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メディアグランプリ

エステサロンはスズメバチの社交場だ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:斎藤多紀(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「ついにうちの旦那の浮気の証拠をつかんだのよ!」
と、お客様は興奮した様子で話を始めた。なんでも、旦那さんの財布からホテルのレシートが出てきたそうだ。
エステティシャンとして働いていた頃、何よりもキツイと感じていたのは、お客様のグチを延々と聞き続けなくはいけないことだった。私が働いていたエステサロンのお客様は、9割くらいが専業主婦の方だった。旦那さんが働きに行っている間、エステを受けて、ちょっと豪華なランチを食べて、夕飯の準備に間に合う時間までに帰る。そんなパターンだった。フェイシャルエステやボディトリートメント、リフレクソロジーをした後、メイクアップまでするフルコースは、終了までに2時間以上かかる。その間、黙っていたり、寝ていたりするお客様はほとんどいない。何をしているかというと、延々と旦那さんの悪口を言っているのだ。旦那さんがハゲてデブになったこと、旦那さんが浮気をしているかもしれないこと、旦那さんがマザコンなこと、旦那さんの足がいかに臭いかなどなど、よくこんなにしゃべるネタがあるものだと感心してしまうくらい、お客様の話はとまることはなかった。旦那さんへの不満を、毒を吐き出すように、つばを飛ばしてしゃべり倒す。その姿は、猛毒を持つスズメバチを想わせた。
 
スズメバチの中でも女王バチは、巣の中から出ず、オスのスズメバチが外から運んでくる食料を食べて子を産む。ただ、それだけだ。しかし、人間の女性はそれだけでは満足しきれなくなる。衣食住には困らず、子どもにも恵まれ、昼間エステに通えるくらいの余分なお金も時間もある。はたから見れば、何不自由ない生活を送っているように見えるお客様なのに、心の中は旦那さんへの不平不満でいっぱいなのだ。どこへもぶつけようのない猛毒のようなグチを、エステサロンに来たときに私に向かって一気に吐き出す。
 
 スズメバチのオスは、小作りが終わると死に絶えるのだという。しかし女王バチは生き延びる。今度は生まれた子どものハチが女王バチを養うために外からエサを取ってきてくれるのだ。多くのお客様が言うのは、夫と結婚したことは後悔しているが、子どもを産んだことはまったく後悔していないということだ。やはり最終的に頼れるのは子ども。子どもさえいればいい。いずれ孫だってできるかもしれない。だから、夫はいなくなり、子どもだけいるのがいい。それが本音なのだそうだが、そう都合よくはいかないのだ。
あるお客様は、
「本当は離婚したいんだけど、私には経済力がないから離婚するわけにはいかないの」
と話していた。結婚して子どもを産み育て、家事をするという生活を20年以上続けてきた、何の資格も技術もない女を雇う会社などどこにもないと言うのだ。女王バチは巣から出たら生きてはいけない。ひとりでは食料を調達することすら困難だからだ。離婚することが叶わないなら、せめて旦那さんの稼いだお金で優雅に暮らし、旦那さんとはなるべく深く関わらないようにして過ごしたいというのが多くのお客様の本音のようだった。しかし、それなら、旦那さんが浮気をしていようが、足が臭かろうがどうでもいいのではないか。家にお金さえ入れてくれれば、いいのではと思うのだが、そうもいかないのが夫婦らしい。
 
 長年一緒に暮らしていると、夫婦で話し合って決めたり、一致団結することが出てくる。たとえば、子どもの結婚話、親の介護問題、家の老朽化、自分の病気の問題などなど、年をとるほど人生のさまざまな問題が勃発するのだ。あるお客様は、自分の母親の介護を通して旦那さんのことを見直したのだという。
「うちの旦那、私の母親の介護なんて絶対してくれないと思ったの。でも、母をおんぶしてトイレに連れていってくれたり、深夜家を出ていって行方知れずになった母を必死に探してくれたのよ!」
とうれしそうに話してくれた。介護は力仕事だから、俺ががんばると言ってくれたのだそうだ。それを聞いて、これまでの積もり積もった不満がスーッと心から消えていったというから、夫婦とは不思議なものだ。そのお客様は、
「介護で忙しくなるから、もうエステには来られないわ。とっても残念!」
と言っていたが、あまり寂しそうには見えなかった。むしろ、これから張り合いのある人生を送れると、意気揚々としていた。また、あるお客様は、
「私離婚することにしたの。そして、エステティシャンの資格とることにした!」
と言ってきた。エステサロンのオーナーが、そのお客様にエステティシャンになることをすすめ、自分が働き口の面倒も見ると言ってくれたのだそうだ。ついに、女王バチが安住の場である巣を出て、働きバチになる決意をしたのだ。
エステサロンに来るお客様の毒気にあてられ、いつもストレスをためていた私だったが、こういう話を聞くと清々しい気持ちになった。

 
 
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この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-09-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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