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どうやら宇宙人らしい妻との共同生活


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記事:高良祐次(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
僕はどうやら、宇宙人と結婚してしまったのかもしれない。
 
もちろん僕の妻は民法でいうところの自然人だし、戸籍謄本にもきちんと記載されている。
日本国憲法第24条がいう通り、お互いの合意に基づいて合法的に婚姻の手続きを踏んだはずなんだけど。
こんなことを書いているとたぶん(確実に)妻から怒られる。
でもやっぱり僕の妻は宇宙人だ。
 
あれは6年前だっただろうか。
初めて出会った当時から彼女はとても魅力的な女性だった。思い出という名の美化作用の影響ではない。ノリもよく気が合い話が盛り上がり、血気盛んだった僕は引き締まったボディラインにイチコロになり……。
その話の続きは読者の想像にお任せするとして、まぁそんな感じで一緒にご飯を食べに行ったり旅行に行ったり、楽しい恋人時代を過ごしたのだ。
 
出会いから1年、僕たちはしばらくの同棲生活の後、正式に結婚した。
一緒に同じ屋根の下に生活を共にしてみるのと、付き合うだけというのは実に違った。
結婚してわかったのは、いい意味でもそうではない意味でもいろんなところが見えてくる、ということ。
 
血液型だけでみんながそうだと言い切れるわけではないのだろうけど、僕はいわゆる典型的なO型で、彼女はいわゆる典型的なA型だと思う。
何となく想像できるだろうか。
 
例えば旅行に行こうとなった場合。僕はあまり計画を立てようとしない。
それは、計画を立てることが面倒だという理由もあるし、「旅の恥はかき捨て」という言葉があるように、旅においてはハプニングや失敗も思い出の一部になると考えているからだ。
ひるがえって彼女はどうだろうか。
彼女は「計画こそ命」であると考えている。
泊まる宿の比較検討はもちろんのこと、昼食をどこで何時にとるか、この場所では何分くらい滞在するか。何時に家を出るのか、何時に起きるのか、何時に寝るのか……。
気が狂いそうである。
彼女としては計画を立てる時間も旅行の一部なのだろう。とてもウキウキしながら計画について提案するとき、僕の反応がイマイチ鈍いと機嫌を損ねる。
僕は僕で、そこまで緻密に決めようとされることで楽しみが減っていくような気がしている。
 
他にも例を挙げてみよう。
彼女は記憶力が良いほうで、良いことも良くなかったことも本当によく覚えている。
「ほら、あの時こう言ってたでしょ?」という言葉を、僕はもう何度も耳にしている。
一方の僕はというと、良いことも良くなかったことも一晩寝ればスッキリ忘れている。
彼女の「ほら、あの時こう言ってたでしょ?」に反応する僕の「そうだったっけ?」という言葉を、彼女は同じ数だけ聞いているに違いない。
 
本を読む、読まない。
熟睡できる、眠りが浅い。
値札を見る、見ない。
花か団子か。
適切だと思うゴミ箱の位置と数量。
ブレーキを踏むタイミングと車間距離。
歯磨きする場所。
卵焼きの味付け。
他人とのかかわり方。
実に、枚挙にいとまがない
 
そもそも男と女である。
脳の作りも神経のつながり具合も違うので「男女は別の生き物だ」という人もいる。
そんな2人が一緒に生活を営んでいこうとする。
未知との遭遇、宇宙人との共同生活である。
そしてその宇宙人が一番近くにいる。
 
思っていることが相手にうまく伝わらなかったり、僕の思っていた通りにはならなかったりして、よく喧嘩もした。
対話では解決できずに、数々の宇宙侵略戦争を繰り広げた。
「なんでこんなに喧嘩ばっかりするんだろう」
悩んでいた僕は、あるWebページで紹介された言葉を読んでハラオチした。
 
「そもそも、男は火星人で、女は金星人だった」
この言葉はジョン・グレイの著書『ベストパートナーになるために』(三笠書房)での一節だと紹介されていた。
僕は地球人で彼女は宇宙人だと思っていたけど、違った。
僕は火星人で、彼女は金星人らしい。
どうやら僕も、彼女にとっては宇宙人らしい。
 
今までは「彼女は間違っている」と思っていたから、僕の考えを押し付けてしまっていたのかもしれない。
そうではなくて、「僕と彼女は違う部分もある」
そう考えることができるようになってから、距離感をうまく保つというか、随分気が楽になったような気がする。
結婚生活も6年目を迎えたし、今では2歳になる小さな宇宙人とも一緒に生活している。
妥協するという意味では決してないけど、「それぞれ違うから仕方ないよね」と思えるようになった。
もともと違う宇宙人だと思っているから、たまに気が合うと奇跡的な感じがして余計に嬉しい。
宇宙人との共同生活も、案外悪くない。
 
 
 
 
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2019-04-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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