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「銀魂2」に教えてもらった大切なこと(ネタバレなし)


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【9月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:岩本義信(ライティング・ゼミ平日コース
 
「長女とふたりで『銀魂2』を観に行くけど、パパも行かない?」
とある土曜日のこと。昼食の準備しながら妻が聞いてきた。
うちの長女はアニメ「銀魂」が大好きで、録画してはしょっちゅう見ていたが、私はそれを横目で見ながら、「どこが面白いの?」と心の中でずっと思っていた。
 
「あんなおバカなアニメの実写版、わざわざ観に行く? パパは行かないよ」と答えた。
 
昼食を食べ終わって、フェイスブックを眺めていたら、飲み友達の俳優さんの記事が目に入った。「銀魂2に出演しています!これは面白いので是非見てください!」
その記事を見るなり、妻に叫んだ。
「予定変更! やっぱりパパも観に行く!」
その日の午後、急きょ妻と長女と3人で映画館に出かけることにした。飲み友達の俳優さんがどんな役で出ているかだけが関心事で、映画そのものは全く興味なかったし、期待もしていなかった。
 
ところが、これが実に面白かったのである。
あまり書くとネタバレになるので、詳細は控えるが、映画の上映中、ほとんど笑っていた。
何が面白いのかといえば、小栗旬や菅田将暉、岡田将等々、人気も実力もある若手俳優さんたちにこんな演技させていいの? という驚きとともに、その俳優さんたちが超真剣におバカでお下品な演技をしているのがおかしくておかしくてたまらないのである。それに、映画の至る所に「こんなのやっちゃって本当にいいの? 」っていう小ネタがこれでもかと盛り込まれているのもこの映画の面白さを引き立てていた。
 
「マジでおもしろかった!」
映画館を出た時に自分の第一声だった。午前中までの自分とは全く逆の自分がいた。
こんなにおもしろいんだったら、1作目の「銀魂」も見ればよかった! と思って、翌日、自宅でネット配信で「銀魂」も観た。やっぱりこちらも面白くて、大笑いした。
 
「銀魂」を見終って、思った。
「やっぱり食わず嫌いって損してるよなぁ」
そして、これまで何を食わず嫌いしてきたか、最大の食わず嫌いは何だったか考えてみた。
 
そうだ、この家だ。
 
3年前の冬、私は家探しをしていた。
6年半の間、私は家族を名古屋に残し、東京と大阪に単身赴任していた。長女が東京の大学に進学するのをきっかけに、東京で家族一緒に暮らすことにした。とりあえず、1年間は会社の社宅に入り、それから、持ち家を探すことにした。
これまでずっと社宅暮らしが続いたので、一度は持ち家にしようと決めていた。妻も同意見だった。次に、一戸建てかマンションということになるが、私は絶対的にマンション派だった。その理由はシンプルで、鉄骨鉄筋コンクリート製なので、豪雨や大型台風、それに大地震などの自然災害にとても強いということだ。この点も妻は同意していた。
まずは、社宅周りでマンション探しを始めた。不動産屋を巡り、物件を紹介してもらって、5、6件見て回ったが、これといった物件とは出会えなかった。
「なかなかいいのは無いね」
と妻と話しながらマンション見学から自宅に戻る途中のことだった。
 
「新築戸建 見学会開催中!」
と書かれたのぼりが道路の脇に立っているのが目に留まった。
 
「ちょっと見ていかない?」
戸建には全く興味はなかったが、その日のマンション見学が早々に終わって、時間が余ってて、折角なのでと妻に言葉をかけた。妻もいいわよと乗ってきた。
のぼりのあった場所から少し歩いたところに、その新築戸建はあった。
縦に細長い3階建ての一戸建の家だった。
 
私は九州生まれで、就職し最初の勤務地を離れるまでの26年間、ずっと九州暮らしだった。転勤で初めて東京に出てきた時に、何に一番驚いたかといえば、猫の額ほどの狭い敷地に建つ、縦に細長い3階建ての一戸建ての家だった。
九州の田舎で、2階建て家の縦横比が1:2、悪くても1:1の家しか見てこなかった自分にとっては、あの縦横比3:1の細長い3階建ての戸建の印象はあまりに強烈で、東京ってとんでもないところだと思った。そして、人生最大の買い物であるマイホームにあんな家は絶対選ばないと思った。
 
目の前に建っていたのは、その3階建ての戸建だった。
後学のために一度見ておくかと思って、中に入ってみた。狭い玄関から2階に上がり、リビングとキッチンを見た。思いの外、広かった。そのまま3階に上がってみると、2部屋あって、一方の部屋の窓からは広い空と遠くの高層マンション群が見えた。部屋数も5つあって案外悪くないなと思いながらも、やっぱりマンションだよなと思っている傍らで、妻が各部屋の隅々と細かく念入りに見ていた。
価格はマンションと比べると明らかに予算オーバーだったが、普段はお金に細かい妻がこの戸建にはご執心だった。その3日後、妻は一人でまた見学に行っていた。そして、その日、私が仕事から帰って来るなり、「家の件なんだけど……」と切り出した。相当気に入ったようで、予算オーバー分については自分が働いて返済できるようにするから買おうよと言ってきた。私は災害のことが頭にあってかなり渋ったが、これまでわが家を支えてくれた妻への恩返しという思いもあって、妻の希望を優先しこの戸建を買うことにした。自分が絶対買わないと思っていた3階建てを。
 
しかし、今となっては大嫌いだった3階建てが大のお気に入りになってしまったのである。
狭苦しいと思っていた3階建ての戸建。
狭い敷地にできるだけ広い建坪を確保するために、隣の家との間隔がすごく狭い。窓を開けて手を伸ばすと、隣の家の壁に余裕で手が届くほど。しかし、隣との間に空間があるので、お隣さんの音も振動も気にならないし、お隣さんへの気遣いもいらない。また、隣との隙間が狭いので風通しが悪いかと思いきや、狭いが故に逆に風が弱い日でもよく風が通るのである。そして、家の3方向が隣の家と密接しているいので、日当たりは悪いが、台風が来てもゲリラ豪雨が来ても全然気が付かないくらい静かなのだ。いずれも住んでみて初めて気付くことばかりだった。
 
「人も家も映画もなんでも、食わず嫌いはもったいないなぁ」
『銀魂』を見終ったリビングで一人寝っころがって、そう思った。
そして、「人は見かけによらぬもの」という言葉があるが、家もまた然りだと思った。
人も家も、外見に左右されて、これはダメとかこれはいいとか判断を下すのは全くの早計で、まずは会ってみて、話してみて、一緒に飯を食ってみて、相手の中に入ってみて、初めてその良し悪しが分かるという点ではよく似ている。
食わず嫌いはもうやらない。
まさかそのことを『銀魂2』を見たことで気付かされるとは思いもしなかった。そして、それ以上に主役の小栗旬さんもそんなところで役に立っているとは思ってもいないと思う。
 
<終わり>
***

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2018-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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