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メディアグランプリ

ビビリちゃん


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西元 はる香(ライティング・ゼミ土曜コース)

新しい一歩を踏み出すことは、スカイダイビングをするようなものだ。
そう、とても怖い。

幼い頃から『ビビリ』だった。好奇心旺盛なくせに、するのは妄想だけで行動に移せない。

運動会で応援団をしてみたい! でも、運動音痴なのに?
生徒会に入ってみたい! でも、選挙があるのに?
東京の大学に進学したい! でも、お父さんが反対しているのに?

そういうことの連続で、いつも『しない』方を選んできた。失敗したらどうしようだとか、続かないかもしれないだとか、親が反対しているだとか。そういう心配をしてはびくびくして、踏み出すのをやめてしまう。何より、その一歩を踏み出す瞬間がいちばん怖いのだ。
中学に入ったらやろう、高校に入ったらやろう、大学に入ったらやろう。それを繰り返しているうちに、大学生活最後の一年が始まろうとしていた。

「いっしょに海外研修に行かない?」
同じゼミのマリコがそう言った。
彼女が言っているのは夏休みに行われる海外研修のことで、参加すると単位が貰えるものだった。二週間かけてヨーロッパの世界遺産を見て回るという。行ってみたい! そう思った。

実はこの研修は昨年も行われていて、その時も履修するか迷ったのを覚えている。その前の年も同じだった。いや、その前の年からかもしれない。つまり、私はずっとその研修が気になっていたのだ。

「でも、研修って40万近くするんでしょう? 親に頼めないよ。お父さん厳しいし。それに私、英語苦手だからなあ」
「説明会があるから、とりあえず一緒に聞いてみない?」

行く気満々のマリコに乗っかる形で、説明会に行くことにした。海外研修の説明を聞けば聞くほど、行きたいという気持ちが膨らんでいった。しかし私の心には、やっぱり恐怖心が居座っていて、そこをどこうとしない。

研修旅行の費用はどうする?
お父さんに反対されたら?
そういうのって、英語が喋れる人が行くものでしょう?

ぐるぐると渦巻く恐怖心と戦っている私の横で、マリコは目を輝かせている。
私はどうだ? 中学、高校、大学と何をしてきた? 何もしてないじゃないか。このままでいいのか!? 社会人になったら二週間も海外に行けると思うか? 行けるかもしれないけど、同じ状況では絶対に行けない。
今行かなくていつ行く!? 今でしょう!

その時、私の中の『行きたい』という気持ちが、恐怖心を超えた気がした。

「ねえ、私も行きたい!」

そう言うとマリコは、ニコッと笑って「うん、一緒に行こう!」と言った。

まず先生に、行きたい気持ちと、今の心配事を伝えた。すると、学生旅行ローンというものがあり、参加費用を分割で支払えることが分かった。私は就職が決まっていたので、内定通知書のコピーがあれば親の承諾もいらないとのことだった。これならば万が一反対されても行くことが出来る。
もうひとつ気になるのは英語力だ。先生に相談すると、どうにかなる! とあっさりした一言を放たれた。そんなもん? 先生が言うなら、そんなもんなのだろう。今ならキャンセルも可能だというので、とりあえず研修の申込書を提出して帰った。

あとは父を説得させるだけだ。
いつも何をするにも父の承諾を得ていたが、私ももう大学四年生だ。社会人になったら、自分で判断していかなければならない。断られたらと思うと怖くてたまらないが、この一歩を踏み出さなければ私はずっとこのままだ。震える手で父に電話をかけた。いつもと同じような声で、明るく第一声を発す。

「もしもし、お父さん? あのね、私、海外研修に行くことになったから!」

私は決定事項かのように話しはじめた。反対の言葉を言われる前に、ペラペラと口が動いていく。申込書を提出してきたこと。学生旅行ローンを組んで自分で払うこと。三年で払い終えること。仲が良いマリコも一緒に行くこと。先生もいるので安心だということ。そして、どうしてもこの研修に行きたいという気持ちを、父に伝えた。
電話の向こうを想像して、胸の奥がばくばくした。

「海外ってちょっと心配だなあ。まあ、でもマリコちゃんも一緒なら。こづかい程度ならお父さんが工面してあげるよ」

私の言葉が伝わったのか、父はあっさりと承諾してくれた。自分の気持ちを伝えるのはとても怖かったけれど、どうにかなった。私の胸は先ほどと違う意味で高鳴り、とてつもなく興奮したのを覚えている。ヤッター! これで海外に行けるぞー! 山の上から叫びたいような気持ちだった。もちろん、いい意味で。

そして夏休み、私はヨーロッパへと旅立った。
勇気を出して一歩を踏み出せば、また新たに勇気が必要となる場面が生まれてくる。現地で買い物や食事をする度にドキドキしたし、知らない学生と交流するのも勇気が必要だった。でももう、私は勇気を出すことが出来る。そしてその先にある気持ち良さを、私は知っている。

新しい一歩を踏み出すことは、スカイダイビングをするようなものだ。
そう、とても怖い。
あれから十年経ったが、それは今でも変わっていない。けれどもその一歩を踏み出した先には、素晴らしい景色が待っている。新しい世界、出会い、興奮、かけがえのない経験。
そのために勇気を出して、新たな一歩を踏み出すのだ。

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 http://tenro-in.com/zemi/66768

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2019-01-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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