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就活って結局ファッションショーだったのかもしれない


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記事:末原 静二郎(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
「もし、おれがお前も立場だったら、死にたくなってたな」
 
ある日、言われたのは、胸に突き刺さる言葉だった。
 
「いや、まあ、そうっすねぇ」
 
情けない返答を返す私。
 
暑い夏、といっても今年ではない。
去年の今頃、京都は祇園四条駅真上に立つ、昔ながらのビル菊水。
 
1階、2階は京都でも指折りの老舗洋食店。夏が連日、本気を出したころ、屋上ではビアガーデンが催される。
 
「よお元気にしてたか」
 
「ま、ぼちぼちっすね」
 
「おまえ就活どうなったんだ」
 
最近の就活は3月に始まり、6月に終わる。夏本番の8月半ばには、卒業するだれもが就職先を決めている状況だった。
 
そんな中、私一人だけ、就活を終えることはできなかった。
 
中途半端に動いていた。就活っぽいことを始めたのは1月ごろ。なんとなく気合もはいって、合同説明会なるものに何個も参加した。
 
わたしにはそもそも志望業界というものがなかったからだ。
小学6年生の時に書かされた作文のことをよく覚えている。
 
「将来の夢」
 
そのお題を聞いたとき、私は難しいな、と思った。
 
そんなこと考えたことなかったのだ。
小学生のうちに、なんとなく勉強はしてきた。仕事に関する知識も、それなりにあったと思う。でも、自分がなる対象だとは思っていなかった。ずっとずっと、勉強して知識をつけておけばいいと、そう勝手に思っていた。
 
わからなかったから、受けそうなものを書いた。たしか国連職員だ。
自分でも笑ってしまうくらいよくできた設定だった。
国連職員なんて、現実どんな事をしているかよくわからないし、でも、世界に羽ばたくかっこよさがあって夢としては周りの大人が喜ぶ最高の選択なんじゃないか。
 
もしかしたら、「将来の夢」という作文の答えは、「国連職員」なんじゃないか。
 
実際、先生はそんなことを思っていなかっただろう。
小学生らしいというか、大きな夢をもって、日々それに向けて努力することが大事だと、言いたかったのかもしれない。
 
でも、おおきな夢を描くことも、小さな夢を描くこともできなかった。
 
サッカーが好きだったが、サッカー選手になれないのはわかり切っていた。
本を読むのが好きだが、小説家になる自信もなかった。
 
なにになるんだろう。何をすれば自分は満足なんだろう。
 
その時、初めて将来について考えた。
 
 
それから、時が経ち、大学生になった。
残念ながら、私は小学生のままだった。
 
まだわからなった。自分は何になりたいか。
それは迫りくる就活を目の前にして、余計にわからなくてドキドキした。
宿題を忘れた状態で、先生にあてられたとき。
話を全く聞いていないときに限って、たずねられたとき。
 
私はいつも胸がきゅっとなる。
心臓がわざとらしく動き出す。
するとみるみる脳の回転は落ちていき、頭が真っ白になる。
 
緊張して、声が小さくなる。小さい声をとがめられて、余計に自信を失う。
 
わたしが就活に直面したとき、ずっとそんな調子だった。
 
まわりを見渡すと、どうやらそうでもなかった。
「あの企業はホワイトだ」
「年収が1000万超える」
「あいつもうあの企業から内定でてるらしいぞ」
 
なんだかもう勝負は終わったみたいに感じた。
 
自分は、実は秀忠だったんじゃないのか。
関ケ原という大舞台はとっくに勝敗が決まり、みな、そろいもそろって
領土を決めたり、負けた相手をこき下ろしたりしているのではないのか。
 
そう思うのはまだは思うのは早かったんだが、でも、気持ちの面で勝敗はついていた。
 
自分はまだなにかすごいことができるんじゃないかとおもいこんでいた。
 
みんなに認めらえて、お金にも困らず、かっこいい仕事人になれるのではないか。
でも就活をはじめて気づいた。
 
みんな自分の能力や人生にいい感じの見切りをつけていた。
この感じの企業で、こんなライフワークバランスで、この年収。
 
ちょうどいいじゃん。私にぴったりだ。
 
まるで洋服をかいにいく女子大生にのように。
 
だれも背中がパックリあいた真っ赤なドレスは着ない。
風吹けばさっそうとめくれるであろうミニスカートなんかも、もうはかない。
 
ただじっくり、自分に合う洋服を予習していた。
カジカジやananで。
 
でも、まだ、着れるきがした。私は。
 
もしかしたらにあうかもしれない、どーしよう、チャレンジしようかな、でもウエスとも気になるし、身長もちょっと自分にはあわないかも……うーん。
 
そんな風に悩んでる間に、もうファッションショーは終わっていた。
 
なにを着ても自分に似合わない気がした。
だから、もう一年やることにした。
 
冒頭の先輩のセリフ。
突き刺さった。でも、言い返せなかった。
 
あいまいな情けない返事が、それに拍車をかけた。
 
もう一年、就活をやることになった。
すこし落ち着いて、自分のやりたいことを見つめた。
 
自分の着たい服は、派手なやつとかそういうのではない。
 
とにかく、昔からちょっと得意だった「書くこと」にしぼって考えた。
着たい服の方向性が決まった。
 
それは、納得できる服を見つけたも同然だった。
 
就活で悩んでいる人、大丈夫。あなたに合う服は必ずある。
それが自分の想像とは違うことがあるかもしれない。
でも、それなら、その服を、いい服にしていけばいいじゃない。
 
きらびやかなアクセサリーなんて、あとからいくらでもつけられる。
それまで、やれることをやればいいのだ。
 
仕事も服も、にあうかどうかだ。
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2018-10-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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