メディアグランプリ

神様なんていない


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:田中順子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
その記事を見たのは、友人がFacebookでシェアしたからだった。
 
「神様が池江の体使って」 橋本JOC副会長
 
うわ。
タイトルを見ただけでも、なんだかモヤっとした気分が湧いてくる。
記事を開いて読んでみたら、やっぱりモヤモヤする。
(どうして、私までこんな気分になるの……?)
橋本さんにも、書いたメディアの人にも、「炎上、炎上」と騒ぐ外野にも、どこにも共感することができなくて、落ち着かない気分だった。
 
池江さんも橋本さんも、ある一つの同じ言葉を使っていた。
「神様は乗り越えられない試練は与えない」
「五輪の神様は今回、池江璃花子の体を使って、五輪、パラリンピックをもっと大きな視点で考えなさい、と言ってきたのかなと私は思った」
同じ「神様」という言葉を使っていながら、それぞれに起きた周囲の反応はまるで違う。
池江さんは、共感や感動、励ましの言葉をたくさんもらって、橋本さんはいろいろなポイントから大反発をくらっている。
橋本さんに対して寄せられたコメントの中には、「神様なんていない。狂ってるのか?」というニュアンスのものも多かった。
でも、おそらく、池江さんに同じ言葉をかける人はいないだろう。
この違いはどこから来るんだろう?
私のこの落ち着かない気持ちも同じところから来てるんだろうか?
 
言葉の使い方が難しいのは、みんな知っていると思う。
特に、最近は炎上事件も多いから、失敗した人たちから学ぶチャンスが山ほどある。
それでも、こんな風に炎上を生む言葉は、次々とやってくる。
どうしてなんだろう?
ひょっとしたら。
みんな、言葉が難しいということは知っていても、「どのくらい難しいのか?」を少なく見積もりすぎているんじゃないだろうか?
 
言葉は、たぶん算数と同じだ。
いや。
私は算数が苦手な子どもだったから、国語も同じくらい難しいんだとか、そういう意味ではなくて。
言葉で自分の思いを伝えることは、実は、長編映画を見に行って、その体験を算数で表現するくらいの難しさなんだと思う。
 
もしあなたが映画を見るとしたら、それはどんな理由からだろうか?
暇だから時間をつぶしたいのか。
最近ちょっと落ち込んでるから、映画を見て元気になりたいのか。
好きな監督や俳優の作品だからなのか。
歩いてる時、ふと目に入ったポスターが気になったのか。
たぶん、そんなシチュエーションは何千何万通りもあるだろう。
映画を見る時は、どんな場所で見るだろう?
休日、結構混んでる映画館でなのか。
レンタルDVDを借りに行って、持って帰ってきた一人部屋なのか。
動画をタブレットPCの画面で見る人もいるだろう。
音は?
映画館なら、自分の身体がビリビリするような大音量の中だろうか。
自分が厳選したお気に入りのヘッドフォンで聞くかもしれないし。
ちょっと調子の悪いパソコンから、流れてくる音かもしれない。
そして、実際の映画の内容、ストーリー、結末はどんなものだろう?
映画の何を見て、何を聞いて、それを身体がどう感じて、どうしてそれほどに心動かされたのか、どうやって説明する?
「あの感動を自分が感じたまま伝えたい!」
もしそう思った時、身体のセンサーや心のセンサーが受け取った情報のどの部分をどのくらいどんな表現で使えば相手に伝わるのだろう。
算数でそれができるだろうか?
3とか10とか5千万、足し算引き算、強いて言えばグラフや立方体とかで、表せる?
いや、もう絶対無理!
 
(うーん……言いすぎかなぁ?)
そうかもしれない。言葉は、そこまでは難しくないのかも。
でも、もし、言葉がそのくらいの難しさだと仮に思ってみて、その感覚で、あなたの周りにある言葉を読んでみたらどうだろう?
3とか10とか式やグラフから、映画の中身やそれを見た相手の状況を推理するなら。
きっと、数式や図表そのものだけじゃなく、いろんな手がかりを探して使うだろう。
手書きだったら、筆跡からその人の感情や気持ちの動きを推理するかもしれない。
「今日見た映画、こんな感じ→1×1×1=∞」
こんなのがスマホで深夜に送られてきたら、それでもここから何かヒントを探すかも。
相手の言葉から、その人が本当に言いたいことを理解できる人は、きっとそんな感じのことができる人なんだと思う。
言葉の意味を自分の脳で解釈して、反応を返すだけじゃなくて、言葉そのもの以外の手がかりを見つけたり読み解くことができる人。
そういう人がたくさん居れば、不毛な炎上事件も、味わい深い読み物になるかもしれない。
 
そこまで考えてみて、ふと思う。
(ああ、別に橋本さんをかばいたくてモヤモヤしてたわけじゃなかったんだ!)
そう、ようやくモヤモヤがどこから来ていたのか、わかった。
「神様」という言葉に対する多くの人の反応が原因だったみたいだ。
神社好き女子としては、もし自分が同じことを言われたら悲しいなと思ったのだった。
(なんだ、そうだったのか)
原因がわかったら、それだけでちょっと落ち着いた。
今回の件でも感じたが、日本人の神様や宗教に対する恐怖心と反発はちょっと凄い。
その反発力そのものが、私には怖かった。
でも、「神様」という言葉の奥にあるイメージだって、人によって違う。
私にとっては、「神様」≒「自然」だ。
この私の言葉も、そのまま伝わるわけじゃないけれど。
それでも、こんな言葉を大らかに笑って受けとめてくれる人が増えてくれたら、ありがたい。
 
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2019-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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