メディアグランプリ

Lazy Monday


 
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記事:高柳(ライティング・ゼミ日曜コース)

レイジーマンデー
水曜日の午後、久しぶりに午後半休を取り、窓際で太陽の光を浴びながらぼーっとしていた時、久しぶりにこの言葉を思い出した。
 
“I will recommend you to have a lazy Monday today”
(今日はレイジーマンデーにしたらどう?)
 
もう10年以上も前のことだが、カナダに留学していた際、学校に行くのをしんどそうにしていた私にホームステイ先のおじさんが掛けてくれた言葉だった。
 
直訳すると「怠惰な月曜日」といったところだろうか。
つまりは、月曜日に仕事や学校をお休みするということ。
そういった用語がカナダでは普通に使われているのか、おじさんが考え出した言葉なのかは今でも良く分からないが、このレイジーマンデーの考え方は、その後の私に良い影響を与えてくれた。
 
大学を1年休学し、選んだ留学。
親にもお金を支援してもらっている、就活も1年遅れる。
「最低でも語学はある程度の水準に到達して、将来に活かさないと」
そんな脅迫観念も持ちながら挑んだ留学生活。
 
正直に言えば、勉強はすごく難しいというほどでもなかったし、日常会話も普通にこなしていた。授業はとても楽しかった。
それなのにカナダに来て3ヶ月目の私は壁にぶち当たっていた。
 
友達と呼べるような友達ができない。
家に帰ってもホストファミリーとも、何を話したらいいか分からない。
居心地の良いと思える居場所がない。
言葉や文化の問題ではなく、人としてもっと根本的な問題にぶち当たっていたのだ。
 
この問題は、カナダに来て初めて出会った訳ではなく、実は日本の大学でも全く同じような状況になっていた。
何となく、みんなとたわいの無い話をして、お酒を飲んでということが時間の無駄のようにしか思えず、クラスの集まりにもほとんど顔を出さなかった。
そうするとどうなるか。結果は明白で、深い話をできるような友達はいなかったし、休み時間にずっと話していられるような友達は出来なかった。
 
日本でのこの状況を変えたくて、留学を選んだはずなのに、結局同じ問題に捕まってしまった。環境が変われば自分も変われるほど人生は甘くなかった。
 
「肩に力が入りすぎているから、今日は1日ゆっくりしなさい」
「おじさんはレイジーマンデーに何をするの?」
「何もしない。ただリラックスして、自分を感じるだけ」
 
禅問答のようなやりとりをホームステイ先のおじさんと話したあと、急に丸1日やることが無くなった私は散歩に出かけた。
 
歩きながら色々な思いや感情が頭をよぎる。
だけど、天気があまりにも良くて、周りの田舎の景色があまりにも綺麗で、色々なことがどうでも良くなってきた。良い意味で悩もうとしても上手く悩めないそんな状況だった。
 
「ただ天気が良いというだけで、こんなにウキウキできるものなのか」
すっかり気が大きくなった私は、カナダ人に紛れて公園の芝生に直接寝転ぶ。
虫が多くて、3分くらいしか寝転べなかったけど、ただただ空を見て、それだけで心がリフレッシュされるそんな感覚に包まれた。
 
何でも話せる友達が欲しい。
居場所が欲しい。
だったら、自分から心を開いて仲間の中に入っていく。
 
すぐに答えが出てしまった。ものすごい威力だ。
その威力に気づいてから、数ヶ月に1回はレイジーマンデーにお世話になっている。
若干休みすぎて、おじさんは変なこと教えるべきじゃなかったと苦笑いをしていたこともあったくらいだ。
 
どうしてなのだろう。
 
答えは一つでは無いかもしれないが、私が思うにレイジーマンデーは私達の日々に余白を与えてくれる装置なのだと思う。
そして余白は無駄だと思っていたが、余白があるからこそ考えを整理する余裕が生まれたり、新しいことを学んだりするきっかけが生まれるのだ。
 
10年以上経った今も、たまに午後休暇を取って、自分に余白を持たせるようにしている。
学生時代は休んでも一円ももらえなかったけれど、社会人になってからは有給消化で堂々とレイジーマンデーを過ごせるのは夢のようだし、休日と違って夫もいないと自分のことだけに集中ができる。鬼のいぬ間に洗濯といったところだろうか(いや、鬼は私か)。
 
カナダに留学をして学んだことはレイジーマンデーでしたとは両親には言えないけれど、実は英語以上に使える武器を手に入れることができたと思っている。
 
レイジー(怠惰)は必ずしも悪いことではなかったのだ。
 
 
 
 
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2019-04-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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