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関東のお蕎麦は美味しい(関西人より)


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記事:なつむ(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「うわぁ……、汁が、茶色い……!」
 
関西から来た人が、関東のお蕎麦屋さんでうどんを注文すると、だいたい驚く。
 
よく知られていることだと思うが、うどんの出汁が、関東と関西では大きく違うからだ。
私自身も、10ウン年前、そうやって驚いた一人である。
 
関西にいた20数年、和風の麺といえばうどんが圧倒的で、蕎麦を食べるのは、年に数回だったのではないかと思う。
スーパーの冷蔵品売り場でも、うどんの方が蕎麦より安くて、子供の頃からうどんを食べた回数は計り知れない。
お店の数もうどん屋さんが多かったと思う。
「美味しい蕎麦」の記憶は、夏場に外出した時に親が連れて行ってくれた、専門店の冷たいざるそば。
そこは美味しいと感じて、大学生になってから同じ店に友人を連れて行ったりもした。
コンビニの冷やし麺も食べていたが、「とろろ」がついていないと苦手だった。多分、「お蕎麦」そのものはあまり得意ではなかった。
 
その頃、お蕎麦の中でも、とくに「温かい蕎麦」が苦手だった。
毎年必ず食べる「温かいお蕎麦」といえば年越しそば。
縁起物なので盛り上がって楽しく食べている一方で、子供心に、食べ物としては正直そんなに美味しくないなと思っていた記憶がある。
専門店にも何度か行ったものの「専門店のざるそばが美味しい!」と一度覚えると、不思議なもので、そこで温かいお蕎麦を試そうとは思わなかった。
おうどん屋さんでお蕎麦も扱うお店もあったが、わざわざ選ぶことはしなかったので、美味しい温かいお蕎麦には、出会えなかったようだった。
 
そんな私が、関東で就職。
食生活も特に不自由しなかったものの、いままでのようにうどんを食べられないことは、残念な気持ちがあった。
そのくらい、関西にいた頃はうどんに依存していたのかも知れない。
関東では、外食でも扱うお店は関西に比べると少ない気がするし、扱っていても、もしかしたら美味しくないかも知れないという気持ちがあった。
スーパーでのうどんの麺の価格も、関西ほどは安くなかった。いや、関西が安すぎるので、関東が高いわけでもないとは思うが。
 
外食でも、冷たいお蕎麦は頂いていたが、なんとはなしに、全体的にお蕎麦を避けていた気がする。
関西風のうどんのお店があれば、まちがいなくそちらを選んでいた。
そんなこんなで何年も生活していた。
 
 
 
それが、である。
関東に来て10年以上が経って、今、考えてみて、驚いた。
 
生活の中でうどんよりも蕎麦を食べている場面の方が多くなっていた。
 
そのくらい、お蕎麦を食べることも、今、普通に気に入っている。
 
 
圧倒的うどん派で育ったはずの私。
何があったのだろう。
 
振り返ってみると、大きなインパクトのある体験があったというより、じわじわと変わってきたような気がする。
 
社会人生活の中で、色んな人と食事をご一緒した。
その中には「蕎麦が美味しい」という、私とは違う意見を言う人もいた。
好みが人それぞれなのは当然なので、へぇ、そうなのだなぁと思って、お話を聞く。
 
何度も何度も、色々な方と接していて、蕎麦好きの方もいて。
身の回りにお蕎麦屋さんも複数あるので、行く機会も何度もあって。
 
そのうち、お付き合いのうちと、食べてみたら、「おや?」と。
 
美味しかったのだ。
冷たいお蕎麦だけではない。
温かいお蕎麦も、美味しいなと、思った。
 
「あれ? 苦手だったはずなのに」
 
関西のおうどんとは、当然だが、ぜんぜん違う美味しさだ。
そして、関西で思っていた「温かいおうどん」とも、違っていた。
 
その時、1つの仮説が頭に浮かんだ。
 
もしかして。と、思った。
 
確かめてもいないが、今でも私はあながち外れていないと思っているのだが。
 
「関西にたくさんあるうどん屋さんのお蕎麦って、もしかして、うどんの出汁に似たもので、蕎麦も提供している?」
「関東にたくさんあるお蕎麦屋さんのうどんって、もしかして、お蕎麦の出汁に似たもので、うどんも提供している?」
 
冷やし麺の「めんつゆ」は、好みの差はあれ、東西の差をそこまで感じないのだが、「温かい麺」のときの出汁が大きく違う。
1つのお店で、うどんも蕎麦も提供しようという時に、完全に出汁を作り分けていると、ちょっと大変な気もする。
 
もし、関西ではうどんを中心に出汁が作られていて、関東では蕎麦を中心に出汁が作られているとしたら。
 
「たくさん食べられている方が、優先して発展している」のかと思うと、急にそれで良いと思えるようになった。
「そうか、関東で暮らすなら、お蕎麦をこそ、愉しめばいいじゃないか」と。
 
もちろん、私のうどん好きも、変わらない。
 
おうどんをいただくなら、関西風。
お蕎麦をいただくなら、関東風。
 
そんなふうに結論付けようと思っていたら、更に先日、こんな意見で熱弁を振るってくれた人もいた。
「最近世の中を、四国風のいわゆる讃岐うどんが席巻して、日本中であれが美味しいうどんの標準みたいになっているけど。
自分の地元ではソフト麺風のやわらかいうどんが普通だ。四国の硬めの麺より、自分はやっぱり柔らかいほうがいい。」
 
そうなのか。と思った。
 
私が見ている世界そのものが、小さすぎるのかも知れない。
 
世界の中では日本の国土は広い方ではない。でもその小さな国土でも、いろんな食べ物があって面白いものだ。
慣れた味に安心感があるのに違いはないけれど、いろんな味を楽しめると、また人生も楽しくなりそうだ。
 
いや、それにしても、関東のお蕎麦は、美味しい。

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2018-10-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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