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メディアグランプリ

「ライティングゼミ液」を人類の細胞にたらす


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【12月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田中 眞理(ライティング・ゼミ特講)
 
 
「よっしゃ行こか」
運転席の夫が言ったので
「よっしゃ行こか」
と反復した。
 
紅葉の季節。朝6時半、早起きして、ドライブの計画を立てた。「よっしゃ行こか」。
 
「……」
夫がこちらを見た。
「……?」
無言で見返した。
 
「あのう、『ティッシュとって』って言ったんやけど」
「え!『よっしゃ行こか』じゃないの?」
 
そういえば鼻水。
 
あわててリュックサックからポケットティッシュを取り出す。
笑うしかない。
 
夫54歳、私48歳。
ふたりとも、少々「聴こえづらい」という現象がはじまっている。
 
夫はもともと、少々聴こえづらい、という特徴をもっている。耳鳴りだ。
話しかけるとと、ほぼ毎回、「え?」と聞き返すのだ。
かつてはその「え?」に、少し傷ついてしまって、もう2回目を発するのが嫌になることがあった。
それで、1回目から、ボリュームを上げてゆっくりと話しかけるようにした。
すると、今度は夫が傷ついた。
いくら大きな声でゆっくりと話しかけても、完全に無視、という状態が続き、さすがに聞いてみた。
「なぜ、絶対に聞こえるボリュームで話しかけてるのに、知らんふり?」
ゆっくり、大きな声で話しかけられると、上から見下されているような気持ちになって、返事したくなくなるのだそうだ。
私は、知らずして、彼のプライドというか、尊厳というか、大切なものを傷つけてしまっていたのだ。
 
そんなことを経ながら、少しずつ、お互いに「聴こえづらい」という日常がやってきた。
何度も同じ話をお互いにするので、端からすると面倒くさい感じがあるかもしれないが、「お互いさま」という気持ちがあるものだから、まったく気にならなくなった。
1回話すのも、2回話すのも、トータルの時間はそんなに変わるものではない。
1回で聞き取ってもらわないと、時間がたりない、そんなものでもない。
2回話しても、まだ理解してもらっていないな…と感じることもある。3回目に突入することもあるし、まいっか。とその話題を中断することもある。それでいい。
聞き間違いは、時に楽しいネタになる。
 
聴こえにくくなることは、ひとつの不便さだけれど、
相手を思いやるきっかけになった。
相手が本当はどう思っているか、どう感じているか、少しばかり深く知ることができた。
ストレートに運んでいた事柄が、寄り道しながら進行していく面白さ、みたいなものを感じるようになってきた。
 
ライティングゼミに通い始めてから、こういう思考回路が形成されつつある。
「どんなにネガティブな事実も思考も、ポジティブな切り口で解釈できるのではないかという期待をもって向きを変えながら眺めまわし、触りまくる」
そして、えいっと文字に変換するのだ。
 
変換するタイミングの見極めは、いつも大成功ではないが、毎週の2000字課題は、「不確かで、ぼんやりした自分の輪郭を少しずつはっきりさせる」作業だと実感できる。
そこに、気づきの小さな喜びを感じる。
 
「書くことは強い承認欲求を大切にし、満たすこと」最初に習ったこと。
このことも、ずっと考えている。
「生きている人は、多かれ少なかれ承認欲求を満たすために、『いいね』をしてもらうために生きている」という事実に気づく。
 
話していると、気が付けばご自身や子ども、ご自身の仕事の自慢話になっていく、というひとがいる。
ああ、「いいね」が欲しいんだ、と思う。
そう考えはじめると、かつては「また自慢してるわ」「聴きたくないな」と上の空だった話が、違って聴こえるから不思議だ。
誰かに、「いいね」「すごいね」と言ってもらうことで、承認欲求を満たしたいという、普通の行いなのだ。やさしい気持ちで話を聴くことができる。
 
自分だってそうだ。
「焼きたいからパンを焼く」「生業としてパンを焼く」それも事実だけれど、「おいしい、と感じてもらいたい」そう思って焼くのも強い事実だし、それが喜び、そして原動力だ。
「何度もリピートして買っていただく」それも私にとって心強い「いいね」になる。
 
ライティングゼミは、私の心の細胞に、1滴の強力なエッセンスをたらしてくれている。
心がぱっと明確になり、自分の細胞のひとつひとつを丁寧に扱いたいと思わせてくれる。
 
無性に実験がしたくなった。
小さいころから、子どもたちにもこの事実を教えるのだ。
 
「自分のことは、自分でしましょう」と幼いころから言われたきたように、
「自分のことは、自分で『いいね』しましょう」という教えが、家庭や学校であってもいいのではないだろうか。
 
「人の嫌がることはしてはいけません」と同様、
他人にも「いいね」してもらいたいときは、他人が本当に「いいね」したいと思うように、工夫してみましょう。
 
「何事も前向きにチャレンジしましょう」
どんなにつらいことも、嫌なことも、どこかに「楽しくなる抜け穴」があります。
探してみましょう。それを文章に書いてみましょう。
 
じわじわと、心豊かな日本人、そして人類がつくられていくはずだ。そんな気がしてならない。
 
***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2018-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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