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メディアグランプリ

婚活はどんでん返しの繰り返し?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:井上 知子(ライティング・ゼミ平日コース)
 
福岡にいた時に親しくしていたKさんから電話がかかってきた。
Kさんからの電話は、「東京近郊に住んでいる人で誰かいい人がいないか?」と義娘さんから頼まれたという。私の顔が浮かんだらしい。そう私は独身だった。もう少し突っ込むとバツイチ。「会ってみるだけ会ってみたら?」面白い人とのこと。情報はそれだけ。かなり怖い。「面白いってどんな風に?いろんな捉え方があるじゃないか?」
その男性が独身ということはわかっていたが情報はほとんどなかった。
それでも「何か始まるかもしれないわよ!」と言われ、運命思考を持つ私はその流れで簡単な身上書を書くことになった。パソコンでそれをKさんに送った。Kさんとのやり取りをしている間に義娘さんとその男性との会話で、バツイチはお断りとのことだった。
「普通そうだよね。はい、終了!」「チーン!」鐘がなった。
別に落胆することもなく、最小限の情報で断られてよかったとすら思った。
私が必死で婚活しているわけではなかったからかもしれない。
 
しかし、彼がお断りした後に彼の手元に私の身上書が届いたらしく「趣味:登山」が目に留まったらしい。彼は登山が趣味だった。気が変わったらしく是非会いたいと言ってきた。
趣味の一致が避けたかったバツイチを超えたのである。
彼から早速メールが入り、バツイチというのも色んな理由があっての事でしょう。と手のひらを返されたようなメールだった。その内容は流せたが、一つ気がかりなことがあった。
それは彼のメールアドレスであった。
ユーザー名が「sapporoichiban298en」だった。
「サッポロ一番298円って何?」
「やばくないか?」
「いや、面白い人って聞いたけど?」
「サッポロ一番が大好きなのもしれない」
色んなことを考えた。Kさんに話すと「なんだか面白そう人なんじゃない?」完全に他人事。
私の中で彼のあだ名はサッポロ一番になっていた。
 
待ち合わせ場所は、神保町だった。スポーツ用品店街である。彼は登山専門店の前と指定してきた。彼が張り切っている感が伝わる。彼が足元から頭までの服装、持ち物を丁寧に連絡してくれた。一応婚活になるだろうが、身なりをいつも以上に頑張る力は湧いてこなかった。
私の中で期待とはいえない何かが作動していた。
「なぜだろう? 一度はバツイチということで断られたから傷つかないように捨て身な気持ちが無意識にあるのかな?いや違う、やっぱりユーザー名?」
そんなことも思いながら神保町に向かった。
期待とは言えない何か? はドンピシャだった。
「うっ、違う、帰りたい……」と思った瞬間、目があった。
「あっ、初めまして……」挨拶が交わされた。
お茶でもしましょうと神保町を歩き始めた。少し離れて歩いているが、周囲の人の目が気になっていた。察することができるだろう。外見というより、何か生理的なもので受け入れられない自分がいた。私のことをひどい人だと思うかもしれない。しかし、生理的って重要なのである。
スタバに入った。壁を見ながらなかなか選べない彼。後ろの人が気になる私。様子を見ながら耐えられず私が先に注文した。席につき、改めて挨拶から始まった。勿論登山の話になる。彼は日本百名山の本を鞄から取り出して、私とこんなところを歩けたらいいなとすでに出来上がっている初夏の登山の妄想を話してくれた。正直な気持ちは「とにかく早く帰りたい……」だった。何とかその時間を切り抜け、後日お断りした。
 
普通これで終わりだ。
 
あの日からどれくらいたっただろう? 半年くらい経って、彼から連絡が入った。
私に紹介したい人がいるという。「人に良いことをしていたらよいことが回ってくるから」と彼は言った。彼のことは生理的には無理だが悪い人ではないことは理解している。素直に聞き入れた私は、今度は彼の高校時代のバツイチの友人と会うことになった。スルーしてもよいが紹介する彼はバツイチである。「そろえてきたな」と心の中で笑った。
 
できれば二人で会いたかったのだが、サッポロ一番の彼の親切心で同伴となった。
それだけじゃない! もう一人お友達までもれなくついてきちゃった! のである。
ついてきちゃった彼は福岡に住んでいたことがあるらしく、何かのご縁とかなんとか言いながら3人の男性とお茶をすることになったのだ。
ここまでの話で彼が変わっているということは気付いてもらえるだろう。
結果的に場が和み良かったといえば良かった。しかしバツイチ同士もその後会うことはなかったが、ついてきちゃった彼とは未だにFacebookで繋がっている。可笑しな展開だ。
 
サッポロ一番の彼はその後も婚活を頑張っていたようだった。半年ほど経過し、彼から結婚すると報告が入った。少し驚きもしたが諦めなければ出会いはあるのだなと教えられた気がしたし、自分のことは棚に置き、幸せになってほしいなと純粋に願った。
因みにアドレスのユーザー名は変わっていてホッとした。
 
でもこの話まだ終わりじゃない!!
 
幸せになったはずのサッポロ一番の彼から連絡があった。
 
「結婚して間もなく、新築の家も購入したのに彼女が実家に戻り、連絡も付けず弁護士を通してしか話ができない」と私に言ってきたのである。
それは大変だろうなとは思ったが、私の心情は正直「知ったこっちゃ無い!」である。
少しして離婚したと連絡が入った。
辛かっただろうなと思ったが、どうすることもできないしそれなりの返信はした。
 
しかしだ。
 
「この心情をわかってくれるのは離婚を経験した貴女しかいないから僕の話を会って聞いてほしい」と彼は言ってきた。
 
今度は違う音の鐘が鳴った。「カーン!」
「私は結婚カウンセラーか?いや違う」一瞬考えてしまった。
 
「辛い気持ちは察しますが、私はお力になることができません」と丁重に断った。
サッポロ一番の彼のお取り扱いを把握している自分に少し笑えた。
 
婚活ってどんでん返しの繰り返し? なのか。
 
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2019-03-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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