メディアグランプリ

「ねんトレ」は赤ちゃんではなく、親のトレーニングである


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記事:月岡カツヒロ(ライティング・ゼミ 平日コース)
 

夜泣きが止まない。数時間おきにぐずる。
抱っこしたり、おっぱいをあげてないと寝ない。
添い乳しながら何度寝落ちしたか。
「背中スイッチ」が本当にあるんじゃないないかと思うくらい、布団に置いた途端に起きる。
 
昼間のかわいい笑顔でチャラになると思っても、寝られないお母さんは精神的に疲弊していく。目に見えてやつれていくならまだしも、責任感の強いお母さんはそんな素振りを見せないように、気丈に振る舞う。母は強し。
 
僕の妻は夜泣き対応で朦朧としながらも洗濯から掃除、深夜帰宅の僕の食事の用意まで、あらゆる家事を完璧にこなそうとしてくれる、そんなお母さんの一人だ。そんなに頑張らなくてもいいのだが、子どもの世話も家事もすべてこなそうとしてくれる。週末くらいしか子どもの世話も、家事もできない僕は感謝しても感謝しきれない。
 
子どものハーフバースデーが過ぎたある日、仕事から帰宅したら、妻が「添い乳をやめようと思う。ねんトレをしよう!」と一冊の本を渡してきた。2~3時間ごとにぐずっては、添い乳をしていた妻は限界だったようだ。その本には「ねんねトレーニング」、略して「ねんトレ」について解説されていた。
 
「トイトレなら知ってるのだが、そんなトレーニングもあるのか」とパラパラとめくって、要点だけ押さえた。まず赤ちゃんと親にとって負担を強いるが最短1日で完了するハードモードと、数日間かけておこなうソフトモードがあるらしい。時間もないので、迷わずハードモードでいこう。すまん、息子よ。
 
詳しいやり方は本に任せるとして、とにかく僕が出した結論は「親の我慢と覚悟が大事!」ということだ。ねんトレの唯一無二のアプローチは、泣こうが喚こうが、何があろうと寝入るまで見届ける、抱っこも添い乳もない状態で寝ることを覚えさせることだと理解した。添い乳に慣れてしまった赤ちゃんは、もうそれ無しには寝られない体になってしまっている。もうそれは何かの中毒かのように、乳首を欲してしまっている。さらに、赤ちゃんは睡眠も浅いので、ふと目覚めた瞬間、寝入ったときと同じ状態、つまり乳首をしゃぶっていない状態であることに不安を覚えて泣くのだそうだ。ここはなんとしても、妻の乳を僕のもとに取り返そう。
 
また、「夜泣きは可哀相じゃない」とお母さんが認識する、心を鬼にして泣いてる我が子を放置することを覚えなくてはならない。泣いている我が子をそのままにするなんて、と思うかもしれないが、赤ちゃんも逆に寝られなくて困っているのだ、とそう思い込む必要がある。この先の自分の睡眠時間を確保するための手段として、妻を説得した。
 
「ねんトレ」初日。トレーナーは僕だ。
土曜の夜にトレーニングスタート。僕はスパルタコーチの気持ちをつくって、息子と横になった。「さぁ寝るぞ、息子よ!」と優しい眼差しで横になった息子に目を落とすと、すでに泣き出す直前だった。そのまま大声で泣き出した息子。お腹をトントンで軽く叩こうとすると、はねのける。手足をバタバタして、泣き叫ぶ。本当に大丈夫なのか。疑心暗鬼になりつつも、スパルタコーチは息子を「寝れる、大丈夫だぞー」と小声で囁きながら見守った。
 
その後1時間以上、息子は泣き続けた。別部屋にいた妻は、とても泣き声に耐えられなかったようで、部屋から一番離れている洗面所に籠もり、音楽をかけながらネイルをいじっていたそうだ。僕もこのまま泣いてたら喉がおかしくなってしまわないか、実はどっか具合が悪いのかなどと心配した。何度も抱き上げようとも思ったのだが「延々と泣き続けるわけじゃない」と、ぐっと堪えた。
 
そして、その時は唐突に訪れた。
トレーニング開始から1時間半後、何の前触れもなく、ふっと泣き声が止んで「すー、すー」という寝息が聞こえてきた。
 
寝た。本当に寝た。
 
洗面所にいた妻に声をかけたら「ウソでしょ」と半分信じてなかったが、息子の寝顔をみてただ驚くしかなかった。なんだ、添い乳しなくても寝るんじゃないか。その後、息子は朝までに一度起きて1時間くらいぐずったが、添い乳無しで再び睡眠に突入した。この日は息子がお母さんに頼らずに夢の中にいけた、初めての日だった。それは同時に、妻にとっても思う存分に睡眠を貪ることができた日になった。
 
こんなに簡単にできてしまうのかと、疑り深くなる。たまたまじゃないかと。
ただそれは、杞憂に終わった。
 
翌日は妻が風呂に入っている間にトレーニング開始。抱っこしながらウトウトさせて、そのまま布団において、ものの数秒で息子は寝息をたて始めた。「はやっ」と若干笑いがでてしまうくらい。そのまま僕も寝てしまった。息子は朝方まで一度起きて、多少ぐずったが、もう息子は添い乳を必要としなくなっていた。
 
どれだけギャン泣きしても、抱きかかえなければ可哀相だという思い込みを捨て、いつか寝入ることができると信じて待つ。細かいテクニックは色々あるようだが、根幹はこれ以外にない。まさに親側の「我慢」が最も重要だ。とても簡単なことなのに、みな出来ないのは現代の親たちが過保護になりすぎてしまったからかもしれない。
 
夜泣きに困るお父さん、お母さん。
お二人に「大いなる我慢」を強いますが、お子さんが一人で寝られるようなサポートが必要です。お子さんが寝られるまで、ずっと見守ってあげてください。朝まで泣き続けることはありませんから。たぶん。

 
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2018-12-27 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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