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メディアグランプリ

不法滞在になりかけて、笑顔のベトナム人と走り回った件


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西田博明(ライティング ゼミ平日コース)

「助けてください。あと25分で出国審査を受けないと、不法滞在になってしまうんです」

ハノイ空港。手荷物受取コーナー。
自分の顔が、青ざめてるのがわかる。心臓がバクバク、のどはカラカラ。唾を飲み込んで、深呼吸して、なんとか気持ちをおちつけようとする。

「何時の飛行機に乗るの?」

青いアオザイの地上スタッフが、的はずれなことを訊いてくる。

現在、23時35分。日付が変わるまで、25分。

国内線から国際線に乗り換えるには、バスに乗って国際線ターミナルまで行かなきゃならない。少なくとも10分はかかる。それから、発券、荷物検査、出国審査……どう考えても時間が足りない。

なのに、ターンテーブルは、ぐるぐる回り続けるだけ。荷物はでてこない。

地上スタッフは、「ドアを出たら左側に進んで、シャトルバスに乗ってください」と繰り返すだけ。

もう1度説明する。できるだけわかりやすく、丁寧に。
「あと25分しかないんです。不法滞在になっちゃうんです。でも荷物もまだ出てこない」

「……荷物が早く出てくるといいですね」

この人は無理だ……

諦めて荷物を待つ。深呼吸を繰り返す。

やっと出てきたスーツケースを引っ張って走る。シャトルバスの停車場を見つけた。でも、バスが来ない。

どんどん迫ってくるタイムリミットを待ちながら、後悔していた。
どうして、ちゃんと準備しておかなかったんだろう。

2週間ほど前、僕は日本を出発した。年末年始をまたいだベトナムでの仕事。関空のカウンターに行ったら、いつまでたっても発券してくれない。帰国の便の、ベトナム国内での乗り換えの時間が、日付を越してしまっているのが問題らしい。

「ビザなしの滞在ですね。ダナン発の飛行機が、23時05分にハノイに着陸したら、すぐに出国審査を受けてください。ビザなし滞在は、その日がリミットです。24時を越した時点で、不法滞在となってしまいます」

出国審査は、21時過ぎのダナン発に乗るときだと思ってた。だから、大丈夫だと思っていた。でも、出国審査は、乗り換えのハノイでやることになるらしい。そうすると、着陸が23時を超えて、時間がぎりぎりになる。国内線と国際線は、別のターミナル。

でも、調べたてみたら、ターミナル間は30分あれば移動できるし、何とかなるだろう。そうタカをくくっていた。

だけど……飛行機が遅れてしまった。

やっとバスが来た。乗り込んで携帯を見たら。23時47分。あと13分しかない。

バスは、うんざりするような安全運転で、国際線ターミナルに向かう。万が一の時ワイロに使えるかと、ドルのお札をポケットに用意する。呼吸を整える。

やっと国際線ターミナルにバスが到着した。バスを飛び出して、走る。前を歩くカップルが邪魔。追い越せない。イライラする。人の気も知らないで手をつなぎやがって。

自動ドアを抜けて、全速力でチェックインカウンターへ。カウンターの前には、ひと家族しかいない。

「よかった、空いてる!」と思ったら、僕が列を飛ばしただけらしく、正式なコースには、長い行列が。こんなのに並んでられない。

「すみません、24時までに出国審査を通らないといけないんです」

近くを動き回ってるベトナム人の地上スタッフに声をかける。もう携帯を見てる余裕すらない。でもまだ数分あるはず。

そのお兄さんは、腕時計に目をやって、ちょっとおもしろがってそうな目つきでいう。

「ゲっ、あと7分だよ!」

あと7分……間に合うだろうか。

そのお兄さんがカウンターのお姉さんに、説明して、最速で発券させてくれる。そのまま一緒に走って、またまたセキュリティー。行列をすっ飛ばして、スタッフ用の入口へ。警備員に、首から下げたをIDをみせて、そのまま入国審査のコーナーまで入れてくれる。あと3分ぐらいか……

お兄さんと走りながら、いろんな国で、いろんな空港で助けられた記憶がよみがえる。

あの時も俺、あせって走ってたな……

フィリピンから帰国した日、空港でパスポートが見あたらなくなった。
盗難されたかと真っ青になった。たらい回しになりながら説明を繰り返したら、すでに預けたスーツケースを、探してきてくれた。もう飛行機に積んだのを、ひっぱりだしてきたらしい。スーツケースの中に、パスポートがあった!!
滞在中、フィリピンのお役人にはずいぶん困ったけど、最後に、なんだか、すごくいいイメージをもって出国できたのが嬉しかった。

韓国人のおばちゃん2人連れに助けられたこともあった。
これまたフィリピン。チェックインカウンターで行列に並でいると、アジア系のおばちゃんが走りよってきた。韓国語らしき言葉で、すごい勢いでまくし立てている。英語で、「韓国語はわかりません。英語話せますか?」といっても、英語を話してくれない。とにかく、両手で50~60センチの楕円形を描きながら、一生懸命、何かをいっている。
戸惑っていると、突然、「ガバン」という単語が飛び込んできた。「ガバン!ガバン!」と繰り返している。
「まさか、カバン!?」ふっと手元に目をやったら、リュックが見あたらない。
空港に入るための金属探知機に荷物を通したとき、重いスーツケースを引き取るのに気をとられて、リュックを取り忘れたらしい。感謝を言って、手荷物検査に駆け戻る。僕のリュックは、まだそこにあった。危なかった。おばちゃんの不屈の精神と、韓国語と日本語の単語が似ていたことに、助けられた。

外国では僕たちは、極端に無力になる。特に、いろんなシステムやルールが絡み合っている空港では。一つでもミスすると、大変なことになったりする。でも、プロとして、人として、助けてくれる人もいる。

どこかのんびり感をのこしながら走る、スタッフのお兄さんについていく。出国審査場。お兄さんは、制服の、ランクの高そうな男性に話しかける。僕のパスポートを見ながら、話し合っている。どんな話をしてるのかわからない。時間だけが過ぎていく。もうだめなんだろうか。それとも用意したドルを握らせるタイミング?

パスポートを見てた2人が、とつぜん、「ああ~っ!」と声を上げる。そして、行列の一番最後に連れていかれる。

「だからそれじゃ間に合わないんだって!」と思っていたら、お兄さんが教えてくれた。

「ビザなしでベトナムにいられるのは、この日付が終わるまで。だから、あと24時間。あなたには、まだ1日の余裕があるよ。だから普通に並んで出国審査を受けてね」

どうやら、日本を出たときの地上スタッフが、むしろ間違っていたらしい。

笑顔で歩きさるお兄さんに、何度もお礼を言う。
並んでいるうちに、日付が変わる。まだ信じ切れなくてドキドキしてたけど、無事に、パスポートにハンコをもらった。

そして、今度は手荷物検査。これまた長い行列。
並び始めてすぐ、新しい列が受付を開始した。今すぐそっちに移ったら待ち時間ゼロで検査を受けられるけど……

待ち時間ゼロは、他の人に譲ることにした。余裕を取り戻したきもちで、行列に並ぶ。いくら待ち時間が長くても、手続きがメンドウでも、空港では、何ごともないのが、一番いい。

ありがとう、ベトナム。ご飯がおいしくて、人が優しくて、美しい国だった。
大好きです。また来ます。今度はもっと、ちゃんと準備して。

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2019-01-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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