らしているのだと思う。私も、日々うまくいったりいかなかったり奮闘している。
 
そんなことを考えているとき、特殊な存在に気付いてしまった。
心内語でもあり、外に出る言葉でもあるもの。ぱっと見はきちんと収まっているように見えるが、やや心内語寄りなので、実はぐちゅぐちゅのどろどろとしているやつだ。そう、日記である。え、日記の中身がそんな状態なのは、私だけですか? 確かに、人によっては日々食べたものや出来事を丁寧に記録している人もいると思う。しかし、私は違う。見開き半ページが1日分の手帳に、その日に感じた強い感情やそのもととなった出来事を書きつづる。ときには方眼も無視して、斜めに書きなぐるため、1年が終わりぱらぱらとめくると、変化に富んだ一年が完成している。もう6年近くこのような日記を続けている。
もはや日記は、私にとって心電図みたいなものだ。何も書かない日もあるし、そういう日が連続して何か月も続くこともある。そういう空白の日々にぽつりと一言書いてあるようなのも、後から見返してみるとこのころ忙しかったなあと過去の自分を思いだすきっかけになったりする。
総じて、がちゃがちゃどろどろとあれやこれや書いてページがしわしわになっている日々や、あまり書くことがなくてページ同士が張り付いている日々は、私の心臓の高鳴りや落ち込みを見える化しているようだ。
すごく嫉妬したことも、飛び上がるほど嬉しかったことも、何もかも覚えておくには容量が小さいから、自分の頭の中からいったん出すことができると助かる。も、とても人様に見せられるようなものではないから、ただその心音を、そのままにとっておきたいと思って、気の向くままに書くのだ。
だから、アンネの日記のように自分の日記が出版されて公開されているのって本当にどういう気持ちだろう。私にはできなさそうだなぁ。相手に言うつもりもない攻撃的な言葉も、こっそり抱いた恋心も、どうも自分以外には見せられそうにない。やっぱりこの心電図は、いつかタイミングを見て処分しなきゃ……と常々思うのに、5年前の心電図などは、5年経った今でも当時の鼓動をリアルに感じられるので、やっぱりなかなか捨てがたい。
 
だから、これからは、心臓の高鳴りを外に出していく手段をたくさん身に着けたいとも思っている。世の中には表に出ている以上に、誰もが内に秘めた心内語が実はたくさん存在していて、どんどん過去に過ぎ去っていっている。過去の心電図の中で、今見返してもありありと思いだしてしまうようなことはきっと今の自分につながっているし、1人で見返しているだけでなくて皆で見ることができるように外に出したら、また誰かの心電図に刻まれて、違う歴史を創っていくかもしれない。その方法が、ライティングスキルを通じた文章でもあり、写真や音楽、スポーツであると思う。中学の先生がたった数分で私の人生に刻んでくれた出来事が、どこかの誰かの心音を高ぶらせる日もあるかもしれないと願って。

 
 
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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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