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京都の汚いエレベーターを登るとハッテン場であった。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:鈴木(ライティングゼミ・平日コース)
 
 
京都の汚いエレベーターを上るとハッテン場であった。
夜のソレは未知であった。
 
乾ききった晴天の12月。
私は非常に疲れていた。
前日、徹夜での飲み会の後、なぜか登った近江八幡の山。
気を抜いたら倒れこみそうなほどの眠気に襲われながら、
京都行きの電車に揺られていた。
 
夜行バスまで、時間はたっぷりある。
 
何が何でも、寝たい。
欲を言うなら、ふかふかのベッドで熟睡したい。
 
そう思った私は、
「京都 仮眠」で検索し、一番近いサウナに行くことにした。
 
大通りを一本抜けた、雑居ビル。
年季の入ったエレベーター、5階のボタンを押す。
 
入ると、むわっとタバコの匂いがして、少し怖さを感じた。
受付におじいさんが一人いる。
1500円を払うと、無言でタオルとぶかぶかパンツを渡される。
 
大浴場で、疲れた体を適当に洗い、
すぐに仮眠室に向かった。
 
その時は、ここで何が起きるかなんて予想もしていなかった。
 
仮眠室は薄暗く、二段ベッドが無機質に並べられた大部屋だった。
 
半分ほど人で埋まっていたベッド。
心置きなく寝るために、人気の少ない奥のスポットで寝ることにした。
 
ベッドの横を抜ける時に、寝ている人を見る。
ほぼほぼおじさんで、眠っている人もいれば、光の漏れに注意しながら、携帯をいじっている人もいる。
 
初めて仮眠室のあるサウナに来てみたが、思えば都市の中で、ゆっくり仮眠の取れる施設というのはあまりにも少ない気がする。
 
公園や電車で寝ている人というのは見かけるが、横たわって寝ることのできるスペースというのは、漫画喫茶くらいだろうか。
 
もっと、こんな場所があればいいのに。
そんなことを思って、周りに人のいない優良なベッドを発見し、
薄い掛け布団をかけて、すぐに眠りに落ちた。
 
眠りについてすぐ、水を吸うような怪しげな音が聞こえて目が覚めた。
 
何の音だろうと思い、上半身だけ起こし、薄暗い部屋の前方を見てみた。
 
見た瞬間、私は固まった。
 
寝ているおじさんの下半身に、おじいさんが顔を近づけていた。
 
夢だと思い、一度掛け布団の中にうずくまった。
もう一度、勇気を出して顔を上げた。
 
状況は変わっていなかった。
むしろ、よりヒートアップしていた。
 
その時、私は悟った。
なるほど、ここはハッテン場だと。
 
性的な指向の違いに偏見があるわけではない。
自分自身は異性愛者であるが、いわゆるゲイだったりレズビアンであることを告白してくれた友人も多くいる。
 
世間的に見て、多様性に寛容な方だと思っている自分も、
いざ目の前にするとびっくりしてしまった。
 
と、同時に興味が湧いた。
 
何という状況だ。
普段なかなかない機会に、知らないもの見たさが生まれていた。
 
いや、そもそもだ。
性別がどうとか関わりなく、他人のそういう行為を動画で見るならまだしも、
目の前で見ることがあるだろうか。いやない。
 
私は決めた。
迷い込んでしまったからには、しっかりと見届けようと。
ここで帰ったら、男がすたる。
 
寝ているおじさんは、必死で声が漏れるのを我慢しているらしい。
ただ、痩せたおじさんはどんどんエスカレートしていく。
 
おじさんたちのフィニッシュは、圧巻だった。
もう、寝ているおじさんは声なんて我慢していなかった。
 
悲痛にも似た叫びをあげ、寝ているおじさんは倒れ果てた。
 
生で見るソレは、一つのショーのようだった。
 
おじいさんは、一連のコトを終えた後、ぐるりと仮眠室を巡回し始めた。
まるで、次の獲物を狙う野生動物のようだった。
 
一瞬、目が合った。
 
しまった! と、思った。
けど、なぜか目を離したら負けると思ってそらさなかった。
 
おじいさんは僕に近づいて、隣のベッドに腰をかけた。
そして、ずっと僕の方を見つめてくる。
 
その時に、逃げ出せばよかったのだろう。
正直、とても怖いと思ったし、自分でも何をしているんだと正気じゃなかった。
 
でも、なぜか好奇心の方がまさっていた。
自分はどこまで冒険できるのか、限界を調べたかった。
 
おじいさんは、ポンと肩に触れ、僕の様子を伺った。
 
武者震いがした。身の毛がよだつ感じがした。
でも、僕はおじいさんをギリギリまで受け入れることにした。
 
その、おじいさんはプロだった。
長年、この世界で多くの男を虜にしてきたのだろう。
テクニシャンだった。
 
僕は、恐怖心9割。
体は膠着していたが、それを解きほぐすように優しく触れてきた。
 
同性の、しかも70歳を超えたであろう人に、このような行為を求められる。
自分のアイデンティティが揺らいでいく、この世に絶対なんてない。
そんなことを感じていた。
 
おじいさんの手つきはだんだんと激しくなる。
そして、ついに私のぶかぶかパンツをずり下ろした。
 
「!!!!!」
 
そこが、私の限界だった。
反射的に、手を振り払ってしまった。
 
そしたら、おじいさん。
「嫌だったかい、ごめんな」って言って、すっと帰っていった。
仮眠室は、静寂に包まれてた。
 
申し訳なく、思ってきた。
期待させてしまった僕が悪かったと。
 
薄暗く曇った室内には、人間の性が蔓延していた。
その圧倒的な無知だった世界に、しばらくは呆然としていた。
 
外に出ると、強い風が頬を打ち付けてきた。
 
寒空を駆ける人々、世間は急ぎ足で終わりに向かおうとしている。
年が暮れ、新しい日々が訪れ、またそれを繰り返す。
 
この街に、多くの人が生きている。
男も女も、大人も子供も。
 
駅に着くと、大きなクリスマスツリーが飾ってあった。
その日は、やけに輝いて見えた。
 
 
 
 
***
 
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2019-05-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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