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メディアグランプリ

愛されるお客さんになろう


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田 陽子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「もうっ! まだ開店前なのに勝手に入ってくんなよな、ったく……」
また店長のぼやきが始まった。
あ~あ。開店前から機嫌悪くなっちゃったよ。今日は荒れそうだなぁ……。バイトの私は、お店に到着後5分で遠い目になった。
 
店長の中には『営業中』の看板を出すまでは絶対にお客さんを中に入れない、という確固たるルールがあった。雨が降ろうと雪が降ろうとおかまいなしだ。
そのルールを破ると、わかりやすく不機嫌になる。ひどい時は閉店まで機嫌が悪い時だってある。バイトの身としては最悪だ。
 
「開店前なので、外でお待ち下さい」
明らかに不機嫌な店長の声がお客さんを外に追い出した。
 
「むしろ、5分前に来るって社会人としては普通じゃん。ていうか遅れてくるより偉いじゃん。サービス業なのに、何でそんなちょっとした事さえ融通が利かないんだろう」と、その態度はいつも腑に落ちなかった。
 
店長の拘りはそれだけではない。
予約の人数より、当日急に人が増えることも許されない。食事の後に、お酒も頼まずだらだらとだべっているお客さんは追い出されるし、酔っ払っているお客さんはそもそも入れない事もある。少しでもセクハラ的な発言をバイトに発してこようものなら、店の外に呼び出して追い返してしまう。一度は、本当に殴るんじゃないかと思って店内がざわざわした事もあった。
 
一人でやっている個人店なので、やりたい放題だな、と思っていた。
 
こう書くと、下町の頑固な偏屈おやじのお店を想像したかもしれないが、実はこの店長、まだ30代前半と若く、しかもかなりの男前である。藤木直人に似ているなぁと思っていたら、やはりよく言われたようで、言われすぎて嫌になり、あごひげを生やして髪も伸ばしてワイルド系にしていると言っていた。
 
お店は日本酒とナチュールワインと発酵食品に拘った居酒屋で、5年目に突入したところだ。
カウンター10席にテーブル2席というこじんまりとした広さなのだが、食べログの評価も高く、毎日予約で埋まっている人気店なのである。
 
確かにお料理はものすごく美味しい。新しい事に挑戦するのが好きな人なので、メニューも斬新で面白いし、味付けは天性のセンスがあるのだと思う。何を食べても美味しくてわくわくさせてくれるお料理のラインナップだ。このクオリティからすれば、お値段も全然高くない設定だと思う。東京農業大学の醸造科を出ているという筋金入りでもあるので、お酒や食品への知識も半端ない。
 
行きたい理由は詰まっているのに、自分があの対応をされたら、二度と行かないな~と思っていた。
 
私は、飲食店というのはサービス業だと思っていたし、お客さんはお金を払うのだから、よくしてもらって当たり前。と思っていた。コンビニでも、店員さんの態度がよくないとイラっとしてしまうので、こんな態度を取られたら怒って帰ってしまうかもしれない。
 
しかし、バイトをするうちに、店長の関心事はただ一つしかない事に気付いた。
お店に来てくれるお客さんに、美味しいものを食べて飲んでもらいたい、という事に尽きていた。
 
開店前に入って来ると怒るのは、ぎりぎりまで準備をしてお迎えをしたいという思いがあるからだ。当日急に人数が増えると、狭い店内なので隣のお客さんに迷惑をかけるし、しっかり計算して用意したお通しが足りなくなってしまう。かと言ってお粗末なものは出したくない。何人ものお客さんを断って予約のお客さんを迎えているのだから、ほとんど食べず飲まずでだべっているお客さんには、来たかったお客さんに席を譲ってやって欲しいという思いで追い出しているのだ。
 
傲慢すぎると思っていた店長だったのに、どこをとってもお客さんの事しか考えていなかったとは。私の考え方とどちらが傲慢なのか、とハッとさせられてしまった。
 
それにしても、お通し一つ作るのに、こんなに手間暇をかけてくれているものだとは知らなかった。素材もとことん拘っているし、時間と労力も惜しまない。そりゃあ、当日の予約キャンセルなんて、言語道断だ。
何組も断って予約のお客さんをお迎えするために準備している、という感覚も、この店で働くまではわからなかった。
自分がお客さんの時は、人気店に予約が取れてラッキー♪程度にしか思っていなかったし、その視点自体がなかったのだ。
 
一見、頑固で融通が利かないように思われるお店のルールにもそれなりの理由があるのだ。郷に入っては郷に従え。もちろんへりくだる必要はないが、お店のルールはしっかりと守って、愛してもらえるお客さんになろう。そうすれば、店長は全力でおもてなししてくれるに違いない。
 
 
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
 

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2019-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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