メディアグランプリ

平成生まれに変な対抗心を持つ昭和60年代生まれ女が、平成最後に聴きたい曲として平成生まれロックバンドgo!go!vanillasの『平成ペイン』を激押しする


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記事:西元 はる香(ライティング・ゼミ土曜コース)

平成が終わる。
私がそのことを知ったのはTwitter上だった。ニュースが発表されると同時に人々は平成にまつわるワードをツイートし、日本中が大いに盛り上がった。
『昭和VS平成に決着』、『平成生まれもついにこっち側か』といった類いのツイートは特に目立ち、昭和生まれの人と平成生まれの人が敵対する場面も多く見られた。

実にばかばかしい話かもしれないけど、昭和生まれは平成生まれをライバル視している。全員がそうではないけれど、昭和60年代というギリギリ昭和生まれの私はそうだった。

昭和61年生まれの私は、平成が始まった時点で2歳と2か月。ゆえに、元号が変わったときの記憶がない。物事がついた頃にはバブルは崩壊していて、世の中は不況だった。バブルを知っている大人たちに育てられているけれど、世の中は大人たちが育った時代とは違う。なんとも言えないモヤモヤの中で成長し、思春期をこじらせ、そして大人になった。
そんな私たちの2つ下、妹のいる学年には平成生まれがいる。なんとなく私たちの中で、その『昭和63年、64年、平成元年』のいる学年をギリギリ『こっち寄り』とした謎の境界線のようなものがあった。
私たちがゆとり教育に入る前の最後の学年ということも加わって、61年生まれにとっては特にその境界線は目立って感じた。

だから、Twitterで昭和VS平成論争が起きたときも、昭和勢の意見にうんうんと頷いていたのだ。昭和の記憶がないのに、おかしな話なのだけど。

そんな私の価値観が変わったのは、平成30年、昨年の夏のことだった。
楽しみに見ていた深夜アニメを視聴したあと、その場にいた姉がチャンネルを回しはじめた。

「深夜だから何も面白そうな番組ないね。BSも見てみようかな」

そういって姉は、普段見ないBSにチャンネルを合わせていく。私はさっき見たアニメの録画をもう一度見たかったので、早く寝てくれないかな~と願っていたのだが、姉の目は固いようだった。

「あ、なんか音楽番組してるよ。へぇ、この人大分出身なんだって」

大分出身と聞いて、眠気に襲われはじめていた私の目がパッと開いた。これはあるあるだと思うんだけれど、同じ出身県の有名人を見ると応援したくなるものだ。

テレビに映っていたのは、go!go!vanillas(ゴーゴーバニラズ、以下バニラズ)というロックバンドだった。ボーカルの牧とベースの長谷川が大分出身、4人中3人が九州出身だという。加えて、メンバー全員が平成生まれだというのだ。

へぇ、若いねぇ。同じ出身県というから少し聞いてみようか。そう思ったのがはじまりだった。
次の瞬間、テレビから爽快なサウンドが鳴り響いてきた。平成生まれが作り、平成生まれが奏で、平成生まれが歌う邦ロック。どこか懐かしいような昭和を感じさせるメロディ、けれどもどこか新しく斬新で、私の心をわしづかみにするのに時間はかからなかった。

あ、これ好きだ。

そう思った瞬間スマホを開き、バニラズについて調べはじめた。
ボーカルの牧とベースの長谷川は1989年、平成元年生まれで私の3つ年下。大して歳は変わらない。そして、公式のミュージックビデオがYouTubeにUPされている。私の指は流れるように画面をスワイプし、YouTubeの動画をタップしていた。

最初に目に入ったのが『平成ペイン』という楽曲だった。先ほどの音楽番組でも聞いた曲だ。
もっと彼らの曲を聞いてみたい!
大分出身だとかそういうことは頭の中から消えていて、私は夢中になって平成ペインを聞いた。流れるようなベース音の上を走る爽快なギター、思わず踊り出したくなるドラムのリズムに、軽やかなボイス。平成生まれが作った音楽が、昭和生まれの私の心を躍らせた。

この『平成ペイン』は平成生まれが感じた平成への感情を、リアルに、そして焦燥感を抱えながらもポジティブに歌い上げている。他の楽曲もポジティブで前向き、聞いた直後に自然とマインドが持ち上がる。不況しか知らない平成生まれが作った曲だからこそ、前向きになれる曲なのだろう。
そして『平成ペイン』を聞いていて、昭和生まれも平成生まれも大して変わらないんだな~と、そう思った。考えてみれば平成元年生まれの人は30歳になろうとしているし、会社なんかにいたらそこそこ活躍している年だ。平成生まれも昭和生まれも一丸となって協力して、時にはライバル視して。そんなふうにいい関係でいられたらいいなぁと、純粋にそう思った。たかが昭和に生まれたというだけで、ゆとり教育を受けていないというだけで、たかが3年早く生まれたというだけで。変にいがみ合っていたのがばからしく感じてくる。そしてそれを教えてくれたのは、平成生まれの彼らだった。

あの日から半年、今日も私はバニラズの楽曲を聞く。4月1日のBGMに選んだのはもちろん『平成ペイン』。平成の痛みを超えて新しい時代に向け、新しく歩いて行こう。そう思わせてくれる最高のBGMだ。4月いっぱい、私は毎日彼らの曲を聴くだろう。

新しい元号は『令和』。ちょっとこじつけだけど、数字にすると00。始まりの年だ。新しいスタートを迎えるために、心をポジティブに盛り上げる。そのために今日も、スマホの再生ボタンをタップするのだった。
 
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2019-04-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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