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メディアグランプリ

「悦郎くん、いらないよ」


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:村尾悦郎(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
子供の頃から、僕は文章を書くことに苦手意識を持っている。読書感想文は本当に嫌いだったし、はじめての仕事はアニメーターという絵を描く仕事で、「文章を書くこと」とは、全く無縁の生活を送っていた。そんな僕が、その後務めた会社では自社サイトの運営班に配属され、一転してたくさんの記事を書くことになる。だが、最終的にニュース記事については毎朝ウォーミングアップがわりに書けるほど手慣れたものになっていた。
 
「悦郎くん、いらないよ」
 
これは、その会社に入社した当時、“荒垣さん”という先輩に言われた言葉だ。この一言が、僕が文章と向き合い、楽々と記事が書けるようになる出発点となった。今回はその時の話をしよう。
 
入社した直後の僕は、PCソフトの使い方を習ったり、商品の発送を手伝ったりしながら試用期間を過ごしていた。そんなある日、サイトに掲載するニュース記事を書くよう、荒垣さんから突然言い渡された。
 
「悦郎くん、そろそろウチのサイトのニュースを書いてみようか?」
 
「ええ? 僕、文章書くのって苦手なんですけど……」
 
と、抵抗したのだが、
 
「苦手でもやらなきゃな。30分で記事にしてみて。」
 
問答無用で、荒垣さんは新商品の案内文を僕に手渡した。ニュース記事は商品の開発担当者が出す案内文を元に、サイト運営班が掲載用の文体に整えてアップしていた。
 
はじめての記事づくりだ。普通は短めでとっつきやすい文章を素材にするのが良いだろう。しかし、僕に渡された案内文は担当者の “熱い思い” が込められ、商品の特異性や革新性が繰り返し強調される1500字の大作だったのだ。
 
案内文の内容自体はおもしろかったので、僕はそれを熟読し、すっかりその商品のファンになったような気持ちで書きはじめた。だが、約束の30分はあっという間に過ぎてしまう。
 
「悦郎くん、とっくに30分経ったぞ~。いつできる?」
 
荒垣さんが机越しに聞いてきた。もちろん全然できてない。ハッと顔を上げ、僕は答える。
 
「ごめんなさい、もう30分待ってください!」
 
そう言ってパソコンの画面に目を戻す。早く書かなくては! サイトの文体に見よう見まねで合わせながら、なんとか仕上げていく。だが、「元の文章そのままじゃ面白みがないよな」、「なにか、自分なりの要素を付け足したほうがいいんじゃないか?」など、さまざまな思いが頭を駆け巡り、なかなか進まない。迷ったあげくに書いたものを全部消し、また書き出しては全部消し、ということを繰り返した。
 
「遅くなってすみません……チェックお願いします……」
 
完成した頃には、スタートしてから2時間が過ぎていた。内容に自信はあった。開発担当者の思いを余すことなく盛り込んだ、約1000字の大作ニュースとなった。だが、そんな僕の文章を一目見るなり、荒垣さんは言い放った。
 
「悦郎くん、いらないよ。」
 
ガーンだ。
 
2時間もかけてしまったのはさすがに致命的だったか……入ったばかりなのに、いきなりクビになってしまうのか……。文章と一緒に自分まで否定された気分で、本気でヘコんだ。
 
そんな僕のお通夜ムードを察し、荒垣さんは苦笑いを浮かべながら言った。
 
「違う違う、悦郎くん。ここだ。最初の文章。これがいらないんだ。なんで開発者の言葉からはじまるんだよ。こんなにドラマチックにしなくていいから」
 
「でも、開発者さんの情熱をまず伝えたほうが良いと思ったんです」
 
と、僕は荒垣さんに訴えたのだが、
 
「悦郎くん、これはニュースだ。“思い”はこのニュースにとって優先順位は下だよ。どうしても入れたいなら最後の方に入れたらいい」
 
と、一蹴された。そこから、怒涛の添削がはじまる。
 
「これも、これも全然いらない。次の文は使う。後半の内容と一緒にしよう。それと、ここで同じ内容を二回言ってる。いらない」
 
荒垣さんは僕の大作をみるみるうちに解体し、再構築していった。ものの5分で、1000字の文章がわずか250字に収まった。商品の発売日や特徴は最初の一文でまとめられ、開発経緯も一文で処理。開発者の熱い思いもシンプルに収められ、しっかりと最後に添えられていた。あの大作ニュースは、1分もあれば完全に内容が把握できるコンパクトな記事に生まれ変わっていた。「確かに読みやすい!」その鮮やかな変貌ぶりに、僕は感動した。
 
作業を終えて、荒垣さんは僕に言った。
 
「いいか悦郎くん、まず、そのニュースで何を伝えるのか、文章の“核”を見つけるんだ。もし、それがすぐに見分けられなければ、必要な情報とそうでない情報を選別するだけでもいい。とにかく余計なものを捨てるんだ。選んだ情報に優先順位をつけ、上位のものを集めて一文にまとめろ。ニュースは、最悪その一文だけ読んでもらえればいいんだよ」
 
確かに、元々その商品に興味がある人は多少文章が複雑でも読み進めてくれるが、そうでない人は一目見て「ふーん。」で終わってしまう確率が高い。例え一目見るだけでも、ニュースは最初の一文で「いつ、だれが、どんなものをリリースしたのか?」を把握してもらうことが使命なのだ。
 
それ以来、僕は「これは使う。これはいらない。」と、心の中で荒垣さんのモノマネをしながらニュースを書くようになった。「一文読めば、その後何が書いてあるか予想がつく」まずそれを目指せば、すぐにニュースはできあがる。苦手な文章を少しだけ身近に感じるようになり、いつしか僕は「ニュースなら朝飯前ですよ」とまで言えるようになった。
 
今でも、自分の文章が乱れてきたと感じた時には初心に帰るため、「悦郎くん、いらないよ」と、“荒垣さんごっこ”を行なうようにしている。
 
 
 
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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