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映画『翔んで埼玉』は2回目も面白い


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:うえたゆみ(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
私は、敗北感に襲われていた。
 
”笑い”にすべて持っていかれて、映画『翔んで埼玉』の細部を覚えていない。こんなことは、生まれて初めてだ。
 
役者の名前は覚えなくても、観た作品については熟考できるのに、今回はできない。登場人物の表情とセリフ、ボクサーのパンチをくらったかのようなストーリーしか覚えていない。ある感情が、マグマのごとく噴き上がってきた。
 
もう一度、観たい
 
こんな思いをしたのは、20年ほど前にC席で劇団四季のキャッツを観劇して以来である。この時は我慢できず、友人を連れてA席で2回目を楽しんだ。
 
今回も、我慢できそうにない。
道連れも決まっている。
 
いつも突然、映画館に誘ってくるMさんだ。
 
Mさんは映画を愛する男だ。暇さえあれば、映画を楽しんでいる。ジャンルは問わない。なにで観るかも問わない。「映画館で観るのが一番だ」と言っているくせに、Amazonビデオでミニモンを観て爆笑していたりする。
 
Mさんの映画批評は信用できる。だが彼には、困った所がある。いつもお誘いが唐突なのだ。
 
映画に誘うのは、いつも当日
前日ではない、当日
 
私は毎回、スケジュールを調整するはめになる。
だから今回は、私が当日に連れ出してみせる。
 
私はMさんに連絡をとった。
 
Mさんは「いきなり誘うなよ」と文句を言いながら、待ち合わせ場所に来た。私の気持ちが、わかってもらえたようだ。
 
作戦成功だ
 
「ごめんなさい。映画と言えばMさんだから、誘っちゃいました」
「『翔んで埼玉』はもう一度観る気だったから、いいけど」
 
Mさんの機嫌はすぐに直った、かわいい人である。
 
Mさんが落ち着いたので、やっと『翔んで埼玉』に集中できる。今度こそ”笑い”に飲みこまれるものかと気合いを入れなおし、映画館に向かった。
 
敗北した
 
どのタイミングで”笑い”のパンチが飛んでくるか知っているのに、耐えられなかった。むしろ2回目だからこその”笑い”が襲ってきた。後半の展開とのギャップが、前半の学園生活を”笑い”のパンチ連打に変えてしまった。
 
これはつらい
 
前回と同じ失敗を繰り返さないよう、厚めのハンカチをしっかり口元に当てているのに、声がこぼれそうになる。ちなみにMさんは大口開けて、大爆笑である。劇場から追い出されないのが、不思議である。
 
『翔んで埼玉』の強すぎるインパクトが、上映中に声を出すことを許す空間に変えていた。常識をひっくり返すとは、なんて恐ろしい作品だろう。上映開始前の注意を、だれも守っていない。
 
私も守れなかった。
今回も、笑い続けるしかなかった。
 
笑いつかれて、ぐったりしながら考えた。なんで2回目なのに、笑えたんだろうか? 2回目の映画は、最後まで読んだ推理小説のようなものである。
 
犯人が分かった瞬間の衝撃は、最初だけである。だからこそ、図書館で借りた推理小説の目次にネタばれが書いてあると、人は激怒する。私も激怒し、犯人を呪った。
 
考え出して3日後、答えは出た。
『翔んで埼玉』は演出が細かいのだ。
 
役者は最初から最後まで、すべての場面で真剣だった。むしろ真剣だからこそ、面白い。登場人物の悲劇や苦悩が、とてつもない”笑い”となって襲ってきた。悲劇を喜劇に変えたのは、徹底的にこだわった演出だ。
 
たとえば照明
 
ネックレスが光るシーンがある。前半では500円のアクセサリーの輝きなのに、後半では女王陛下のティアラのごとき輝きをみせる。
 
照明だけでなく、音も舞台も、エキストラの人数も段々とレベルが上がっていく。それなのに、変化を観客に悟らせない。
 
茶番劇なんて言っているが、とんでもない。人間国宝が3年かけて作った細工もの、それぐらい細かく繊細に作られていた。私はPPAPを思い出した。世界一になった動画には、綿密な計算があった。
 
ピコ太郎さんのコメディアンとしても経験、音楽のプロですら感動するリズムとレアな機材などジャスティン・ビーバーが紹介してしまうほど、プロも認める映像作品だったのだ。
 
『翔んで埼玉』も素晴らしい映像作品なのだ。
 
素晴らしい映像作品、特に映画は隠れた意味も多い。
『翔んで埼玉』も同じだった。
 
産地偽装
一極集中
地域復興
 
日本を悩ませている多くの問題が、映像の中には星のごとくちりばめられていた。笑っている最中はまったく気づかなかったが、だからこそ考えさせられた。
 
以前に観た七つの会議も、日本の問題を真正面から問いかける作品だった。『翔んで埼玉』も同じく、観客に問いかけていた。ただ、表現方法が違うだけだ。
 
なんと見事な作品だろう
また観たくなった
これでは、きりがない
 
私は、円盤を待つことに決めた。待ちきれないので、原作は買った。予想外の衝撃を食らった。
 
原作は映画版の1/5のストーリーで3話しかない
しかも未完だ
 
3話で大爆笑に導く原作者への尊敬と、監督のストーリー構成能力と、政治ネタを巧妙に避ける危機管理能力に賞賛の念が浮かんだ。
 
『翔んで埼玉』は恐ろしい作品だった。これほど語ることが尽きない作品は初めてだ。そしてまた観たくなる。週間観客動員数一位なのも納得だ。
 
もう映画館に観に行かない私は、観察者だ。『翔んで埼玉』の快進撃を、眺めようと思う。不意に襲ってくる、”笑い”をこらえながら……。
 
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2019-03-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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