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メディアグランプリ

大きな包容力


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:藤崎 美香(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
それは、NY、もう三十年近くも前の事である。
 
「キャンセルが出たので、あさって入学手続きに来てください」
大学から電話を受けた時、嬉しさのあまり飛び上がった。というのも、一週間前に
「あんたの顔、もう見たくないわ! 二度とここに来ないで!」
と、大学の事務の女性から言われ、あきらめていたからである。
 
そのNYのデザイン専門の大学は、TOEFL(留学生が授業を理解できるか確認するための英語のテスト)が550点必要だった。
私は何度テストを受けても520点までしか取れなかった。実際、英会話できなかった。
それなら熱意でカバーと、毎日、事務とデザインの担当教授を訪れ、なんとか入学させてくれと頼みに訪れていた。
本当に迷惑だっただろう。そして、奇跡的にキャンセルが出て、補欠入学の許可がおりた。
 
ところが、大学に入るなり、心臓が飛び出しそうな毎日が始まった。
手続きはもちろん、授業、さらにはクラスメートとのおしゃべりも、ほぼ理解できなかったからである。
アジア系のクラスメートは2割近くいた。中国語、韓国語は聞こえてきたが、日本語を話す人はいなかった。
語学学校は日本人ばかりだったのに、大学の私のクラスには日本人がいなかった。
話しかけられても、英語がよくわからなかったので、私は、端っこの方で目立たないようにしていた。
全神経を集中させても、何を話しているのか四割くらいしかわからない。
毎日、家に帰る途中、こんな状態で続けるなんて無理! やめるのは時間の問題だ! と思いながら、
なんとか一日一日を乗り越えていた。
 
NYという街、そして、授業で見るキラキラとした世界にとりつかれていたからだ。
スライドや写真で見せられるデザインの世界は、日本のものとは、また違う華やかさで楽しかった。
 
そんな数週間がたったある日、授業の後半、席順に、クラスメートたちが次々と作品をプレゼンしていった。
私は凍りついた。宿題があった事を知らなかったから、何もやってなかったのだ。
思わず部屋から飛び出して、トイレに駆け込みそうになった。自分の順番が回ってきたときに、とうとうできてないと告げた。
教授は怒鳴り始めた。私は、何を言っているのか理解できなかったが、宿題をしていない事に怒っている事だけは間違いなかった。
「すみません、英語がよくわからなくて、宿題がある事がわかりませんでした」
「なんで、英語がわからない者が、ここにいるんだ」
教授は、しばらくありえない状況に混乱していた。しかし、その後、想定外の展開になった。
 
「みんな、信じられないが、この子は英語がよくわかっていないようだ。サポートしてやってくれ!
君、今日の宿題は、後で私のところに確認に来なさい!」
まわりの学生たちは、私が理解できるように、すぐ話しかけてくれた。そして、理解できているか、何度も繰り返し教えてくれた。
どの授業もほぼ同じメンバーで学ぶため、それからの全ての授業の後に、
「理解できてる?」
と、すぐそばのクラスメートが声をかけてくれるようになった。
その教授は、確か広告戦略を教えていたかと思うが、授業内容が面白く、人柄も素晴しい方で、
毎回、根気よく適切なアドバイスをくれるようになった。
 
それまでは、英語のせいで、人に近づけなかった。
けれど、これがきっかけで、逆に皆が話しかけてくれるようになった。
片言の私の英語も、忍耐強く理解しようとしてくれた。
おかげで、みんなとコミュニケーションをする事が楽しくなっていった。
 
そんなある日、CI(ロゴなどデザインなどを使って、社内外に会社のコンセプトや理念を明確にし、一貫したイメージを伝える事)の練習ために作った、
仮想会社のロゴマークを持って歩いている私に、知らない教授が声をかけてくれた。
「そのデザインいいね! どこのクラス?」
高校や短大を卒業したばかりの他の学生と違い、私は既に日本の大学でデザインの勉強をしていた。だから、知識的に少し有利だった。
そんな先生の言葉がきっかけで、クラスメートたちは、私のところに、色々聞きに来てくれるようになった。
「ねえねえ、このデザインどう? なんか納得いかないんだけど、どうしたらいいと思う?」
「どっちのデザインの方がいいかな?」
「こう変えると、もっとわかりやすく、面白くなるんじゃないの?」
そして、数人が集まると、いろいろなアイデアを互いに出し合って盛り上がるようになっていった。それは、授業中も休み時間も続いた。
 
おそらく、その教授も、私が溶け込めるようにきっかけをつくってくれたのかもしれない。
十年後にNYを訪問した際も、当時、私と仲の良かったクラスメートたちに声をかけて集めてくれ、大学で、私を卒業生として紹介してくれた。
 
そこには、困っている人を助けようという気持ち、相手が誰であれどんどん学べる人から学ぼうという気持ち、そして、頑張る人を讃える気持ちに溢れていた。
そんな大きな包容力が、みんなで楽しくワイワイと、成長していける秘訣だと学ばせてもらった。
 
 
 
 
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2019-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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