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お祈りメールを受け取りまくった私が持っていた武器


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:K子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
「慎重に検討致しました結果、今回は採用を見送らせて頂くことになりました。今後のKさんのますますのご活躍を、心よりお祈り申し上げます。」
 
また、祈られた。
 
昨今の就職活動では、企業から不採用通知として届くメールのことを、就活生の間で「お祈りメール」と呼ぶ。企業が不採用の旨を述べたあと、締めに「今後の活躍をお祈りします」と祈願して下さるからだ。
こんなにありがたくないお祈りはない。
 
わたしが新卒の就職活動をしていた時期は、就職氷河期と呼ばれており、わたしは祈られ続けていた。      
わたしには、これといった特技がなかった。例えば、
「コールセンターでバイトをしていたので、電話応対は得意です」
だとか、
「留学していたので英語が話せます」
といった、社会人になって活かせるような経験をしていなかった。
遊び呆けていて、勉学に勤しむこともなく、資格も取っていなかった。
就活に活かせるようなことをしてこなかった学生生活を、ただ悔やんだ。
 
どんどん就職先が決まっていく友人達に、どんどん求人が減っていく企業。
それでもまだ、内定の出ていないライバル達はたくさんいる。
就職先が決まるなんて、なんだか奇跡のように思えた。
電車で、目の前に座っているサラリーマンを尊敬した。この口を開けて寝ているサラリーマンも、就職活動を勝ち抜いた猛者なんだ。そう思うと、見る目が変わった。
 
途方に暮れていたわたしは、友人に誘われて、ある団体が主催している就活セミナーに参加した。
その団体は、自治体が助成している就職活動の支援機関だった。無料でエントリーシートの添削や、面接の練習をしてくれるので、わたしはそこに通うようになり、Iさんという女性職員の方にお世話になった。
通い始めて数ヶ月が経った頃、わたしはある会社の選考を受けることになった。
その会社は、わたしが望んでいた条件をほとんど満たしているような会社だった。
「この会社に行きたい」
今までにないほど、強く思った。
エントリーシートと筆記試験を通過し、Iさんに面接の練習をしてもらうことになった。
「早口になってる。ゆっくり落ち着いて」
「原稿をそのまま読んだような話し方じゃ、相手に響かない。自分の言葉で伝えて」
と様々なダメ出しを受けた。
もうすぐ大事な面接なのに、こんなことで大丈夫だろうか、と気を落とす私に、Iさんはこう言った。
「でも笑顔は完璧。新卒採用の良いところは、特別な経験や知識を何も持っていなくても、この人と働きたい!と思ってもらえたら、採用してもらえるところ。あなたには、そう思ってもらえるような笑顔がある。その笑顔はあなたの最大の武器になる」
 
確かにわたしは、普段からよく笑う方だった。しかも緊張するほど笑ってしまうという習性があった。緊張を緩和させようとして、無意識に笑ってしまうのだ。
その時期にセンターに通っていたのは、中々内定がもらえず、就活が長引いていた学生ばかりだった。学生達は、焦燥感と悲壮感がにじみ出て、みんな暗い顔をしていた。
もちろんわたしも焦っていたし、不安だらけだった。
しかし面接の練習でも緊張していたわたしは、その緊張をごまかすために、とてもニコニコしていたようだ。
 
この就職支援センターに通い始めた頃は、エントリーシートさえ中々通らなかった。でも諦めずに頑張っていれば、色々な会社の選考に進めるようになっていった。
それでも、「また落ちたらどうしよう」「また持ち駒が0になるのでは」と、気を抜いたら襲ってくる不安に、いつも押し潰されそうだった。
そんなわたしに、「笑顔が武器になる」というIさんの言葉は、大きな勇気と自信をくれた。
採用面接は学校のテストとは違う。明確な正解なんてないんだ。ただ一緒に働きたいと思ってもらえること、それが大事なんだ。だったら、とびっきりの笑顔で臨んでやる。
 
迎えた最終面接、わたしは上手く話せなかった。言おうと思っていたことが飛んでしまったり、受け答えがスムーズにできない場面があった。
それでも自分の想いを自分の言葉で、そして最後まで笑顔で話し通した。
 
翌日、わたしの携帯電話が鳴った。
採用担当者が面接について、丁寧にフィードバックしてくれた。そして最後に、
「Kさんはとにかく笑顔が良くてね。それが決め手でした。4月からよろしくお願いします。」
 
その言葉を聞いて、10ヶ月間に渡ったわたしの就職活動は、おわった。
 
笑顔採用、とまで言うと過言かもしれないが、採用担当者が言うように、笑顔が採用に影響したことは間違いないだろう。
わたしの場合、笑顔は緊張にも比例する。面接中、緊張とともに、終止ニコニコしているわたしを見て、最初は険しかった面接官も、引っ張られるかのように笑ってくれた。
人の表情は合わせ鏡だと思った。
笑顔って本当に武器になるんだ。
笑顔の偉大さをひしひしと感じた。
 
後日、お世話になったIさんの元を訪ねた。
ここに来るまで、長かった。つらかった。そんな就職活動を支えてくれたIさんに、やっと良い報告ができる。
今までにないほど軽い足取りで、就活支援センターのドアを開けた。
 
「内定、もらいました!」
 
そう伝えたわたしに、Iさんは、心から喜んだ顔を向けてくれた。
 
私が今まで見た中で、一番の笑顔だった。
 
***

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2018-11-17 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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