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メディアグランプリ

会いたいけど会えない。そんな気持と同じだった


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:遠藤朝恵(ライティングゼミ・平日コース)
 
「おかあさん、掴もうとしすぎなんじゃないの」
え……。娘に言われてドキっとした。
何をどう書こう。毎週月曜日、ライティング・ゼミの締切日当日は、
いつも同じことを考える。
 
何を書いたらいいか、思いつかない。
ううん、書きたいことはたくさんあるのに。どう書いたら良いか、わからない。
それはまるで、ラブレターを書くみたいだ。
喉元まで出かかっている言葉があるのに、なんと書き出したらいいのか思いつかない。
いざ書くと、自分の気持とはズレた、なんだかちぐはくした内容になってしまう。
こんなの違う、課題として出せない!
それに似たもうひとつの感覚を私はこの夏、持て余していた。
 
ああ、もう9月に入っちゃったなぁ。
 
ベッドに横たわりセミの声を聞きながらそう思った。
例年通りものすごく暑くて、暑さを言い訳に、
考えなければいけない大事なことから逃げていた。
 
秋の終わりに個展を予定しているのに具体的な計画や構想が、全くできていない。
それどころか、肝心の「やりたい」という自分の気持が湧いて来ない。
 
「もう、止めちゃいなよ。そんなんじゃ無理だよ。
一回全部止めてしばらく休んで、やりたくなった時にやればいいじゃない」
 
信頼している人にそう言われるほどに、なんにも決まっていないし
どうにもこうにも気持が乗らない。
作品発表を終えると抜け殻になってしまうのは私の常だけど
こんなに長引いて重傷なのは、自分でも初めてのことだった。
前回の個展以来、何もかもやる気がなくなってしまったのだ。
作品自体を、手に取る気もしない。
ずっと心に留まっている虫食いのような小さなほころびも、まだ癒えていなかった。
 
そうだね、止めよう。
次回を見送るだけじゃなくて、なにか作る事そのものを。
一度ぜんぶ手放してみよう。
 
そう思って、すっかりやめてしまう気持になった。
やめると決めたら、とても気が楽になった。
11月の個展をやめたなら、10月の連休は子ども達とキャンプに行ける。
仕事も余裕をもってさばきながら、読書をする時間もできる。
塾や学校のプリントもちゃんと毎日目を通して、冷蔵庫はマメに掃除するんだ。
夕飯は子ども達に何が食べたいか聞いて、その時に食べたいものを出してあげる。
そう考えたら楽しくなった。少し気持も上向きになれた。
 
そんなある日、予約をしているギャラリーからメールが届いた。
“11月27日〜12月2日のご予約につきまして、
展示の正式タイトルと作家名、簡単な展示内容をお知らせください”
 
提示された返信期限は、3日後。ふっと回りの音が止まった。
(止めるんだよね?)と自分の声が聞こえる。
“キャンセルします”と送ってしまえば済むことなのに、その1通が送れない。
強烈な抵抗。やるにしても、やめるにしても、どうしてだろう。
心にかかった霧が、どんどん濃くなっていった。
 
今回の個展は自分にとって一つ二つ、大切な意味がある。
ずっと温めていながらまだ自分には作れないと先送りしてきたテーマだったし、
ほんとの個展、しかも遠方で開くつもりなので自分にとっては未知の領域だった。
 
“またいつだって機会はある。”
そんな下心が顔を出す。それは本当だろうか?
 
このタイミングを見送って、“その時”って本当に来るんだろうか。
 
仕事が、家族が、時間が、お金が。
ずっと自分に色んなことで“できない言い訳”をし続けて来た私が
今できないことを、先々に約束できるのか。
自分に対しての小さな裏切り。積み重ねていったらそのうち、
何かに憧れを抱いたり追い求めることを諦めてしまうかもしれない。
一方通行だった恋を、あの日諦めたように。
 
想いがあるほど掴みたいものがあるほど、そこから逃げてしまう。
それは、ラブレターを書きたいのに書けなかった、
思いを寄せてる人に会いたいけど会えなかった、そんな気持と同じだった。
 
なんにも思ってないから書かない訳じゃない。
なんとも思ってないから会わない訳じゃない。
がっかりしたくなくて、近づけなかった。掴めなかったら、悲しいから。
 
「掴もうとするの、やめてみたら?」
 
再び投げられた娘のセリフに、握りしめていた手の平をほどいてみる。
私はこの手の中に、なにを掴みたいんだろう。掴めなかったら何もかもダメなのか。
返事がなくても、想いが届かなくても。
誰かに心を寄せたことを、後悔したことがあるだろうか。
みっともなく散った誰かの恋を、笑ったことがあっただろうか。
例え拙い文章でも一生懸命に書いた自分や、毎回名前を見る同期の人達にも、
心の中で喝采を送って来たんじゃなかったか。
先週は締切りを1分過ぎて、ゼミの課題は失格になったけど、
そのおかげで投稿文をブラッシュアップすることができた。
採用にならなかった記事には鋭いフィードバックをもらえた分だけ
少しはマシな文章を書けるようになった。
採用にならなかったから無駄だなんて思ったことは、一度もなかった。
 
カッコつけるの、やめてみよう。
シンプルなラブレターを書こう。自分へ。難しい言葉じゃなくていい。
 
毎週月曜日のライティング・ゼミの締切も間もなく終わる。
風がそよそよ吹く公園のベンチで私は新しい締め切りを自分に課すことにした。
今から準備を始めるのは山も谷もあって、しんどそうだけど。
 
この秋の個展、やろう。
自分に約束したんだから。
 
空にうろこ雲が広がっていた。
夏はもうとうに終わってる。
 
***

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2018-09-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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