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私が男ならK子と結婚する


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記事:斎藤多紀(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
大学時代に同じゼミだったK子は、私が男だったらぜひ結婚したい女性だった。
 
K子とは、大学を卒業してからも定期的に会ってお互いの近況を話していた。女の私から見ても、イケてる女の部類に十分入るK子だったが、ひとつ大きな悩みがあった。それは、生まれてから一度も、男性と付き合ったことがないことだった。
幼稚園から大学までずっと女子校だったK子だから、男性と知り合う機会がなかったとは思う。けれど、男子校の学園祭にもせっせと通い、合コンがあれば必ず参加し、テニスサークルにも入っていたのに、K子には浮いた話はまったくなかった。
そして、弁護士事務所の秘書として働くようになってからも、K子に彼氏はできなかった。決して男嫌いではない。高望みしているわけでもない。何か特殊な趣味を持っているわけでもない。それなのに、30歳を過ぎても、40歳を過ぎても、K子と付き合いたいという男性はひとりも現れなかった。
K子は美人だ。有名人にたとえれば、元フジテレビアナウンサーの加藤綾子さんあたりだろうか。清楚な知的美人といった感じで、とても品がある。
美人だからお高くとまっているのかというと、そんなことは決してない。大学のゼミ合宿の打ち上げでは、アイドルグループの歌マネを披露したりしていたし、冗談だっていう気さくな女だ。
しかも、手足はほっそりしているのだが、胸はでかい。顔は楚々としているのに、身体はエロティック。男性からしてみたら、理想的なのではないだろうか。
また、K子は料理もうまい。ゼミの仲間たちとお花見をしたことがあったが、K子は朝早く起きて仕出し屋で作ったような完璧な和風弁当をみんなに作ってきてくれた。しかも、デザートにパウンドケーキまで焼いてきてくれたのだ。
K子は、性格もいい。いつも変な男と付き合っては散々な目にあってきた私の悩みを、じっくり聞いてくれた。そして、そんな男にはこう言ってやりなよと、実に的を射たアドバイスをしてくれたものだ。恋愛経験がないのに、K子は男心については誰よりも詳しかった。状況を判断する冷静な目も持っていた。人を慰めるやさしさもあった。
私が男なら即告白してK子を自分のものにする。世の中の男の目はふし穴か。いつもそう思っていた。
K子は、このまま一生独身なのはさみし過ぎると悩んでいた。そして、周囲の人たちに「誰かいい人がいたら紹介してください」と頼みまくっていたのた。婚活パーティーにも行ったし、高額な入会金をとる結婚相談所にも入った。それでも、なかなか「この人だ!」という相手に、K子はめぐり合えなかったのだ。
K子は45歳になった。もう結婚はあきらめよう。このままひとりで生きていこう。お金をたくさん貯めて高級老人ホームで余生を過ごそう。そんな風に思っていた矢先、K子に運命の出会いが訪れた。
K子は犬を飼っていたので、ペットを飼ってもいいマンションに住んでいた。ある日、K子の隣の部屋に、男性が引っ越してきたというのだ。その男性も犬を飼っていた。マンションの廊下やエントランス、近所の公園でその男性とあいさつを交わすようになり、2人は次第に親しくなっていった。話をしているうちに、実はその男性もK子同様、生まれてから一度も女性と付き合ったことがないということがわかったそうだ。男性は48歳。K子よりも3歳年上だ。お互いに恋愛に縁がなく、もうひとりでかまわないとあきらめの境地に至ったときの出会いだった。そんな共通点が見つかったため、2人は急速に親しくなり、結婚する運びとなった。
K子からその話を聞いたときには、自分のことのようにうれしかった。よかったねK子。いい人に出会えて。そう思ったのだが、K子が送ってきたお相手の写真を見て複雑な気持ちになった。その男性は、K子よりも背が低く、かなり太っていた。有名人にたとえれば、お相撲さんの貴景勝をもっとミニサイズにしたような感じだろうか。美人のK子と並ぶと、およそ釣り合わない。K子、本当にこの人でいいのか? けれど、この見た目でもいいと思えるくらい、性格がステキなのかもしれないと思い直した。
K子と彼は結婚し、一軒家に住みたくさんの犬とともに暮らしている。K子によると、お互いに恋愛未経験だから、今一緒にいるのが楽しくて仕方がないそうだ。手をつなぐのも初めて、キスをするのも初めて、一緒に朝を迎えるのも初めて、とにかく初めて尽くしで新鮮そのもの。普通の50歳近い夫婦だったら、子育てや生活に疲れて、もう男女のときめきなんて皆無に近いというのが普通かもしれない。しかし、K子は今青春真っただ中にいるかのように、夫との恋を楽しんでいるのだ。幸せの形は人それぞれだし、人間いくつになっても恋ができるのだなとつくづく思った。
K子からは、毎年夫と一緒のラブラブツーショット写真付きの年賀状が届く。

 
 
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2018-10-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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