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私の「黒革の手帖」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:小林 蝉丸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
デベロッパーと云う仕事の特性上、日常生活の中で多くのテナント(取引先)の人達に会う。
外部の人と会う際には、商業施設の運営者として「出店交渉」や「退店交渉」の様な交渉事をおこなうのだが、私の場合協議に概ね1時間から2時間の時間がかかる。
 
「出店交渉」に関しては「物件の概要」やそれに伴う「経済条件(賃借料)」等のリーシングキットに書いてある事を話すのだが、そこに書いてある事を話すだけなら、恐らく15分もかからない。また相手の立場が経営者に近ければ近い程、その場で判断出来るので、本当は「単なる相手との出店交渉」だけなら30分か、長くても1時間以内に終わる。
 
では、なぜ私の商談がそんなに長くかかるかと云うと、「会った相手をより深く知りたい」と思うからだ(交渉相手にそう思ってしまうのは「大阪人」の血のせいなのかもしれないが)。
 
さて、長い話を円滑に進める為には、幾つかコツがある。
先ず、相手は「商談」の為に来ているので、無駄話をしに来ている訳ではないと自覚する事。
次に、相手が本題(商談)以外に興味を示す話題=「何らかの話のフック」を探る事。
最後に、「何らかの話のフック」に反応した相手の話を「共感」して傾聴する事、の3点だ。
 
商談の合間、相手の出身、年齢、家族構成を出来るだけ聞きだして「何に興味があるのか?」、「どういう思考方法をする人なのか?」「所属している会社内での立ち位置は?」等に関心を持って話を進めて行くと、相手が「反応するフック」が何か所か出てくる。
 
例えば相手が「大学生の時にアメリカンフットボール部に所属していた」と云う事が判れば「アメフトのルールってよく解らないんですよね。前を走る味方の選手にボールを投げたらいけないのはどうしてなんでしょうか?」
「失礼ですがそれはラグビーの話であって、アメフトのルールではないですよ」
「それは失礼しました。それなら少しアメフトのルールを教えて頂けませんか?」
と云う様な会話を最近している。
 
また相手が「評判のラーメン店」を経営していた場合は、次の様なやり取りをした。
「○○さんは、どこかの店で修行されておられたんですか?」
「いや、私はどこの店で修行した訳でもなく、そもそも飲食店も未経験だったんですよ!」
「それなら、なぜ飲食店を? また、なぜ敢えてラーメン屋を選ばれたんですか?」
 
ある意味、素直に相手に関心を持っている事が解ると、相手も心を開いてくれる事が多い。
それは今までの経験の中で解っている。
どんな人でも「自分」に関心を持って貰えるのは嬉しい。そしてそれが自分の得手な「仕事」や「趣味」の事であれば尚更だ。
 
また2時から始まる商談の際「この後も商談があるので3時迄には切り上げさせて頂きます」なんて言われると、逆に私はワクワクしてしまう。私が3時前になって
「もうこんな時間ですね。次のアポがあると仰っていたのでこの辺でお暇します」と言うと「いや、次の商談は遅らせます。△△さんとお話しているのと楽しいので……」と言われる様になれば、大体商談も上手く行く事が多い。
 
「これって何かに似ているな……」と思っていたら、ある意味「銀座のクラブのお姉さま方」の話法と同じだと気づいた。
要は自分のお店に来店されたお客様を「気持ちよく」お迎えして、「楽しい時間」を過ごして頂き、「再び来店(リピート)」して頂く為の「トーク術」と同じなのだ。
(「銀座のお店」には縁がないけれど、テレビドラマで見るのはそういう感じが多かった)
 
実は、私は来客されたお取引先様とのちょっとした会話を、自分の手帖にメモしている。
 
本家の「黒革の手帖」で主人公は「脱税のための架空名義口座のリストを黒革の手帖に書き写し」ているのだが、私の「黒革の手帖」には「本人の家族構成」や「交友関係」「出身高校や大学」、「最近の関心事項」等を脈絡なく書き付けていたりするのだ。
つまり本家の「誰かを脅したり、騙したりするために付ける手帖」とは異なり、私のは「誰かと仲良くなるための手がかりやヒント」を集めた手帖になっている。
 
もちろん、出店協議は「企業対企業」の話であり、そこに出資をする投資家や銀行が絡んでくるので、交渉窓口の一個人と仲良くなっても、余り意味がないと云う現実もある。
ただそれでも、私はこうして出会った人達の事を覚えておきたいと思う。単に仕事上の関係で終わるのが普通でも、その中で出会った人達と交わした会話だけは残しておきたいのだ。
 
そして、私は今日も新しい取引先に出会い、「黒革の手帖」をまた1ページ増やしている。
 
***

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2018-11-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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