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メディアグランプリ

断る勇気を身に付けたい


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:唐土大毅(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「一緒に帰ろう」。
 
この一言が、壮絶な心理戦の始まりだとは知る由もなかった。
 
水曜日はノー残業デー。早く帰る日だ。本屋に寄って、気になっていた本を買いに行こうと思っていた。
 
その日の仕事を終え、帰る準備をしていると、同じタイミングで仕事を終えた先輩が言ってきた。
 
「一緒に帰ろう」
 
その先輩とは帰る方面が同じだから一緒に帰ることはよくある。でも今日は本を買いに行く。そして購入する予定の本を見られたくない。『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』を買いに行く。
 
会社の収入が少ないから、副業としてライターを始めようと考えている。そのためにも文章力を向上させたい。でも会社の人に知られるのは、なんだか恥ずかしい。意識高いと思われるのも私としては心地よくない。ついてきてほしくない。
 
そこで私は言った。
 
「今日寄り道するので一緒に帰れません。ごめんなさい」
 
その後の展開はこうだ。
 
「どこいくの?」
「本屋です」
「おれも本屋行くわ」
 
予想外だ。先輩は普通に帰るものだと思った。こちらのついてきてほしくない、という思い通りにならなかった。心理戦に負けた感覚だ。
 
ついてきてほしくない。本を買うところを見られたくない。先輩を帰らせるチャンスはないか。本来の帰り道と本屋へ行く道の分岐点に来て、勝負を仕掛けた。
 
「あ、本当についてくるんですね?」
 
申し訳ないが、今度はかなりついてきてほしくないという想いを表に出した質問をした。先輩のことは嫌いではないが、本屋には一人で行きたい。
 
「うん、行くよ」
 
負けた。ついてくるようだ。
 
どうしよう。ここで文章力を学ぶビジネス書を先輩の目の前で購入したら、絶対意図を尋ねてくるだろう。副業としてライターを始めようと思うなんて、言いたくない。勤める会社が副業可なのかどうかも、確認していないし。
 
本を買うという行為はすっぴんと同じだ。人に見られたくない。すっぴんを見られるくらいなら裸を見られた方がまし! という言葉は聞いたことがあった。私は男だからよくわからなかった。そんなの嘘だろうと鼻で笑っていた。でも今なら少しその言葉に共感できる気がする。どんな本を買うか見られるくらいなら、裸を見られた方がましだと、本気で思った。
 
購入する本を変えよう。仕方がない。
 
と同時に、ある不安が頭の中をよぎった。もしかしたらこの人はご飯に誘ってくるのではないか。思い当たる節はめちゃくちゃある。帰るタイミングを合わせてくるのは、ご飯に行くときのお決まりのパターン。ノー残業デーに飲みに行くことはしょっちゅうしている人だし、本屋がある場所は飲食店が多くあるエリアだ。
 
普段なら飲みに行ってもよかった。しかし今月はお金がない。先月は予想以上にお金を使ってしまった。支出が収入を超えていた。だから今月は外食している余裕なんてないのだ。もしこの人がご飯に誘ってきたらどう断ろう。考え事がひとつ増えてしまった。
 
本屋に行く途中、ご飯に行くか行かないか、という自分の中できっと壮絶になるであろう心理戦を制するために作戦を練った。
 
戦いに勝つときは準備が大切だ。スポーツにおいても、公式戦のために練習をこなす。練習で手を抜けば負ける。逆に100%の力で練習をこなせば、公式戦に勝つ確率が上がる。準備が9割、ということが私の人生経験でわかっている。
 
これまでの二つの心理戦でもわかるように、私は断ることが苦手。だから
 
「ご飯行こう」
 
と言われたら私の負けが確定する。しかしこういうとき、過去のデータ上で先輩はこう切り出すことが分かっている。
 
「このあとどうしよっか」
 
だから私はストレートに思いをぶつける。
 
「帰ります」
 
以前、二次会もこれで断れた。これなら言える。そして勝てる。今日初めて自分の思い通りにできる。最後の心理戦の勝利を確信した。
 
本屋に到着し、結局私はもともと公言していた好きな作家の小説を購入した。いずれ買おうと思っていたし、納得のいく買い物ができた。そしてお店を出るとき。先輩が切り出した。
 
「このあとどうしよっか」
 
作戦通り。
 
「帰ります」
 
作戦通り。
 
「ご飯食べて帰ろう」
 
作戦通り、ではない。一瞬、どこから聞こえてきたのか分からなかった。先輩が言ったのだ。準備ができていなかった私は
 
「い、いきますか」
 
結局最後の心理戦も負けた。断ることができなかった。ラーメンを一杯すすって帰ることとなった。
 
後日友人に、どうしたらお誘いをスマートに断れるか尋ねた。その友人は日ごろからおじさまたちのお誘いを断り続けている、断り方のプロだ。
 
「そんな深く考えてないよ」
 
あしらい上手かどうかは、どれだけお誘いを受けているか、いうならば人気かどうかで、わかる。せつないことに気づいてしまった。
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

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2019-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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