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メディアグランプリ

『スパイダーマン スパイダーバース』が問いかける新たなヒーロー像


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:遠藤淳史(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 

「気が付いたら体が勝手に動いてました」
 
非常時に人助けをして表彰された人は、共通してこう話すことが多い気がする。
 
踏切から出られなくなった車椅子のご老人を助けた人も、川で溺れていた子供を助けた人も、ニュース記事で警察からの表彰状を手にする写真に添えられているコメントは似ている。
 
それくらい衝動的に、考えるよりも手や足が先に動くのはその人の特性なんだと思っていた。危機に晒されている命が目の前にあるならば、何としてでも救おうとする。いわゆるヒーローって奴はそういう人のことを言うのだと。
 
幸か不幸か、私は今までそういった場面に出くわしたことはない。もし遭遇した場合でも、目の前にある危機を第一優先に考えられるかどうか自信がない。周りの目を気にして躊躇したり、見て見ぬ振りをしてしまいそうな自分も見え隠れする。
 
だからそのような人たちをニュースで見る度に、本当に凄いなあと、感嘆の声を漏らさずにはいられなかった。
 
「自分はヒーローになれないし、なるタイプでもない」
 
ずっとそう思い込んでいた。
 
けれどもそんな私に「人は誰でもヒーローになれる」というシンプルで力強いメッセージを、これ以上ない面白さと共に突きつけてくれたのが、現在公開中の映画『スパイダーマン スパイダーバース』だ。
 
誰もが一度は名前を聞いたことがあるであろう、いわゆるクモ男。
これまで幾度も実写作品が公開されてきたスパイダーマンだが、今回の作品はアニメーション。
2月に行われた第91回アカデミー賞では、ディズニーやピクサー等の強豪を抑え長編アニメーション賞に輝き、ヒーロー映画として一つの金字塔を打ち立てた。
 
けれども、すでに語り尽くされていると思っていたスパイダーマンの物語を、なぜ今アニメーションで製作するのか、そしてなぜこんなにも評価が高いのかが不思議だった。
 
その謎を探るべく、満を持して映画館へ向かった私は開始早々、その映像に目を奪われた。
 
何かしら新商品をアピールする決まり文句として「未体験の〜」とか「誰も見たことがない〜」といったフレーズが使われるが、今回のスパイダーマンは本当に「誰も見たことがない」映像だった。それは決して誇張しているのではなく観客全てを釘付けにする力を十二分に持ち合わせていた。
 
「今自分は一体何を見ているのだろう?」
 
漫画がそのまま動いているようなコミカルさにCGが加わり躍動感溢れる映像が全編に渡って繰り広げられる。それは間違いなく、実写では表現できない革新的なものだった。
 
人は自分の理解の範疇を超えるものを見たとき、まず先に拒否反応を示すという。
およそ100年前、初めてアニメーションを見た人々は「ありえない! 絵が動いてる!」と言いながら腰を抜かしたらしいが、その人達の気持ちが少し分かる気がした。
CGはその美しさとリアリティでいつだって私たちを物語の中へと連れ込んでくれていた。それに見慣れてしまったのか、現代のCG技術は頭打ちになっていたと思っていたが、とんでもなかった。まだまだ発展途上だと言い切れる。
 
そして何よりも、主人公マイルスに勇気をもらえるのだ。
平凡な中学生だった彼は、特殊なクモに噛み付かれたことで突如スパイダーマンとしての力を与えられる。
憧れのスパイダーマンの能力を手にしたマイルスだったが、全くうまく使いこなせない。腕から糸を出してカッコよく街を飛び回りたいのに、怖気付いてそれどころではない。
 
ヒーローとして活躍できる武器は与えられたけれど、それを使いこなすスキルと勇気がマイルスにはなかった。
ガラケーを使っている私の祖父に最新型のスマートフォンをプレゼントしても使いこなせないのと同じで、豚に真珠の状態。
 
世界の危機がすぐそこまで迫っているのに、何も貢献できない無力さ。
仲間からは見放され、理想と現実の溝は深くなるばかり。
 
「自分は本当にヒーローなのか…」
「なぜ自分がスパイダーマンとして選ばれたのか…」
 
マイルスは悩み苦しむ。
ヒーローは超人的な力を持った無敵の存在でもなんでもなく、一人の人間としての悩みや葛藤を当たり前のように抱える孤独な存在なんだと教えてくれる。あまりにも身近な存在なのだ。
 
この姿が、全く同じだった。
理想やなりたい姿を追って転職までしたけれど、実現する時はいつか来るのだろうかと不安になっていた自分と。
自分一人でなんでもできると思っていたけれど、たまに来る家族からの連絡にどうしようもなく安心してしまう自分と。
何者かになりたくて意地を張って、周りと比べることをやめられない自分と。
 
マイルスが見せる弱さには、必ずどこか観る人が共感できるポイントがある。
その観客たちの思いを投影した彼が、どのようにスパイダーマンとしての自分を受け入れ、戦いに身を投じて成長していくのか。
 
その答えはあまりにもシンプルで、だからこそ「人は誰でもヒーローになれる」というメッセージが際立つのだと思った。
 
革新的映像と誰もが楽しめて共感できるストーリー。
これが『スパイダーマン スパイダーバース』が絶賛されてやまない要因だった。
世紀の傑作を目の当たりにした私は興奮冷めやらぬまま帰路についた。
 
帰りの電車では座りながらずっと映画のレビューを読んでいた。
すると、目の前に立っていた女性のバッグについている、妊婦であることを表すバッジが目に入った。
 
あまりにタイミングが良すぎるのではないか。
思わず笑いそうになった。
 
考えるよりも先に立ち上がり、「ここどうぞ」と声をかけ、生まれて初めて座席を譲った。
小さく「ありがとうございます」と言ってくれた。
周囲を気にして躊躇することはなかった
 
「人は誰でもヒーローになれる」というのは、誰でも簡単に命や世界を救えるという意味ではない。どんなに小さなことでも、困っている人を助ける私たち一人ひとりこそがヒーローなのだと、スパイダーマンは教えてくれた。
 
だからこの瞬間、私もヒーローの仲間入りを果たしたのだった。

 
 
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2019-03-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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