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メディアグランプリ

二つの時計を手にした決断


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合沙優(ライティング・ゼミ木曜コース)
 
「いま、めっちゃ欲しい時計があるっちゃん! ほら、これ見て。可愛いでしょ~。」
2年前の夏。私は彼にとある時計の写真を見せていた。イタリアかどこかのブランドで、たまたまSNSで小洒落た画像を見つけて一目惚れした。しかし、まだ私の住む福岡では販売されていなかった。ネット通販か、大阪でPOPUPがあったくらいだった。どうしても実物を見たいし。欲しいから大阪に行こうかな~。なんてことを話していた。
 
それから1か月ほど後、天神で買い物をしている時、ふと時計屋が目に入った。そして、「期間限定販売」の文字が目に入った。
 
ある。あの時計が、ある!
 
ピンクゴールドの丸い時計盤に、茶色のレザーのベルトのものと、ゴールドの丸い時計盤にゴールドのメッシュベルトのもの2つを試着した。可愛くておしゃれな時計を身に着けた、鏡に映る自分がなんだかとてもいい感じに見えた。
 
来月は誕生日だし。ずっと欲しかったし。可愛いし。どうしよう。買うしかない。
 
そこからはほぼ即決だった。念願の、少し大きめの42mmのピンクゴールドに茶色のレザーの時計を手に入れた。完全に浮かれていた。予想していなかった出会いに、感動していた。
 
次の日、会社に着けていくと「その時計可愛いね!」「どこの時計?」とたくさんの人が褒めてくれた。そして、上機嫌の私は彼との約束に向かった。
 
「見て!! 新しい時計、可愛いでしょ?」と見せびらかすと彼は完全に固まった。リアクションがゼロだ。こんなに人ってあっけにとられた表情をすることってある? あれ。なんだか様子がおかしい。そこでようやく思い出した。
 
あ、わたし、誕生日プレゼントにこの時計をアピールしていたんだっけ……?
 
「信じられない! 嘘でしょ!! あんだけ言っておいて、自分で買う!? 1か月後の誕生日プレゼントを買っている俺が素晴らしすぎたのかな!?」と、泣きそうな顔で綺麗に包装された同じブランドの時計の写真を見せながら訴えてくる。
 
もはや笑いしか出なかった。ドイツビールの祭典で、陽気な音楽をBGMに浮かれた人たちが大きなグラスでビールを楽しんでいるというのに、私たちの間にはきまずい空気が流れていて、とりあえず乾杯した。
 
いつも、ノリと勢いで決断をしてしまう。「テンションが上がること」が私を決断させる。心が動かされること。感情が高ぶるものごとが大好きだ。逆に言うと、テンションが上がらないものはなかなか決断できない。ちょっと微妙な飲食店のメニューや、なんだか気の乗らない飲み会の出欠の返事。小さなことでも、テンションが上がらないものの決断は難しい。
 
時計の彼から別れを切り出されたのはあの事件から数か月後。それが原因ではないが、いや、少しは原因だったのかもしれないが、お別れした。別れの決断というのも、難しい。心に折り合いがつかない。失恋ソングとかに浸って、「別れ」の悲しい感情を消化させようとした。
 
物に罪はない。やはり、ずっと欲しかった、念願の時計は可愛い。デスクで仕事をしている手元を見ると少しテンションがあがるし、お手洗いに行った時に目に入る腕時計を身に着けた自分の姿にも少しテンションがあがる。でも、何か心が晴れない。
 
小さい方より罪悪感がつまった42mmのピンクゴールドの時計。これは、最初に見せびらかしてからは家に保管していた。プレゼントしてもらった、小さい方の時計を身につけたかったから。でも、どうしようか。
 
この罪悪感を開放して、新しい時計を買おう。2年後、ようやくそう思い立った。
 
会社のお昼休みに、とあるweb記事を読んだことがきっかけだった。平成最後の夏に恋人と別れた人が、思い出の品をフリマアプリに出品していた。かなり良質なPR記事だった。まさに心動かされ「テンションが上がった」
 
帰宅後、すぐフリマアプリを開いた。せっかく可愛いんだから。より良い写真を撮らなくては。試行錯誤して、小洒落た写真に近づけようとする。ピンクの背景に、茶色のベルトが可愛い。
 
商品の説明文を書く。「とても可愛くてお気に入りですが、手放すことにしました」
 
「いいね」はたくさん貰えるものの、値段のせいかなかなか売れない。それでも、通常の半額以下だ。お買い得なのに。私の罪悪感が詰まっていることがばれているのだろうか。
 
いや。出品を決意した時点で、気持ちの整理はついていた。ちょこっと他とは違う経験を積んだ私の可愛い時計は、罪悪感などではなく、かつて私が感じたときめきが詰まっているはずだ。写真を見てテンションが上がったどなたに引き取っていただけますように。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-11-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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