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メディアグランプリ

人生のどんぞこには宝物が落ちていた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:外園 佳代(ライティング・ゼミ日曜コース)

「いったいどこまでがんばればいいの!」
わたしは、車を運転しながら叫んだ。
後部座席で、娘は
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と、あやまりながら泣きじゃくっていた。

それは、当時10歳だった娘を、音楽療法の教室に連れて行った帰りだった。

娘には軽度の発達障害があり、
「親として何かできることがあるのではないか」
と必死だった私は、漢方治療、自然療法などさまざまな治療を試していた。そして娘が6歳の頃からは、音楽療法の教室にも通わせ続けていたのだ。

月謝はかなり高価だったが、めざましい治療効果は表れず、その日は、先生から、家庭でのさらなる努力をやんわりと指示された。

自分を責められたように感じた私は、帰りの車でキレてしまったのだった。

おびえて泣き続ける娘の姿をバックミラーで見ながら、わたしは、
「このままでは、娘もわたしもダメになってしまう」
と苦しくてたまらなかった。

そんな頃、知人を通じて、ある子育てカウンセラーの女性と知り合う機会があった。知人もやはり昔、子育てで非常に悩んでいた時期があったのだが、そのカウンセラーの方の子育て講座に出たことで、子どもとの関係が劇的に改善したとのこと。

私がそのカウンセラーの女性と知人の紹介で初めて会ったのは飲み会の場で、彼女はかなり酔っていた。それにも関わらずわたしは、
「この人の講座をどうしても受けたい」
と強く思った。

そこで、帰りの電車で、
「ぜひ子育て講座を開いてください。ぜひ受講したいです」
と、彼女に頼み込んだ。

彼女は、その日会ったばかりのわたしからの熱心な依頼におどろいたようだったが、
「三人集まればあなたの地元で出張講座を開くわよ」
と言ってくれた。

その子育て講座は、アドラー心理学をベースにした8回の連続講座で、参加費は3万円近く。
わたしが住んでいる地域では、当時、子育て講座といえば、市や自治体が主催する無料または実費程度のものがあたりまえだった。
だから、友人たちに
「こういう子育て講座を開きたいんだけど、一緒に学ばない?」
と誘っても、
「そんな高い講座、参加できない」
「うちにはそんなお金はない」
と断られ続けた。

それでもわたしは、
「この子育て講座を必要としている人は必ずいるはずだ」
という根拠のない確信があり、あきらめようとはしなかった。

それまでのわたしは、自分が人からどう思われるかをとても気にするタイプだったのだが、SNSやブログでも、なりふり構わず、
「わたしといっしょに学んでください!」
と、一生懸命によびかけた。

わたしは学生時代、
「営業の仕事だけは絶対にイヤだ」
と思っていたのだが、そんなふうに人を積極的に誘える自分におどろいた。

そして、この子育て講座の開始日には、3人どころか、6人もの受講者が集まってくれた。

とうとう講座初日を迎えた日の、
「とうとう学べるんだ。これで娘との関係もよくなるにちがいない」
という安堵感のまじったうれしさは、今でもありありと思い出すことができる。

そうして始まった子育て講座は、期待以上の内容で、仲間とともに、涙あり、笑いありのとても充実した時間だった。

れまでの
「娘をちゃんとした子に育てないといけない」
という力みが、どんどん軽くなっていった。それとともに、娘との関係も、どんどんリラックスしたものになっていった。

そして、この講座での学びを通じて得た気づきも大きかったが、わたしには、それよりも大きな気づきがあった。

それは、
「講座を主催するって、なんて楽しいんだ」
ということだ。

自分が学びたいことを学ぶ場を企画し、イベントページを作り、ともに学ぶ仲間を募集する。
そういった一連の作業が、娘の子育てでいっぱいいっぱいになっていたわたしの心に、風穴をあけてくれたのだ。

この子育て講座が終わった後も、わたしは、自分の興味のあるさまざまな講師の先生を招いて講座を主催するようになった。お母さん向けの連続講座、ボイストレーニング、演劇、東洋思想、スピリチュアル関係など、その内容は多岐にわたる。最初はやや緊張気味だった参加者の方が
「とっても楽しかった」
「こんなすてきな講座を開いてくれてありがとう」
と笑顔になって帰っていくのを見ると本当にうれしい。

そして気づくとわたしは、自分自身の人生を謳歌するようになっていた。そして、以前はあんなに気になっていた娘の発達も、
「この子にはこの子のスピードがある」
と思えるようになった。

今、娘は、インクルーシブ教育という、障害の有無に関係なく共に学ぶ高校に通っている。そしてわたしも、あいかわらずバラエティに富んださまざまな講座の主催を続けている。

娘はわたしに言う。
「大人は楽しそうでいいなあ。わたしも早く大人になりたい」

その言葉を聞いて、わたしは、もう、これで十分ではないか、と思った。
いろんな治療はやめてしまったが、彼女が「大人になるって楽しそう」と、自らの人生を喜びとともに生きてくれるなら、親としての役目は十分果たした気がする。

以前、ある本で、こんな言葉を読んだことがある。
「人生のどんぞこに宝物が落ちている」

娘との関係で深く思い悩んでいたあの頃、わたしは確かに人生のどんぞこにいた。
でも、どんぞこにいたからこそ、あの子育て講座をなんとか開催しようとあんなにも必死になることができた。
そして、イベント主催という、わたしにとっては宝物のような楽しさに気づけたのだ。

これから先の人生でも、娘との関係で、また悩むこともあるかもしれない。
でも、その悩みのどん底に宝物が落ちているのだと思うと、悩むこともあながち悪いことではないように思えるのだ。

今は、彼女のゆっくりな成長を見守りながら、わたしはわたしの人生を楽しむことにしよう。

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2019-03-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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