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大人になると歯磨きが増える


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:西岡由季菜(ライティング・ゼミGW特講)
 
 
3年前の春、大学を卒業した私は就職のために上京し、はじめての1人暮らしをはじめた。
 
はじめての社会人とはじめての1人暮らしが重なり、覚悟はしていたが、それはそれは最初は大変だった。
 
入社して研修もそこそこに、とにかく体当たりで量をこなせ! な方針の会社で、入社月の4月から金曜日以外は基本終電だった。金曜日は華金ということで飲みに行って、土日に残りの仕事をした。
 
自ずと家事は後回しになる。
だって、帰ったら一刻も早く寝たい。 少しでも早く帰れたらダラダラ自分の時間にしたい。
 
しかし、4月も下旬に差し掛かる頃、家事はやらないと生活が回らなくなるということに気が付いた。
洗わないと皿はなくなる。自炊は毎日出来なくてもお茶は毎日飲むのでコップがなくなる。
1人暮らしの家だ、服は7パターン以上あってもバスタオルは7枚もない。1週間に1回の洗濯では追いつかない。
 
というわけで、どんなに眠くても疲れていても、最低限の暮らしのために必要なことを毎日やるようにした。何もかもはとても無理だ、完璧からはほど遠いが、30分だけでも何か家のことを毎日するようにした。
 
やらざるを得ないからそうしただけだったが、毎日やると、だんだん慣れてきた。習慣化というやつだ。
誰に褒められるわけでもないが、自分のことをやって寝ると、体は疲れているのだが、心がスッキリした。
 
自分のことを自分でできるようになってきたという事実は、会社で商談後のメールに先輩にダメ出しをされないようになってきたことよりもずっと、自立し始めた実感を私にもたらしてくれた。
 
面倒だけど、自分のことだから自分のために毎日やる。
歯磨きみたいなもんだなと思った。
 
歯磨きは、子供が生きていくために習得する色々なことのなかで、やらないと生きていけないわけではないが、
自分が健康で快適な生活をするために、面倒だけどやったほうがいいことの中でも、最初に習得することではないだろうか。
 
何から何までやってもらってばっかりだった赤ん坊から、
歯磨きが1人で出来るようになった子供のような感覚を私は覚えていた。
 
 
 
社会人歴3年、1人暮らし歴3年が経った私は、婚約を機に2人暮らしになった。私より相手が数倍忙しく、家のこと生活のことは全般私が担当している。
 
2人暮らしになり、広い部屋に引っ越せたのはよかったが、掃除も大変になった。
ご飯も2倍、使う食器も2倍、つまり洗い物も2倍。加えて、 1人暮らしの時のように、今日はめんどくさいからお弁当を買うでは相手に申し訳なく、日々の自炊率は上がった。
洗濯機は量が2倍になるだけではなく、洗濯機がすぐいっぱいになるので頻度も2倍になった。
 
ああ、歯磨きが増えたなと思った。
 
変わらず自分も働いているので最初は作業量が増えたことは大変だったが、毎日なんとか生活が回るようになんとか食らいついた。
 
 
 
すると、3カ月で慣れた。
 
でも、ただそれだけのことだった。
 
1人暮らしで赤ん坊から歯磨きが出来るようになったぐらいの実感があるなら、2暮らしを回せるようになれば、もう少し成長した実感があるかと思っていたのだが、実際にはそうでもなかった。
より多い量がより早く出来るようになったかもしれないが、生活を健康で快適に過ごすために必要なことを毎日するという意味では、やはり歯磨きが増えただけだと思った。
 
つまり、実際には自分のことを自分のためにしているという意識からは変わらなかったのだ。出来なかったことが出来るようになったとか、今まで自分が経験した成長とは別だった。
 
 
うまく言えないが、誰に褒められるわけではないけれど誰かのために、自分の意識の中で自分のこととして考えられることが増えた。その実感だけが強く私を動かした・
成長したのかはわからないが、自分は少し大人になったと思った。
 
これからまた年齢を重ねると、子供が生まれたり親が弱ったり、生活がどんどん変わるだろう。しかし、自分のこととして踏ん張り、また歯磨きが増えたって思う程度にその生活に慣れる度に、自分の意識の中で守れている人の数が増えていくのだろう。
 
 
大人になると、歯磨きが増える。
私が少し大人になったからだ。
 
 
 
 
***
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2019-05-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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