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ラオスは「何もない」国なのか


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:安居潤(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
「オリンピックって何?」
ルアンパバーンの青年は、まっすぐな目で日本から来た僕を見つめ、流暢な英語で質問をした。僕からしたらあまりにも自明な質問にたじろいだ。
 
ルアンパバーンはラオス北部にある世界遺産の街だ。 街全体が世界遺産ゆえ、観光地だ。 そのため、ラオスの他の街では見ることのできない、洋風なカフェや、整備された道路がある。
 
なぜ、そこに来たかというと、僕は次の会社に入社するまで時間があったからだ。他にも候補はあったが、「お金がかからず、会社員の週末と有休だけでは行きづらく、発展途上かつ、自然の多い静かな国」という要望の多い検索条件で絞った時、ラオスはぴったりの国だった。
 
「日本から来たのか?」
ルアンパバーンの青年は、僕の顔を見てそう言った。
「そうだ」
と答えて、お互い自己紹介した。彼の名前は何度聞いても発音できなかった。 だから、ドランクドラゴンの塚地に似ていた彼を、僕は塚地と呼ぶことにする。
 
塚地とは、ルアンパバーンにある英会話教室で会った。
その教室は、ルアンパバーンの中心の大通りから、一本外れた静かな通りにあり、講師はいない。 その代わりそこは、英語を話したいラオスの学生と、彼らの話し相手をしたい観光客をつなげてくれる教室だった。 どちらからもお金を取らず、朝と夜に毎日2時間開放されていた。
 
そこを運営していそうな恰幅の良いラテン系のおじさんに、「下手な英語でも参加して問題ないか?」と聞くと、「大丈夫!」と言われたため、僕はそれに参加した。そこに塚地はいた。
 
その教室は、「メジャーな観光には擦れてしまい、現地の人と純粋に交流をしたい」と思う観光客が集まっていそうだった。欧米からの観光客が20人ほどおり、観光客1人に対しラオスの学生が1-2人ほど付く盛況ぶりだった。そこで塚地とパートナーになった。
 
塚地はラオスのいろんなことを教えてくれたし、日本のいろんなことを聞いた。
「ラオス料理は何を食べたのか」
「ラオスの他の街は行ったのか」
「日本のどこ出身か」
「仕事は何をしているのか」
など、塚地の好奇心に僕は圧倒された。
 
そして、僕が「家族は何をしているのか」と聞くと、「僕の周りにいる人たちはみんな農家をやっている」と塚地は言った。 そう言われ後々調べてみると、ラオスは就業者のうち61%が農林水産業に従事しているという。
 
塚地はルアンパバーンの外れの農村に住んでいるらしい。
そのため、この英語教室に来るために、毎日原付で30分かけてやってきている。
「発展途上国の子供達が勉強している姿を見て、自分たちの普段の勉強への姿勢を変えようと思った」、と話す国際協力活動に取り組む眩しすぎる大学生のインタビューの世界が、存在することを僕は知った。
 
好奇心旺盛な塚地、実は中国に留学をしていたらしい。そのため、僕の顔が日本人であることが判別できたとのことだ。塚地は中国語と、英語と、ラオス語の3ヶ国語を操ることができる。 「日本で英語の塾講師をやっていた力を見せてやろう」と肩を回しながら教室に来た僕の自信は、早々に打ち砕かれた。
 
塚地との話は盛り上がり、「日本に行ってみたい。行くならいつが良いか」と塚地が聞いた。 僕は「せっかくなら2020年に東京オリンピックがあるから、その時がいい」と答えた。そうすると塚地は、「オリンピックって何?」と聞いてきた。
 
そう聞かれたとき、「え!オリンピック知らないの?」と頭の中で思い、それを口にしそうになった。頭の中で英作文はできていた。それでも、その文章に含む上から目線感が、言葉を口にすることをとどめさせた。
 
途上国と先進国の情報の格差から、情報の少ない彼らのことが「かわいそう」と思ったわけではない。塚地の僕に情報の格差はそれほどないと思う。少なくとも塚地は、途上国への典型的なイメージをぶち壊すには十分なくらい慣れた手つきでスマホを触っていた。
 
僕が口にできなかった理由は、それを聞いてしまうと、自分と他人が見えている世界に、優劣をつけてしまう気がしたからかもしれない。オリンピックは知っていることが当然で、知らないのはおかしい。
 
本当にそうなのか。
 
僕は塚地の知らないことを知っているし、塚地は僕の知らないことを知っていた。
彼と話したことでラオスのいろんなことを知れた。それなのに、オリンピックという一部を切り取って、まるで自分の方が知っているように話すことは、はばかられた。当たり前なんてないわけだし、知っている、知っていないで優劣は決まらない。
 
ラオスを検索すると、その田園風景を形容して「何にもない国」と書いてあるサイトが数多くある。でも、ラオスは何もない国ではなかった、当たり前だけれど。そこには人が生活しており、僕の知らない世界があった。日本から見たら、ラオスは何もない国に見えるのかも知れない。でも、日本から見る世界が全てではない、ということをラオスで知ったような気がする。
 
 
 
 
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2019-05-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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