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スランプ脱出の鍵は、胸キュン時計 〜新入社員時代を思い出して〜


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【4月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:美友(ライティング・ゼミ土曜コース)
 
朝の満員電車で、新しいスーツに身を包んだ新入社員を見かけるようになった。
期待と不安を胸に抱き、はち切れんばかりに輝く笑顔。
 
その眩しさが4月の始まりの頃の私には正直きつかった。
何か大きな出来事があったわけでもないのに、ここ1ヶ月くらい仕事もプライベートも何だか思うよう進まなかった。
 
人生のスランプに陥っていた。5月病ならぬ、4月病。一足先取りだ。
 
春は自律神経も乱れやすいのもあり、体調も不安定で、朝だるくて動けなかったり、気圧の変化のせいか、頭痛が止まらない日が続いたりしていた。
 
週末、しまいにはライティングゼミの課題も、1文字も書けなくなってしまった。
言葉が全く出てこないのだ。
書かなきゃと思えば思うほど、キーボードの上の手は動かなくない。
 
何となく疲れていて、外に出かける気力もなく、ドラマでも見て気分転換しようと思った。今はもう終了してしまったが、丁度その頃新しいシーズンのドラマのつなぎで、動画配信サイトのTverで、昔のドラマの一挙再放送をやっていた。
 
どこかで聞いたことがあるタイトルが出てきた。
 
「夢をかなえるゾウ」だ。
 
ドラマ自体は2008年に放送され、水野敬也の小説が原作だ。
何をやってもうまくいかない社会人あすかの前に、象の姿をした関西弁を喋る神様、ガネーシャが突然現れる。ガネーシャが色々な課題を出していき、それをクリアすると主人公が成長していくのだ。
 
ドラマ化されていたのは知らなかったので、ちょっとだけ見てみることにした。
1話30分の短いドラマである。水川あさみと本気でふざける古田新太のガネーシャのギャグセンス満載で、テンポがよく、大爆笑してしまった。
 
その中で、印象に残ったのは第4話に出てくる「胸キュン時計」だ。
 
「胸キュン」と聞けば、恋とかときめきを連想するかもしれない。
でも、ガネーシャが出してきた胸キュン時計はそんな可愛いものじゃなかった。
 
この回の課題は、「嘘をつかない」であった。
 
この時計をすると、嘘をつく度に、電流が走ったように、胸がキュンと苦しくなる。しかも、一度つけたら、ガネーシャしかはずせない。
 
主人公ハートの文字盤のついたその時計を深刻にとらえず、会社に行く。ところが、日常のことある会話の場面で、胸キュン時計が反応してしまい、叫び狂うような苦しさを味わうことになる。
 
上司に何か言われて、イラっとしても、愛想笑いでごまかす。キュンとなる。
先輩にめんどくさいことを言われて適当に流せば、またまたキュンと時計が反応する。
 
そして気づくのだ。
日々の何気ない会話の中、思った以上にその場しのぎで、本当の自分の気持ちにも嘘をついたのだと。
 
まるで今の自分を見ているようだった。
 
ドラマでは、胸キュン時計を通して、自分の気持ちをごまかした時の痛みを感じられる。
 
でも、現実では、目に見えないし、電流が走るわけでもない。
 
役割上、間を取り持つ調整役なども多く、板挟みになる。
その場を収めようとする引きつった笑顔。
違和感を感じても、面倒臭くなりそうな相手には、よほどじゃない限り、適当にごまかしていた。
 
そうやって気がつかないうちに、表に出てこない痛みでハートが苦しくなり、スランプで気持ちがついてこなくなってしまった。結局その場は収まっても、いつかツケは回ってくる。
 
そんな自分に気づいた主人公は、自分の気持ちに素直になり、変わっていこうとする。
 
自分の気持ちを大切にすることは、自分勝手ではない。
自分の気持ちを尊重すれば、変な愚痴も溜め込んだり、卑屈になったりせず、スッキリとした気持ちで、
相手のことも自然と尊重できるのだ。
 
ドラマを見ながらふと思い出したのだが、この原作本は、新入社員の頃、社長からプレゼントされことがあった。本のとおりにやってみと言われて、ガネーシャの課題を素直に実行したはずなのに、あの時のことさえ、すっかり忘れていた。
 
新入社員の自分が目の前にいたら、今の私になんというだろうか。
あの頃は自分の気持ちに正直に、思いっきり仕事や人生を楽しんでいた。
 
できない理由や言い訳を並べないで、どうしたらできるかを考える。
自分の気持ち素直になったら?やりたいことやって、言いたいことを表現して人生は楽しんだもん勝ちや。
 
その本をプレゼントしてくれた今は亡き社長が私によく言っていた言葉でもあり、
何か困難を乗り越える時や壁にぶち当たった時に、自分の口癖にもなっていた。
 
今の私は、自分の気持ちに嘘を重ねることで、迷子になっていた。
周りに合わせて自分の気持ちを抑えすぎて、自分が結局どうしたいか、見失っていた。
 
そんな自分に、今さらながら、気がついたのだ。
 
私も変わりたい。
 
とにかく、次の月曜日、胸キュン時計をつけたつもりで、1日過ごしてみることにした。
 
結果は、いつもより、毒舌なブラックな私が出てきた。
いや、これが本当の私なのかもしれない。
 
結構先輩からきつい言葉で返された時、いつもなら、「大丈夫」って笑顔でごまかそうとしていた。いや、本当は大丈夫じゃなかった。やっぱり人間だから、傷つくのだ。
 
「それ、大丈夫じゃないですから。その言い方がけっこう傷つくのでやめてもらえますか」
いつもは怖くて言えないけど、「ガネーシャの課題」という大義名分があるから、ハードルが下がったのだ。
 
本音を言って嫌われたくない、ややこしくしたくないと言う自分の弱さから、楽な方に流れていた。
 
でも本当は、日常1コマ1コマの中で、私たちには選択肢がある。
自分に気持ちに嘘をつかずに、素直になることを選べるはずだ。
 
一歩踏み出しさえすれば。
 
そして、案外本心をごまかさずにストレートに言ってしまっても、
そんなに嫌われたり、何か特段嫌味を言い返されることもなかったのである。
これを言ったら、相手に悪いんじゃないかと気にしていたのは、結局自分だけだったのだ。
 
見えない胸キュン時計のおかげで、爽快感で終えた1日だった。仕事もはかどった。
 
そんな日を過ごしたら、急に自分の嘘偽りのない今の気持ちを書いておきたいと思った。
ようやくPCに向かって、キーボードを叩き、ライティングゼミ の課題に取りかかれた。
 
ガネーシャの胸キュン時計は、スランプ脱出の鍵だったようだ。
 
自分の気持ちに嘘をつかずに、素直になることを思い出させてくれた。
「夢をかなえるゾウ」をプレゼントされた新入社員の頃のように。
 
せっかくだし、初心に戻ったつもりで、他のガネーシャの課題もやってみようかなと思う。
 
いつもの朝の通勤路。相変わらず、満員電車の新入社員達はキラキラして微笑ましい。
おふぃすまでのみちすがら、手のひらに桜の花びらが舞い落ちた。
見上げると、散り始めの桜の間に、新緑の若葉が眩しく輝いていた。
 
意識が変われば、見える世界の彩りが変わってくる。
久々になんだかやる気がみなぎってきた。
 
 
 
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2019-04-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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