メディアグランプリ

できない「カベ」は自分で消せる


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事: 三上弘恵(ライティング・ゼミ火曜コース)
 
 
「今度の勉強会で、ミニ講座やってみない?
インストラクターになるんだったら、練習がてら良いんじゃないの? 挑戦してみなよ」
 
「ぜひ、させてください」と、私は即答できなかった。
 
「う~ん、ちょっと考えさせてください」と言うのが精いっぱいだった。
 
初めてすることには、「できないカベ」がある。
 
子どものころは、そんな「カベ」はなかった。
 
最近は携帯ですぐに撮影できる。だから自分の子どもの初めての○○を撮る親は多い。
facebookで、赤ちゃんが力を振り絞り、寝返りしている動画を見た。撮影しながら親はずっと興奮気味で応援している。何ともほほえましい光景だ。たかが寝返りに、こんなに感動するのかと思う。
 
私の記憶はないけれど、きっと赤ちゃんの時はあきらめずに寝返りをしていたはず。お母さんのところに行こうとハイハイもしていただろう。そして、つかまり立ちもできた。少し大きくなってきたら、こけてもこけても自転車に乗れるまで練習した。あきらめるという概念もなかったのではないかと思う。
 
それが、子どもから大人になる間に、何度となく挫折を繰り返し、あきらめることを覚えた。
誰かと比べて自分が一番でないことも知った。
 
そして、大人になってくると、挑戦すること、新しく始めることに、躊躇する自分になっていった。
もちろん、そうではない人もいるだろう。
 
しかし私は挑戦することが怖い。というより、
「失敗が怖い。失敗したらどうしよう。失敗は恥ずかしい。ダメな奴だと思われたくない」
色んなネガティブな感情が湧き出て挑戦できなくなる。
 
受験に失敗した。結婚式の司会で余興がこなせず失敗した。結婚までいかず失敗した。とにかく失敗の多い人生だった。
 
社会人になって、ある自己啓発の勉強会に参加してた時、私が感情解放セラピーという講座に参加して、インストラクターを目指していると言うと、主催の方からミニ講座という挑戦のチャンスをいただいた。
 
始めはまだ早いと思って辞退しようと思っていた。
でも「ここは、勉強会で学んでいる仲間に対してするのだから、失敗しても許してもらえる。ここでできないものは出来ない。だから全く知らない人の前で話せるようになるためには、これはチャンスか?
この機会は登竜門かもしれない」そう思い直した。
 
数日後、「やっぱりやらせてください」
 
と言ってしまった。
 
しかし、その日から、ドキドキと憂鬱が続くのだ。
 
ミニ講座だから40分程度と言われたけれど、何を話したらいいのか? そこからスタートした。
まずは原稿を作ろうと、話す内容を原稿に書いた。そして書いては直し、声に出しては直しとしていく
うちに、
「これ本当に面白いんだろうか? 興味なんてないかも? 聞いている人は退屈するかも?」
と気持ちが沈んでくる。
 
そして、気持ちに連動して、原稿に頼ろうとすると、つい下を向いてしまう。声がこもってくる。
原稿にばかり目をやると自信がないように見えるだろう。やっぱり「する」なんて言わなければよかったと、後悔が止まらない。
 
わたしにはできない。ムリかも~。と大きな「カベ」が立ちふさがった。
 
「カベ」を自分で作り出していた。
 
これが自分ではなく、人のことなら、簡単に言える。
「やってみないと分からないし、失敗も経験のうち。練習すれば大丈夫。経験を重ねていけばいいよ。誰にでも初めてはあるから……」
 
しかし、自分のことは、心からそう思えない。
 
主催者の方からも同じような内容のことを言われたけれど、
「あなたはできるかも知れないけれど、私にはムリ」
そう思ってしまったのだ。
 
でもちょっと待てよ。私は感情解放セラピーを教えるインストラクターを目指している。
今の自分の不安な気持ち、自信のなさ、人からどう見えるか気になること。
これらの感情を自分で解放するチャンスではないか!
これは、私に課せられた課題かもしれない。
 
そして、不安な気持ちを声に出して言いまくった。
トントンと顔や体のツボをタッピングしながら、自分が教えるセラピーを自分でした。
 
そうすると不安な気持ちや失敗を恐れる気持ちが減っていった。
 
そうして、気づいたのだ。
「自分で不安を大きくしていた。誰にでも初めてはある。初めてが不安で怖いのは当たり前のこと
だから不安があってもいいよ」
 
そう不安を受け入れられたら、自分で腑に落ちてきた。
 
そうして、初めてのミニ講座に臨んだ。
 
10人程度の人たちだけど、40分自分が話しっぱなしというのは、やはり緊張する。
始まる前に自分でトントンしながら気持ちを落ち着かせた。
 
途中、頭が真っ白に飛んだ。そんな時は原稿に助けられた。
何度も言葉に詰まり、間が空いても話を続けた。何とか40分話して、講座を終えることができた。
 
やってみて、ほっとしたと同時に、
「あ~もう少し、みんなの反応を見て、話を変えればよかった。分かっているかどうか聞けばよかった」などなど、反省点が出てくる。
 
けれども、主催者の方から、
「良かったよ~、こんな風にタッピングしながらネガティブな言葉を言って、気持ちが軽くなるんだね、知らなかったよ~、面白かった」
という言葉をいただいた。
 
自分が感じているほど相手にはミスとは思われないのかもしれない。私を元気づける言葉だったのかもしれないけれど、新しいことを知るという内容は喜んでもらえたようだった。
 
初めてのことに限らず、不安になると不安がどんどん大きくなる。心配はどんどん大きくなる。
マイナスの感情は増幅しやすい。それがあまりにも不安にばかりに捉われて、自分では越えられそうもない「カベ」を作ってしまう。
 
その「カベ」を、親や上司、友達が、「こんなに大変だよ」と、作っているのではない。
自分が勝手に大変なこと、超えられないことと思い込んでいるだけなのだ。
 
だから、他の人がいくら大丈夫だと言っても、その不安は消えない。
 
「カベ」を大きくしているのは自分なのだから、その「カベ」を小さくすることができるのも自分なのだ。
私は、自分で大きくした「カベ」を、少し小さめにしてきた。
 
そのドキドキ初体験のミニ講座から、13年経った。
今ではコーチングやセラピー等、4種類7つの講座のセミナー講師もやっている。
 
徐々にドキドキの頻度は少なくなってきた。しかし、初めての場所、初めての人、初めての内容は
今でも緊張する。
 
それが、第一声を発すると徐々に落ち着いてくる。
 
この第一声を発する前の緊張感は、新しい扉の入り口だと思えるようになってきた。
緊張感を超えた先に、参加者の「ありがとう」の言葉や自分の充実感が得られるようになっていた
のだ。
 
ようやく最近になって、この緊張感を楽しめるようになった。
 
私が「カベ」と思っていたものは、今は心地よい緊張感として私を後押ししてくれる。
もう「カベ」ではなくっていた。
 
 
 
 
***
 
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2019-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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