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求めるものはたったひとつ


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記事:遠藤淳史(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「仕事と私(俺)、どっちが大切なの!?」に対する正しい答えは
「仕事」でも「私(俺)」でもなく
「そんなこと言わせてごめんね」らしい。
 
なんでもこの言葉を発した相手の深層を掴むことが大切だそう。
そんなもんどっちも大切だから悩んでるんじゃバカヤローと一蹴したくなるが、そう考える私はまだまだ甘いらしい。そうなのか。
 
どっちも大切だと思うからどっちも欲しい。どちらか一方だけは嫌だ。
二兎を追う者は二兎共欲しい。
日々働く上で、欲望だけは大きくなる。
2つを天秤に掛けた時にどちらを優先すべきかで議論が巻き起こる別の例として、「お金」と「楽しさ」があると思う。
 
お金がたくさんもらえれば楽しくなくても働ける。
逆に楽しく働くことさえできればお金は少なくても気にならない。
感じ方は多種多様で正解はないが、私はここでは後者の立場を取ってみたい。
 
楽しいは正義だ。
どれだけ数字を上げて、どれだけ世の中を動かす大きな仕事をしていても、楽しんでる人には敵いっこない。働く上でその楽しさを見出せたならば、それはもう本当に幸せなこと。
ありがたいことに、私は学生時代のアルバイトで、一度だけその感覚を味わうことができた。きっと一生忘れない。
 
2つのアルバイトを経験した。
一つ目は実家近くの回転寿司チェーンのキッチン。2年半続けたが、私の中に残るものは特になかった。ただただ小遣い稼ぎのために働き、友人とか、楽しさには無縁だった。
下書きの薄い黒線だけ書いて満足し、色を塗り忘れた絵のように味気なかった。いや、そもそも色を塗ろうとさえしていなかった。2年半も続けたのに、人間関係や仕事内容然り、すべて中途半端に終わった。
 
二つ目は友人に誘われた某テーマパーク。
寿司屋でずっと寿司を作っていた私が、テーマパークでお客さんと接する仕事が本当にできるのか不安だったが、水を得た魚のようにイキイキと働くことができた。
文字通り人が変わったようだった。
 
何が違ったのか。要因は振り返ると3つあった。
一つは当然だが人間関係。寿司屋の時とは違い、ほとんどが同年代だった。自然と話も弾む。またテーマパークでの仕事は、勤務形態の特性上、毎回共に仕事する人が違っていた。そのため「初めまして」の状態から、空いた時間にお互いのことをぽつりぽつりと話し、色んな人と少しずつ距離が縮まっていくのが楽しかった。
 
二つ目は、自分が必要とされている感覚を持てていたこと。
褒められる。
違う人の指導を任される。
聞かれることが多くなる。
どんな形であれ「自分はここにいてもいい」実感が確かにあった。承認欲求の強い自分にとってそれは何より嬉しいことだった。
 
三つ目は、職場であるテーマパークそのものが大好きだったこと。
それまで客として遊びに行くだけだったが、働くことで自分もその世界観を作り上げる一部になっていると思うととても誇らしかった。自分の対応一つひとつが、お客さんの思い出が左右する。誰に言われたわけでもないのに、そんな心持ちで勤務している自分は、自分じゃないみたいだった。
スタッフであることを現すバッチの針をシャツに通す度、この場所で働ける喜びを噛み締めていた。
 
この3つが揃っていたことで、私の中で
「仕事=つらいもの」ではなく
「仕事=条件によってはいくらでも楽しくなるもの」という認識に変わった。
時給だけで見ると、寿司屋の方が高かったが、そんなことはもうどうでもよかった。
心から楽しいと思える仕事に、費やせるだけの時間を費やした。
最終出勤日、私は喜びで「心が震える」感覚と「胸がいっぱいになる」感覚がどういうものなのか、身をもって分かった。一生忘れることのない喜び。
それは間違いなく、お金で買えるものではなかった。
 
これは「たまたま」だろうか。
たまたま人がよかった。
たまたま職場がよかった。
たまたま仕事が合っていた。
それだけで説明できるとすれば、あまりにも都合が良すぎる気がする。
 
「人間の悩みは、すべて人間関係の悩みである」
と心理学者のアドラーが言うように
楽しく働けるかどうかについては、出逢う人に大きく依存する。
 
親は子を産むかどうか選べるが、子は親を選べない。
それと同じで、私たちがこれから出逢う人を選ぶことはできない。
けれどもこれから過ごす「環境」を選ぶことはできる。
どこに身を置くのか。何をしている人たちで周りを固めるのか。
その選択は私たち自身に委ねられている。
 
楽しいは正義だ。
一度でも働くことの楽しさを知ってしまった私は、麻薬中毒者のようにこれから楽しさを求め続けるのだろう。そのためなら環境を変えることなど厭わない。
いつだって、楽しさを追求することを諦めたくないのだ。
 
何のために働くのか。
最近そう聞かれることも自分で考えることも増えたが、私の答えはいつだって決まっている。
あの時のような喜びを何度でも味わうためだ。
 
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2019-02-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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