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メディアグランプリ

次世代の台所ヒーローになれるか、檜のたわし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松本 ようこ(ライティング・ゼミ火曜コース)
 
 

その「檜たわし」とはひょんなことから出会った。
 
山の麓、標高1,000m弱に住んでいると、自然と向き合って生活することが多くなる。そのためか環境問題にも関心がむく。森林の伐採、農作物の作り方、水質の維持……。特に、湧水がいろんなところから出ているこの地域では小学校から水のことを勉強する。
 
限りある資源、水を大切に使うにはどうしたらいいか。
食器の洗い方はどうしたらいいか。
 
様々な情報を得て試した結果、ここ数年、私はアクリルたわしを使っていた。かぎ針でアクリル毛糸を自分で四角に編んだものだ。お湯を使えば、洗剤を使わなくても油が付いた食器もきれいになった。ただ、タッパーやプラスティックのお弁当箱は、アクリルたわしだけだとどうしても油分が残ってしまいすっきりしない。そういう時は洗剤を1滴~2滴使った。それでも少しはエコに貢献できている、と納得していた。
 
ところが、最近ニュースになっている「海のプラスティック汚染」に少なからずアクリルたわしも影響しているとことを知った。洗っている時にアクリルが少しずつ削れて、水と一緒に流されているという。この情報は衝撃だった。考えてみれば、アクリルたわしも使っていくうちに細っていく。なるほどと思ったが、言いようもない罪悪感も同時に生まれた。エコ活動になっていると思っていた行為が、汚染につながっていたとは。
 
解決策を見つけられずにいた時に檜のたわしを知った。正確には檜のたわしではなく、たわしの素材と出会ったのだ。
 
森林維持の活動をしているFBの友達が、間伐した檜を製材した時に出るおが屑でフライパンを洗ってみようと閃いたらしい。実際に洗ってみると思っていたよりきれいに洗えた、という投稿だった。しかも、そのおが屑は何回か洗えそう、更に、洗えなくなった残骸は、薪ストーブの着火剤として使える、と。
 
その投稿を見た時に、思わず「マジですか!」と声を出して言ってしまった。そのまま捨てられてしまいそうな資源の有効活用ができている。我が家も薪ストーブを使っているし、これは、これこそは、一石二鳥、いや一石三鳥のエコ活動になるのでは? でも、待てよ。檜は油分の多い木ではあるが、たわしになりうるのだろうか? 形状として無理があるのでは? 水に浸しても大丈夫なのか? 全くイメージがわかなかった。
 
早速FB友達に檜のおが屑をどうやって使ったのかを聞いた。すると、他の人から「こういうたわし状になてると嬉しい」と既にたわしになっている商品の画像と共にコメントに投稿があった。知らなかった。こういうものが存在してたのか。
 
確かにたわし状になっていれば使いやすそうだ。でもFB友達からは、たわしでは渡せないけれど素材だけなら渡せる、との返事。アクリルたわしを編めるレベルで大丈夫ならと安易に考え、そう伝えた。
 
数日後、私の手元には45L大の袋いっぱいに入ったおが屑が届いた。中には2種類のおが屑が入っている。一つは、「チリチリくん」と友人が呼んでいる細かいおが屑。もう一つは、「リボンちゃん」という長さがまちまちの5㎝幅くらいの薄い木のリボン状になっているもの。しかし、たわしの作り方は皆目わからない。試しにリボンちゃんを細く裂いて編んでみるものの、毛糸で編むようにはいかず四苦八苦した。一つ作るのに膨大な時間がかかりそうで呆然とし、進みの悪さにイラっとしてしまった。
 
もうこうなったら、グルグル巻きに束ねてしまえ、と強硬手段にでた。兎にも角にも使ってみて、実態を知ることが先決だと思ったからだ。恐る恐る水に浸してみる。紙のように水分を含んでベロンとすることもなく、多少の張りが残る。かといって、ガサガサしているわけでもない。程よい感じで水分も含み、食器を傷つけることもなさそうだ。少し期待が首をもたげる。思い切ってお皿を洗ってみた。思っていた以上に滑りが良く、するするお皿の上を動いて、汚れを落としてくれた。気のせいか光の映りも、くすみがなくきれいな洗い上がりだ。
 
これは、期待以上の働きだ。次は、プラスティックのタッパー。お皿を洗うよりやや丁寧に一通り洗った。なんと、驚きの結果だ。以前洗剤のCMであった「指で触ると、キュッキュッ」となる仕上がりだったのだ。アクリルたわし以上の成果に、これは、これこそは、私の悩みを解決してくれる台所のヒーローの誕生だと思った。
 
檜のたわし製作はとん挫しており、今はたわしもどきで洗い物をしている。でも、しばらく使ってみるとわかるのである。ヒーローも、3分間しか戦えない等の弱点はある。
 
檜のたわしは、使っていると線維化してボソボソになってくる。最後のお勤めの着火剤となる直前は、髪の毛の太さの繊維状になったものが洗い物に付きやすくなり、うっかり一緒に乾燥されていることもある。そして最大の難点は、フライパンの焦げ付きがきれいに落とせないことだ。この場合、フライパンで完全に焼ききってしまうか、ヒーローの相棒として亀の子たわしに登場してもらうしかない。ヒーローには、ピンチの時に助けてくれる仲間が必ずいるものだ。
 
 
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2019-03-15 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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