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メディアグランプリ

30年かけて逢えたアイドル


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記事:slowman(ライティング・ゼミ書塾)
 
 
日本にいたのか……
卒業旅行から帰ってきた私は
彼女が日本にいたと聞いて
とても残念な気持ちになった。
 
一緒に卒業旅行に行く友人には
内緒にしていたが
本当はあの娘に会いたかったのだ。
 
とはいえ、散々楽しんだ卒業旅行だったし
一つくらい叶わなかったことがあっても
そんなに気にはしなかった。
いや、気にしないようにした。
 
卒業旅行に向かったのは、欧州。
ロンドンを始めとして3週間で7カ国くらい訪ねた記憶がある。
今までの自分の人生を振り返っても
そこまで海外にいたことも
それだけの国を訪ねたこともない。
後にも先にもその当時だけである。
 
なぜ、欧州巡りを思ったのか?
それは、漫画の影響だった。
「マスターキートン」という漫画。
この漫画では、欧州の歴史を絡めた
ストーリーが多く載っており
この当時とても気に入っていた漫画だった。
 
単純な私は、この漫画に描かれている
欧州がどんなところなのか
とても気になっていたので
卒業旅行の目的地として行くことに決めたのだ。
 
そしてちょうどその時。
欧州について調べていたら
とある美少女の写真が目に入った。
 
「この娘に会いたい……」
 
私の胸はときめいた。
欧州へ行けばこの娘に会えるかも
いや、会える所に向かおう。
今風に言えばまるで会えるアイドルのように思っていた。
 
この旅行、友人と二人で行く予定だったので
お互いに行きたいところを出し合って
調整して行く予定だった。
 
しかし、今のようにインターネットがない時代
この娘に会える場所がどこなのか
私には全く見つけることができなかった。
訪ねる予定地としてどこを組み入れるべきか
全く見当がつかなかった。
調べる手段もなく
手がかりとなるものもない。
あの娘に会うにはどうしたら良いのだろう……
 
こんなことをつらつらと考えているうちに
旅行の日がやって来た。
 
旅行中は、世界的に有名な地域を
訪ね歩き、ご当地食を口にした。
眼を見張るような至高の芸術作品も
数多く観て回った。
当時観た欧州の遺跡や芸術作品は
今だに記憶に残っているくらいだ。
人生初と言っても良いくらい
日々新しいことに出会う新鮮な毎日を過ごしたので
3週間という期間はアッと言う間に終わり
帰国の途に着いた。
そしてこの時に思い出した。
あっ! あの娘に会えなかった!
どこにいるのか知らない彼女に
逢うことなんて叶わないがそれでも心残りとなった。
 
そして日本に着いた時、ニュースだか雑誌だかに
私たちが欧州巡りしている時に
彼女が日本にいたことを知った。
あれだけ会いたかった彼女は日本にいたのだ。
どのみち会えなかった。
縁がなかったのだ。
 
実際会うことは叶わなかったのは残念だが
有名な彼女のこと、そのうち写真などで
お目にかかることはあるだろうと思ってはみたものの
何かのきっかけでテレビや雑誌、ネットなどで
稀に彼女を見ると、あの時、旅行に行かずに日本にいたら
彼女に会えたのかもしれないと思い出したりした。
 
そしてあれから30年近く経った。
 
長い年月を経て、目の前には
今も当時と変わらない
美しいあの娘が目の前にいる。
 
私は老け込んでしまったが
彼女は当時のまま美しい。
 
私は30分間、彼女の前に立ち
今後、今世で再び観ることが叶うかわからない彼女をずっと見続けた。
 
側から見たらヤバいおっさんだったかもしれない。
今でいうなら私はストーカーになるのだろうか。
もしそうなら捕まったっていい。
漸く私の密かな願いが叶ったのだ。
あの美少女に出会うことができたのだ……
 
彼女の名前は「イレーヌ・カーン・ダンヴェール」
 
そう。画家のルノワールが描いた
「可愛いイレーヌ嬢」のことである。
 
中高の美術の教科書にも載っていた
可憐な横顔
長くなびいた茶色の髪
美しい青い瞳
が、とても印象的な美少女。
 
メデイアや教科書で取り上げられているルノワールの名作。
 
しかし、メデイアや教科書などの
間接的な写真などで見ても決して感じることのできない
高貴さや繊細さ美しさを、実物を目の当たりにして実感した。
実物には実物にしか放てない
オーラがあることを知ったひと時だった。
いつか目の前で観たいと思った願いが叶った瞬間。

この絵画を含む印象派コレクション展が
昨年日本の各地で開かれたのを機に
「イレーヌ嬢」のことを思い出して観に行ったのだ。

そう言えばこの開催された印象派展での
イレーヌ嬢の絵画には
「絵画史上、最強の美少女」
とコピーがつけられており
美少女には「センター」と
ルビが振られていた。
……センターか……少し笑えた。
まさに会えるアイドルだ。
 
この印象派展へ足を運んだことは
昨年の中で一番素晴らしい思い出となった。
思い募ったアイドルに30年経って逢えるとは夢にも思わなかったので。
 
そしてこの絵画を観ることができたことで
「そうか、願いは叶うんだ」と思った。
 
まだまだ叶えたい夢はある。
今回のように時間はかかるかもしれないが
きっと叶うと思いながら
夢を持っておくのは良いことだと
絵画の中のイレーヌ嬢は30年かけて
私に教えてくれたのかも知れない。
 
 
 
 
***
 
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2019-06-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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