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保育園の女神たち


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:戸田タマス(ライティング・ゼミ日曜コース)

 
 
「○○保育園なんだって?
先生達がすごく若くてベテランが少ないって聞いたけど、不安じゃない?」
 
児童館に遊びに行くとよく言われます。
 
 
私の娘は、今年の四月から保育園に通っています。
世間でもよく言われているように、働くママにとって、仕事に復帰するために避けて通れないのが「保活」です。
妊娠中に分かったことなのですが、
私が住んでいる地域は、都内でもワースト10位以内に入るほど保育園に入れない地域、つまり「激戦区」と呼ばれる所だったのです。
 
「激戦区」の保活とは、隣の地域の保育園にまで見学に行き、とにかくたくさんの園に申し込みをする、区役所で「とにかく保育園に入らなければヤバイんです!」と直談判する、
など、
思わず「そこまでする!?」と思ってしまうことをやらなければなりません。
 
仕事復帰する予定のあった私は、
「とにかく、やれることは全部やろう!」と、
産休に入った妊娠8ヶ月ごろから「保活」に励むことになりました。
 
 
 
実際、かなり壮絶でした。
 
「保活」を始めてすぐの頃は、
「広い園庭があって、おやつは手作りで、ベテランの先生がたくさんいる所がいいなぁ〜」など、私が「選ぶほう」だと思っていました。
 
ところが、
保活をどんどん進めていくうちに、私が「選ばれるほう」なんだと気付きました。
 
なぜなら、まず入園申し込みすらできないのです。
見学が満席、説明会が満席で、断られてしまうのです。
 
民間が運営している園は、独自で園児の募集をするため、それぞれの園に応募条件など問い合わせ、見学や説明会に参加したことが条件なら、必ず参加しなければなりません。
しかし、それすら満席で参加できない。
 
断られていく園が増えれば増えるほど、私は焦り始めます。
 
「もう選り好みしてる場合じゃない!
園庭がなくても、おやつは市販でも、ベテランの先生がいなくても、入れるならどこだっていいや!」
 
大きなお腹を引きずりながら、たくさんの園に見学に行くのはとても大変で、
一時期有名になった保育園に関するあのツイートのように、私も日本の保育園事情を呪いました。
 
そんな壮絶な「保活」を乗り越え、
なんとか内定をもらった唯一の園が今の保育園だったのです。
 
 
 
フタを開けてみると、この保育園は、
園庭なし、おやつは市販、新しい保育園のためベテランの先生なし、でした。
正直言って、初め希望していた条件からは程遠い園です。
 
内定をもらった時は心底ホッとして、
「ああ、これで予定通り仕事に復帰できる……」と思いました。
 
しかし、入園日が近づくにつれて、
「こんな決め方をして本当に良かったのだろうか?」
と、不安に思い始めました。
 
でも、死にものぐるいで保活し、唯一もらった内定を断る勇気はありませんでした。
たくさんの不安を抱えたまま、保育園生活をスタートさせることとなったのです。
 
 
 
 
気持ちのいい秋晴れの、10月のとある土曜日。
近くの体育館を貸し切り、保育園の運動会が行われました。
 
ビデオを抱えて最前列にスタンバイする私に、
主人と手をつないだ娘が入場門から登場し、ニコニコ笑いながら手を振っています。
周りでは、先生達が忙しそうに走り回り、司会進行を頑張ってくれています。
 
 
保育園に入園して半年が経った今、気づけば
私は、心の底からこの園でよかったと思うようになっていました。
 
 
 
 
入園したての4月、想像以上に先生達が若いことに驚きました。皆21、22の「子」ばかり。中には19歳の専門学校生もおり、もう10歳以上も年下でした。
 
「こんなに若くて、子供を産んだこともない子達に娘を任せていいのか」
と本気で悩み、
 
「〇〇ちゃんがお散歩中に転んで擦り傷を……」
など、ほんの少しのケガにも過敏に反応し、
「本当にちゃんと見てたの?」と先生を疑っていました。
失礼なことに、敬語すら使っていませんでした。
 
 
しかし、毎日先生達と接するうちに、少しずつ見方が変わっていったのです。
 
 
初めに思ったのが、「先生達っていつも元気だな」でした。
 
子供と一緒に遊ぶことはもちろん、先生達にはたくさんの仕事があります。
子供達がお昼寝している間でも、保護者への連絡やお知らせの作成、保育で使うおもちゃを作り、イベントがあれば部屋の飾り付け、掃除‥。
加えて、体調の悪い子がいれば親が迎えに来るまでつきっきりで見なければならないし、
朝は早朝保育で7時から、夜は延長保育で20時まで、子供が1人でもいれば、当然先生もいなければならないのです。土曜保育だってあります。
 
なのに、いつ行っても疲れた顔を見たことがない。
 
保育園にお迎えに行くと、子供より先に先生達が
「お母さんおかえりなさ〜い!」
と、キラキラした笑顔で言ってくれます。
 
その笑顔をみると、きっと娘は思い切り遊んでもらったに違いない、と安心するようになったのです。
 
 
よく考えれば、保育士の待遇が悪い、離職率が高い、給料が少ない‥と、
世間的にも話題になるほど保育士不足の日本で、
あえて保育士になる人達に、やる気のない先生などいるはずがないのです。
実際、保育士の合格率は意外にも低く2割程度で、実技でも音楽、工作、絵本の読み聞かせができなければいけない。
 
それだけではありません。
皆本当に子供が大好きだといいます。
 
 
ある先生は、
「保育士が少ない都会の保育園で少しでも役に立てれば」と、沖縄から上京したそうですし、
 
別のある先生は
「保育園の子供達がかわいくて「天使」すぎて、もう彼氏作ろうって気にもならないんです〜」と笑います。
 
 
娘の担任である22歳の先生には、
「私たちの保育って昼間だけだしお休みもあるから頑張れるけど、
ママは休みなく頑張っていて本当にすごいなと思ってて〜!
せめて保育園に預けてる間だけでも、ママが安心してお仕事できるように、精一杯頑張ります!」
と言われてしまい、思わず涙が出ました。
 
 
私は、ようやく気づくのです。
年齢が若いこと、子供を実際生んでないことなど、本当に何の問題にもならない。
園庭がなかろうが、市販のおやつだろうが、
大事なのは「いかに子供を大切に思ってくれるか」だということ。
それにはベテランも新人も関係ないということ。
 
先生達は、素直でまっすぐに子供を大切に思ってくれる。
謙虚でまっすぐに、笑顔を絶やさず頑張っている。
 
子供達が保育園の「天使」なら、
まさに先生達は、保育園の「女神」だと思うようになりました。
 
 
私は先生達に敬語を使うようになり、もう「年下」と思うこともなくなりました。
今は心の底から先生達を尊敬し、信用しています。
 
 
 
 
運動会の日、
無事にかけっこ競技を終えた娘に感動して泣きだした私に、
担任の先生が
 
「〇〇ちゃん、本当に成長しちゃって、私も寂しいです!」
 
と話しかけてきました。
それも、泣きながら。
 
私は「先生、もうそれお母さんじゃないですか!」と、笑って返し、
運動会も大盛況のうちに終わったのでした。
 
 
 
娘はまだ1歳クラス。これからも保育園生活は続きます。
 
娘の成長をあたたかく見守ってくれる「女神」がたくさんいることに感謝しながら、まだまだ続く保育園生活を全力で楽しみたいと思います。
そんな「女神」たちに娘を預け、
私は、今日も笑って仕事に向かうのでした。
 
先生、いつも本当にありがとう!

 
 
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2018-10-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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