メディアグランプリ

私が旅に出る理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:沢井奏名子(ライティング・ゼミ特講)
 
 
昔から、転勤族に憧れていた。
数年ごとに住む家が変わる。住む土地が変わる。それが仕事でできるなんて!
引っ越し費用も住宅費も会社もち。なんて羨ましい!
 
放浪の旅人にも憧れる。
定住の地を持たず、裸の大将のように、気の向くままあちらこちらを転々として暮らすのだ。
 
そんな憧れを抱いたまま現在に至った私だが、現実は、自分が就職したのも夫の勤め先も、転勤とは無縁の企業だった。
結婚後は同じ市内に住み続け、もう20年になる。その間、旅行らしい旅行にも出ず、ほぼ県内から出ない生活をしてきた。それでも根無し草のような生活への憧れは私の内側でくすぶり続けていたのだと思う。
 
テレビを見ながら「こんな風に生きたい」と強く焦がれたのは千原せいじ。どこへ行っても日本語で、どこへ行ってもせいじはせいじ。どこへでも紙袋1つで世界中へ出かけていくイメージが彼にはある。
わたしも「いつか」せいじのように、身軽に海外に出ていく生活をしたい、なんて思っていた。
 
しかし、「いつか」は「いつか」のままなのだ。
「いつか」は永遠に来ないのだ。
千原せいじを見ながら「いつか」と思っていた私は、自分が身軽に海外に出かける日は一生来ないとわかっていた。
 
ところが、そんな私に、「いつか」が「今」になる転機が訪れたのである。
 
きっかけの1つは、自分の内面と、とことん向き合う講座を受講したこと。
自分の本質とは何か?
自分の感情を揺り動かす根源は何か?
三カ月間、自分自身の内面と向き合い続けた。
幼い頃に負ったトラウマを癒しもした。
そうして見つけた私の本質は、「自由」だった。
 
そして講座が進むにつれ、私は自分が本当にしたいことがわかるようになり、したいことを我慢することができなくなった。
何かを思いついたら、行動せずにはいられない。
たとえ失敗しようと、傷つこうと、「いつか」を「いつか」のままにはしておけない私になっていた。
 
そんなときに世界中を行き来している人と出会ったことが、私の背中を押してくれた。
その人は、それまで海外旅行=高額なイメージを持ち、「お金が……」とつぶやいた私に、「え?安いチケットで行けば?」と何でもないことのようにLCCの存在を教えてくれた。
LCCとはなにか、ご存じだろうか?ローコストキャリア。つまり、安い運賃で飛行機を運行してくれる航空会社のことである。海外旅行=高額=自分とは無縁。私の中に根強くはびこっていたこの思い込みは、彼女がきょとんとして口にした、たった一言で見事に覆ったのである。
 
そして、私は海外に行くことに決めた。
決めたら、持ち前の瞬発力と行動力を最大限に発揮するのみ。
 
行先は「いつか」と切望していたタイしかない。
誰かを誘う?
いやいや、「何食べる?」「今日はどうする?」なんてするのが面倒でたまらない。
私は自由に行動したいのだ。
1分1秒も自分の自由を制限されたくない!
今回は我が身から湧いてくる衝動のままに行動することが大事なのだ。
今回は一人で行く以外の選択肢はない。
検索に検索を重ね、一番安い日程で往復のエアチケットを押さえた結果、私の初の一人旅は、12日間のタイ旅行となった。
 
さて、海外旅行に12日間というと、どれだけの荷物を想像されるだろう。
大きなスーツケースいっぱいに詰まった衣類に日用品、もしかしたら日本食もその中に含まれるだろうか?
くどいようだが、私は紙袋1つで海外に行くスタイルに憧れている女である。
せっかくの海外行きでそれを実践せずにどうするのだ。
海外に行くことは特別じゃない。私は、すっぴんで、部屋着で、クロックスをひっかけて、財布と家の鍵だけ持って深夜にふらりとコンビニに出かけるように、海外を飛び回りたいのだ。
 
本当なら、エアチケットだけ押さえて、パスポートとカードとスマホだけ持って行きたかった。泊まる場所は行き当たりばったりの飛び込みで探したかったのだが、「ホテルだけは決めていきなさい」という賢人の有難いアドバイスを頂戴し、飛行機とホテルのみ予約して、小柄な私でも背負えるバックパッカー用のリュック1つで出かけることにした。
 
実際やってみて、この旅行スタイルは私にとても合っていたと思う。
「明日は何をしよう」まるで、自宅で明日の休みの過ごし方を考えるように、ホテルの部屋で地図や電車の路線図を見つつ、地球の歩き方をめくる。実際に行動してみて、何か思いつくとすぐに予定を変更する。そんな気ままな日々を満喫した、自由な自由な12日間だった。
 
私は今回の旅行で一言もタイ語を話さなかった。複雑な会話は翻訳アプリに頼り、あとは英単語の羅列とボディランゲージと豊かな表情で乗り切ったのだが、言葉が通じない「不自由」さが、私をより「自由」にしてくれた気がしてならない。
実際、タイの田舎町でのんびり過ごした後、首都バンコクに入って久しぶりに日本語を聞いた途端、今まで感じていた自由や開放感が失われた瞬間を、鮮明に覚えている。
 
言葉を手放した先にある自由。
それを感じたくて私はまた旅に出るのかもしない。
 
 
 
 
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2019-05-21 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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