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見るもの変えれば世界が変わる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤村薫(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
人間は、見たいものしか見ていないのだなぁ。
しみじみと感じたのは、実家の両親と話をしていた時だった。
地元で、たった一日で取り壊された店舗が話題にのぼったのだが、家族そろって、そこが壊される前はなんの店だったのか、まったく覚えていなかったのだ。
「フレンチの店だった気がする」「えっ、靴とかバッグの修理してくれる店じゃなかった?」「それはもう少し先に残ってるよ。美容院だったんじゃない?」「そうだっけ……」などと、皆でいろいろ挙げてみるものの、どの店もしっくりこない。
後日、近所の人に確認してみたら歯医者だったことが分かって、自分たちのいい加減さに溜息をついた。
 
店の場合は、そこまで印象の薄い店だったから潰れてしまったというのもあるだろうが、毎日その前を通っていたはずの家でも、取り壊しが始まって初めて「ここ、前どんな家が建ってたっけ?」と首をひねることが多いので、視界には入っていても、本当の意味で「見て」はいないのだなあ、と思わされる。
 
別の日には、引っ越しが決まったらしいご近所さんの話になった。
私が「〇〇さんってハスキー飼ってる家の隣でしょ?」と聞くと、母は「立派なハナミズキが咲く家の向かいよ」と言い、父は「確か、いつもマセラティが停まってるうちの少し手前だよな」と答えた。
その後、皆で更にいろいろ言い合って、思い浮かべている家が同じところだと分かったのだが、そこにたどり着くまでにえらく苦労した。
我が家はいつもこうだ。
父は車やバイク、母は植物、私は犬を中心とした動物が好きなので、そこをトリガーに脳内に地図を作っている。街中であれば、父は車のディーラーやラーメン屋や酒屋、母はスーパーやクリーニング屋や花屋など、私は本屋や喫茶店にペットショップとなる。
そして、自分が自然と覚えてしまう以外のものには、さほど興味がない。
だから、駅や学校、郵便局に銀行といった、見落としようのない目印がない場合、毎度「ええ? そんなものあった?」と、とんちんかんな会話が繰り広げられる。
 
目印としている店や車などのように、なにか興味を持てば、自然と関連した情報が目に入るようになることは多い。
引っ越したいなと思っていた時期は、物件情報ばかり目に飛び込んできて、私の住んでいる街はこんなに不動産屋が多かったのか、と驚いた記憶がある。
それまで何年も不動産屋の前を通っていたし、物件情報も山のように見ていたはずなのに、興味をもって初めて「ある」と認識したのだ。
 
過去どれだけ興味がなかったことであっても、一度認識すると、やたらそればかり目に入るようになるし、覚えている。
近所のどこの家でどんな犬が飼われているかなんて、私だって、別に覚えようと意気込んでいるわけではない。けれど、勝手に記憶に残ってしまい、引っ越した後でも、以前住んでいた場所を通れば「そういえば、ここに元気なコーギーがいたな」などと思い出したりするのだから面白い。
そして、興味が失せれば、また認識しなくなる。だから、引っ越しが終わった今、住んでいる街にどれだけの不動産屋があって、どんな物件が出ているのか、まったく把握していない。
 
興味がないものを見ていないとか、見てもすぐ忘れる、あるいは興味を持てばやたらと気づく、というのは、ほとんどの人に起きる脳の働きなのだという。
これを利用して、何か面白いことができたり生活が変わったりしないかな? などと職場で話をしていたら、先輩が「それを人間関係に応用してから幸せになった」と言い出した。
どういうことかと詳しく聞いたら、「あの人が嫌い! 関わりたくない!」と思っていた頃は、そう思えば思うほど嫌いな相手の気に食わないところばかりが目に入って毎日イライラし、ストレスが溜まって苦しかったのだそうだ。
けれど、憧れの人に目を向けて「この人と一緒に仕事がしたい」「この人のようになりたい」と考えるようにしたら、好きな人の素敵なところばかりが目に入るようになってイライラが激減し、気づけば嫌いな人のことが気にならなくなっていたのだという。
 
素晴らしい! と、さっそく真似してみることにした。
とにかく仕事が雑でミスが多い同僚Aがおり、トラブル対応で時間を取られることが頻繁にあって腹立たしく感じていたのだが、可能な限り、常に笑顔でてきぱきと難問を片付けていく別の同僚Bに注目するように心がけた。
すると、一週間くらい経つとイライラしている時間が減って、二週間ほどでAのことは気にならなくなった。
また、トラブル対応が発生した時、相変わらず腹は立つものの、そこで「Bならどう対応するだろう」と考えると、すっと怒りが引くようになった。
結果、誰も何も変わっていないにもかかわらず、仕事場での私の精神状態は劇的に改善した。
同じように注目する相手を変えた同僚たちも、次々と「ストレス減ったわ~」と喜んでいる。
 
そう簡単に変えられないという人や、目指したいお手本が身近にいないという人だっているだろう。
けれど、元手もかからず、特別な技術も才能も必要なく、失敗してもリスクもないこの方法、日々いら立つことがある方に、ぜひお試しいただきたい。
きっと、今よりストレスの減った、楽しい生活が送れるはずだ。
 
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2019-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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