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美術ノート:モノクロ写真の魅力〜京都国際写真展〜


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田 健介(ライティング・ゼミ書塾)
 
一枚の写真の前に僕は立っていた。
会場にたくさんの写真が並べられている。
一番大きなブースの終盤にひっそりとその写真は掛かっていた。
大きさは縦横80cmもない程の正方形。
男性が1人写っている。
 
「思っていたよりも大きいな……」
 
そんなことを思いながら、被写体の男性に目をやる。
 
頭から肩までを写した写真。
服を着ているのか、着ていないのか、画面上では確認できない。
目を瞑り、何かの動作からか、髪はふわりと逆立っている。
あらわになった肩と、鎖骨。
色はない。モノクロ写真。
 
アルバート・ワトソンによって撮られた写真『坂本龍一』である。
1989年に撮影された。坂本龍一が37歳の時の写真だ。
 
現在、京都では「京都国際写真展」が催されている。
会場は京都市内に点在し、様々な会場で、いろんなアーティストの写真を見ることができる。
その中でも、アルバート・ワトソンの作品は、京都文化会館の別館に展示されている。
静かな建物の中で、展示された作品が会場の柔らかい光とともにあじわうことができる。
 
アルバート・ワトソンは、世界を代表する写真家の1人であり、ポートレートの巨匠として、今もアメリカを中心に活動している。
今回の『坂本龍一』は、京都国際写真展の表紙にも登場しており、本物を見る前から、僕はどこか興味を惹きつけられていた。
実物は、思っていたよりも大きく、思っていた以上に静かだった。
会場に差す外からの光が、より静けさを引き立てていた。
他にもアルバート・ワトソンの作品は並んでいるが、パンフレットにも登場していた『坂本龍一』に、ひと際興味を抱きながら、僕はただただ彼の前に立っていた。
 
日本でも珍しい国際写真展は、今年で7年目を迎える。
様々な会場で展示されている作品はもとより、展示会場となっている建物も魅力の1つだ。
ギャラリーだけではなく、観光地となっている城や寺、新聞社の工場跡など、見て回るだけでもなんだか楽しい。
途中で気ままに休憩を挟みながら、自分のペースで回る。
 
「おいしそうなハンバーグ」
 
「桜を見に行ったんだね」
 
といった具合に、日常撮ったり、見たりする写真の多くは、カラーがほとんどだ。ランチを撮ったり、旅先の風景を撮ったり。色があることで、写真に込められた情報をより丁寧に理解することができる。カメラやレンズによって、再現性に違いがあるにせよ、色があることで、撮られた世界について詳しく知ることができる。
京都国際写真展を見て回ると、カラーの写真もあるのだが、カラーではない、モノクロで撮られた写真が決して少なくないことに気が付く。色という情報がそぎ落とされたモノクロの写真。そこには独特な世界を見ることができる。
 
「構造を見るんだよ」
 
学生の頃、毎日のように石膏デッサンをしていた。僕がデッサンをしていた時に、師匠が言った言葉の1つだ。
 
構造を見る……
内心理解できないまま、懸命に石膏像をデッサンしていたことを覚えている。
 
ギリシャ神話や歴史上の人物をモチーフにして造られた石膏像。石膏という素材から、全身は白い。その真っ白な像を、鉛筆や木炭といった道具で画用紙にデッサンをしていく。
真っ白と言えど、案外色は存在している。色というか、様々な明るさや濃さの白やグレイ、黒がある。
顔の表情や、体のポーズに、光が当たることで、トーンが乗っかってくるのだ。
カラフルな色は存在しない。ただ、豊富なモノクロームに身をまとった石膏像を見ていると、形の綺麗さや、構造の力強さ、像そのものの持つ存在感がひと際目立って目に飛び込んでくる。むしろ、色がないからこそ物の存在感がより引き立つのかもしれない。
 
まるで、マイクも付けず、またアンプにも繋がれていない、ギターのよう。生の音に思わず耳を傾けるように、本来持つ響きが、見る者の体に流れ込んでくる。
 
アルバート・ワトソンが撮った『坂本龍一』も、そんなモノクロの力を感じずにはいられない一枚となっている。
指が弦を弾く音や、擦れる音が1つ1つ聞こえてくるように、写された被写体の細かい部分が、より際立って見る者を惹きつける。
 
顔の表情。
肌の質感。
肩のライン。
浮き出た鎖骨と、そこに走るハイライトの線。
首元には黒い影。
上から被写体を鑑賞していると、気持ちよく視線が下へと流れていく。
不思議とモノクロという印象があまり感じられない。それほど、豊富なモノトーンが綺麗に写し出されているのだ。
 
モノクロで撮影されたその1枚は、形の持つ魅力や、人としての構造的な力強さを再発見させてくれる。色では再現できないものを感じることができる。また、大きく引き伸ばされた写真が、より作品としてのインパクトを強くしている。だが、これ以上大きくても、これ以上小さくても、違うような気がする。何というか、ちょうど良いのだ。そのあたりのバランス感覚も含めて、アルバート・ワトソンの世界がこの1枚から伝わってくる。憎らしいほどに。
 
人そのものの魅力、坂本龍一として存在している当時のエネルギーを感じずにはいられない。
美しく、静けさすら感じる。
 
昨年末からカメラの勉強をしている僕にとって、参考になるような、ある意味参考にならないような、そんな写真をたくさん見ることができた。誰でも撮れる時代であるものの、その人にしか撮れないものがたくさん潜んでいるように思えた。深いものだ。
 
様々な作品を見ることができる京都国際写真展は5月12日まで開催されている。
ワークショップも行われており、見どころ満載な展覧会となっている。
 
 
 
 
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2019-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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