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潰瘍性大腸炎が教えてくれたもの


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:佐々木靖子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「これは潰瘍性大腸炎ですね」
 
診察後、私は医師から告げられた。あれは2004年12月。結婚した翌年のことだった
潰瘍性大腸炎という病名はその時に初めて聞いた。どうやら難病指定らしく国からの援助がある。診療費は普通の病気と同じようにかかるものの、薬代は無料のようだ。
今後の手続き方法を、私はどこか他人事のように聞いていた。
 
ここ最近、トイレがやたら近いことは気になっていた。が、便秘になるよりはいいだろうと軽く考えていた。だが、ある日真っ赤な鮮血が出るようになり便器が赤く染まっていた。これはただ事ではない。これまで見ないふりをしてきたが、意を決して診察を受けたのだった。
 
難病、と聞いてもピンとこなかった。ネットでいろいろ潰瘍性大腸炎について調べたが、
はっきりした原因がわからないらしく、主だった治療方法がないため難病指定になっているそうだ。そして、ストレスが原因とも書いてあった。今の世の中、ストレスがないほうが珍しいのだから、私がかかるのはおかしいとも思った。だが、実はかなり大きなストレスを抱えていたのだ。
感じないふりをしていたが……
 
「俺、会社辞めたんだ」
 
結婚を翌月に控えた彼、のちの主人、が突然言った。
 
当時、SE(システムエンジニア)をしていた彼は、毎日のように深夜残業、土日出勤も当たり前で、休日に会社から電話がかかってくることもしばしばあった。
自分でも今の仕事は年をとった後にはできない、と考えていたようだ。結婚も控え、自分の将来を本気で考えたとき、悩んだ挙句、SEはやめて違う職業につくことを決めた。読書家の彼の本棚に、税理士、社会保険労務士、起業する方法などの本がずらっと並んでいた。彼なりに考えた上での結論だったのだろう。
 
彼は、SEを辞めて社会保険労務士を目指すことにした。だが、簡単になれる職業ではない。合格率は10%を切っており、多くの人は会社を辞め勉強に専念していた。彼もその一人だった。
来月結婚するのに、仕事辞めるなんて、とも思ったが何とかなるだろうと軽い気持ちで承諾した。
 
社会保険労務士は国家試験で年に1度しか受験期間がない。受かったら就職活動するという計画だったため、とにかく試験勉強は必至だった。夜は私より遅くまで起きて勉強し、私が起きる前から机に向かっていた。私はそんな彼を応援したかった。
 
だが、生活はいつも不安だった。私は、会社員だったため、安定した給料はあるものの、先が見えないというのはとても怖い。自分の給料と独身時代の貯金を切り崩しての生活だった。
私たちは泣きながら励ましあった。
 
仕事を辞めたことは、友人には隠していた。辞めた話だけが先行して変な誤解を生むのが嫌だったからだ。自分の身内だけにしか話していなかった。隠すために、色々なつじつまあわせをしてきた。そのうちに、自分の気持ちすらもわからなくなってきていた。
 
本当は不安で、さみしくて、辛かった。
でも、主人はもっと辛いはず。そう思うと自分の気持ちを言えなくなった。
帰りの電車では不安が募り、他の人に気づかれないよう泣いていることもあった。
が、家に帰ると明るい妻を演じていた。言わずに支えるのが良い妻だと思っていたからだ。
 
便器が赤く染まるようになったのは、結婚して1年くらいたった後だった。
私の身体が悲鳴を上げたのだ。
 
心と身体は密接につながっているという。そして、腸は悲しみを溜める場所なのだそうだ。
私は自分の気持ちをうまく吐き出すことができなかったようだ。それが腸にストレスを与えてしまったのかもしれない。大家族の末っ子で育った私は、いつも周りの大人が私の気持ちを先回りしてくれた。だから辛いときも、言わなくても周りが察して対処してくれた。
 
私は大人になってからもそれを続けていたようだ。
そして、自分の辛さを分かってもらいたくて、あえて潰瘍性大腸炎というやっかいな病気になったのかもしれない。
 
ある時、「シャンパンタワーの法則」というのを知った。
 
グラスを積み重ね、一番上のグラスにシャンパンを注ぐと、それが溢れて
二段目のグラスに注ぎこまれ、それが溢れだすと三段目のグラスに注ぎこまれていく。
 
このシャンパンタワーと同じように、心と身体を満たす順番が
一番上のグラスが自分
二番目のグラスが家族
三番目のグラスが友人、知人
四番目のグラスがお客様、取引先
だそうだ。
 
この法則を知って愕然とした。私は自分が勝手に作り上げた良い妻を演じようとして
一番上のグラスが空になっても、二番目以降のグラスに注ごうとしていたのだ。
 
私はこの法則を知って以来、自分のグラスを満たすことを優先している。
自分の都合優先と思われそうだが、結果として家族や友達も満たされていくことをたくさん体験してきた。だから一番上のグラスはいつも満たされていなければいけない。
 
潰瘍性大腸炎という病気が、私の良き妻という勘違いを正してくれた。
この病気は保険にも入りづらくなり厄介な病気だ。だが私はこの病気のおかげで自分を満たすことの大切さを知った。それ以来、潰瘍性大腸炎は発症していない。主人とも楽しく暮らしており幸せだ。
 
みなさんは、自分のグラス満たされてますか?
 
 
 
 
***
 
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2019-05-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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