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メディアグランプリ

しのごの言わずにウォシュレット


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:金田一 恵美 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「掃除していかないって事があるのかな!?」
私は風呂場の排水口の汚さに憤りを感じていた。
興奮した私に、冷静な旦那が言う。
「忘れてたってこともあるかもしれないでしょう。僕が掃除するから落ち着いてよ」
 
3年前に家を買った時のこと。
築10年の中古マンションだ。多少のキズや汚れは許容範囲だとわかっている。
しかし。
内覧はしていたものの、風呂の排水口まで開けてチェックはしなかった。
これから住む家の排水口に他人の髪の毛がこびりついていたら、不快に思うのも仕方ないと思う。この髪の毛も私達は買ったというのか。
掃除がマメではない私が唯一、毎日手入れする場所が風呂場の排水口だ。こびりついた髪や水垢を取るのが嫌だからだ。それなのに……!
つい不満も激しくなってしまった。
事を荒立てたくない旦那がやれやれと言った風で、排水口の掃除をしてくれた。
掃除をすれば済むのだから、問題は解決だ。
 
だが問題はもう1つあった。
一番大きかったのは排水口ではなく、ウォシュレットの方だった。
きっと前の住人は水回りの掃除が好きではなかったのだろう。シャワーノズルに黒くなって張り付いている水垢汚れを目にする。
ここでも始まる。
「こんなウォシュレットでおしり洗いたくない!」
 
せっかくのマイホーム。旦那は私の態度にがっくりしてしまっただろう。ハタと我に返り、気を取り直し、良いところに目を向けて引っ越し初日を終えた。
 
後日、安全かつ衛生的な掃除方法をネットで検索して、自分で掃除を試みた。
しかししばらくするとすぐ黒ずみが発生してしまう。築10年はそんなに古い物件ではないと思うのだが。なぜ旦那は気にせず使用できるのだろう。おしりに衛生面って大事じゃない?
程なく、私は諦めた。
「私はウォシュレットをしない人」そう言い聞かせた。
 
出かけた先でのトイレなど、自分の家以外では気分的に使えず、元々そんなにウォシュレットのヘビーユーザーではない。
基本的に家でだけウォシュレットを使うということだ。
それなのに、家でも使えない。イコール「私はウォシュレットをしない人」なのだ。
 
とりあえず言っておくと、私は痔ではない。でも肛門科に行ったことはある。予備軍である可能性が高い。
職業病なのか、単純に患者数が多いのか、同業者や周りに痔持ちが多い。
その苦労話を聞くに、一度なるとやっかいだということがわかる。やはりならないように予防したい。数年前からウォシュレットを使い始めたのはそのためだったが、すっかりウォシュレットに慣れてから使えなくなるというのは倍の悔しさがある。
代わりに用意したのは赤ちゃんのおしり用のスプレーである。
万が一、必要となったときのためにトイレの棚に常備していた。
 
見兼ねた旦那が「ウォシュレットを買い替えてもいいよ」と言った。旦那はテレビを新しくしたかった。長く使っているとはいえ問題なく使えているテレビを買い替えとなると、「その前にウォシュレットじゃないのか?」と私に突っ込まれると予想していた。旦那は合理的で賢い。
 
ヤッター! と心の中で思ったものの、ウォシュレットの金額はピンきりで、どのあたりをターゲットにしていいかわからない。工事費用もかかるだろう。何より今のウォシュレットを外した時に見えるかもしれない10年以上隠れた汚れなんかを見るのが怖かった。そのままでいいとは思っていなかったが、先延ばしにして、気づくと3年経っていた。当時の怒りは何だったのか。
旦那も再び呆れていたことだろう。
一向に動き出さない私ではなく、旦那が動いた。
消費税が上がる前に買おう、と。
予算を握る旦那がウォシュレットを選んでくれるのは、正直とても助かった。楽天ポイントがたくさん貯まっており、それを使って買うのだと言う。さらには工事費込みという気になっていた点へのアンサーも含んだ業者を見つけ、私達は新しいウォシュレット購入に一気に沸いた。
悲しいことに、私達の住む札幌は北海道という離島であるがゆえに楽天の業者の工事費込みウォシュレットは買えなかったのだが、手堅くヨドバシカメラで購入することとなった。
工事費別・古いウォシュレットは自分で廃棄、もちろん貯まった楽天ポイントの割引もなし、と(旦那にとって)やや微妙な結果にはなったが、そうと決まれば話は早かった。
注文したのはゴールデンウィークの10連休の真っ只中。なんとなく連休明けの工事日程を希望して返事を待っていると「明日はいかがでしょうか?」と電話が来た。連休中にトイレを工事したい人は少なかったようで、注文翌日の昼にはもう新しいウォシュレットが設置された。
3年うだうだと悩み続け、注文から設置までたった1日。
 
あっけなく、良くなった我が家のトイレ。
このあっけなさ、何かに似ている。髪が伸びてきて、そろそろ行かなきゃと思いながら面倒がって、もう限界! と思ってやっと行く、そう、美容室だ。いざ美容室に着いてしまえば1時間ほどで気分もスタイルも爽快になり、なぜもっと早く行かなかったのかと毎回思う。美容室ならばせいぜい1ヶ月かそこらだが、3年も引っ張ってしまったので、感動もひとしお。今回、私ではなく旦那の行動が鍵だったわけだが、やはり口だけや頭で思うだけではなく、実際に行動を起こすことが肝要なのだ。
 
新しいウォシュレットには自動清掃機能がついていて、使用前後に除菌水でノズルを洗ってからシャワーを出す。除菌水は水由来でおしりにも安全だという。なんと素晴らしい機能なのだろう。
 
久しぶりのウォシュレットに私はドキドキした。
特にドキドキするのはボタンを押してから、おしりにシャワーが当たるまでの、あの少しの時間。
行動を起こしたものにだけ、与えられる喜び。
ごくごく柔らかい衝撃に、つい、声が漏れた。
 
「おっふ」
 
 
 
 
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2019-05-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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