メディアグランプリ

コールドリーディングで会話をカスタマイズ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:落合功男(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「おおそうだ、けっこう前に出た本だけど面白かったんだ、暇な時に読んでみなよ」
深夜残業で合わない伝票処理にイライラしていた自分に、課長は一冊の本を放り投げた。
本読む時間があったら、その分寝ているよ! と言いたいところをグッと飲み込み、電卓を叩きながらペコリと頭を下げた。
チラッと見たタイトルは「一瞬で信じこませる話術 コールドリーディング」。
ハイハイ、会話術の本ね。
放任主義で、あまり干渉してこない課長がこんな本を進めるなんて、相当自分の状態は良くないんだな、とあらためて思う。
 
その後、数日間は本のことなど忘れ、年度末の営業の追い込みに没頭していた。
だが、行く先々で門前払いされ、運良く上がり込んでも会話が続かず、興味を失ったお客様を相手に、ひたすら買ってくれ、買ってくれと説得し、懇願し、空回りし続けていた。
まさに独りよがり。
 
いくら追い込んでもノルマ達成にはほど遠いと分かった瞬間、営業活動をさぼり、外出してお客様宅に向かうフリをしながら、喫茶店で時間を潰すだけの日々を送っていた。
そう言えば、課長が本を貸してくれたな。
ちょうど、喫茶店の「はじめの一歩」にも飽きていたので、暇つぶしにはなるかと、放置していた「一瞬で信じこませる話術 コールドリーディング」を読み始めた。
 
コールド・リーディング(Cold reading)の「コールド」とは「事前の準備なし」で、「リーディング」とは「相手の心を読みとる」という意味。
相手の外見やクセ、持ち物、髪型、カバンの位置、足の組み方などなど、外から観て分かる様々な情報や、何気ない会話を交わすだけで、熟練の占い師にように、相手のことを言い当て(リーディング)、相手に自分を信じさせる話術のことだ。
 
「壺でも買っちゃいそうだな」
半分バカにしながらも、まさにこういう状態になりたいんだよな、と思いながらページをめくる。
割と字も大きく、1時間も経たずに最後まで読み通した。
これ「話術」じゃないな。
何を話すかではなく、相手を分析するメソッドが書いてある。
WeタイプとMeタイプという、人のタイプを大きく2つに分ける、ざっくばらんな感じも、実戦向きに思えた。
しかも、Meタイプの典型が、自分がメインで担当している医師達(特に外科医)に多いと聞くと、がぜん興味も湧いてくる。
 
次の日から、営業の会話でこのコールドリーディングの手法を使い始めた。
とは言っても、初めから壺を買わせるようなテクニックは無いので、ひたすら、この人はWeタイプかMeタイプかを見極めることに集中していた。
 
徐々に慣れてくると、今度は本に書いてあった、タイプ別の会話法を取り入れ始めた。
 
Meタイプの医師には、ムダな前置きはせず、単刀直入に要件から入れ、など。
それまでは、いきなり要件から話をしては失礼だと思い、野球の話、最近のニュース、最近できたカフェの評判など、かなり長い前置きを話してから営業の話に入っていた。
前置きが長ければ長いほど、丁寧な接客だと思いこんでいた。
 
何をすべきかをはっきりと言って欲しいWeタイプの奥様に、コレが一番ですと断言できず、選択肢を豊富に並べることが素晴らしい営業だと勘違いしていた。
 
ある日、お客様から「あなた変わったわね」と言われた。
それまでは、熱心に営業に来るけれど、ぜんぜんこちらの話を聞いてなかった、と。
要望を会話の端々に入れていたけれども、ちっとも気づいてくれなかった。
でも最近はゆったりと構え、こちらの気分や様子、どんなことに困っているかなど、じっくりと聞いてくれるようになった。
その後の会話も、けっして押し付けるのではなく、こちらの様子を伺いながら、的確な対応を心がけてくれるようになった、と。
 
今までも、研修で会話術や営業トークを習うことはあった。
だがそれは、「何をしゃべるか?」「どう話をしたら購買につながるか?」など、自分発信の独りよがりの会話術に過ぎなかった。
 
コールドリーディングを取り入れてからは、パラダイムが一新した。
「相手を見る」ことから会話がスタートする。
一番大切なことは「相手を観察する」こと。
それも外側だけでなく、Weタイプだったら、Meタイプだったらこう言って欲しいだろう、と相手の欲することを想像しながら会話をする。
そのうち、WeタイプとかMeタイプとか、合ってるか、当たってるかは、あまり関係ないことに気づいた。
話す前に、この人はどんなタイプで、どう接したら心を開きやすいのか、相手をよく観て観察することが大切なのだと。
 
会話の立ち位置が、こちら側からあちら側に、180度変化していた。
生まれて初めてスタバに行った時に、受けた衝撃に似ていた。
それまでコーヒーとは、街の喫茶店で、頑固なマスターに淹れてもらった、こだわりのコーヒーを有り難く味わうものだった。主導権は喫茶店のマスターに合った。
 
カウンターで注文して受け取る方式にも驚いたが、自分の飲みたいものを、飲みたい分量だけ、自分の思うままにカスタマイズできることに衝撃を受けた。
スタバで自分好みにカスタマイズできるように、コールドリーディングを取り入れることによって、会話を自分の思いどおりに導くことが可能になります(完全じゃないですけどね)。
 
10年ほど前の少し古い本ですが、「会話とは相手を観察すること」という新しいパラダイムを手に入れることができると思います。
 
 
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2019-01-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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