メディアグランプリ

1台のPCで作った抗うつ剤


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記事:小菅 千晶(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
2015年8月~2016年7月。
これは私がメンタルクリニックで投薬治療を受けていた期間だ。
「あなたはうつ病です」と言われてから立ち直るまでのことを、お話ししたい。
 
2014年の夏に転勤辞令が出た。
転勤先は、地方都市。半年前に立ち上げたばかりで、3名だけの小さな営業所だった。
 
不運なことに、上司と反りが合わず、
1年後に私はメンタル疾患になってしまった。
 
営業マンの仕事は、仕事を取ってきて、商談を行い、受注に繋げることだ。
しかし私が外回りで取ってきた仕事は、なぜか上司が商談に向かう。
いわゆる、横取りだ。
必死で仕事を探しても、自分が商談に関わる機会が一向に得られない。
地方ということもあり、上司の上司に相談しても、なかなか窮状が伝わらない。
 
これはまいった。
 
何が一番堪えたかというと、“キャリアが磨けない”ということだ。
営業スキルを勉強したとしても、実践する機会がなければ、なかなか成長につながらない。
新卒の時に就職難を経験した身でもあるので、スキルアップというものには人一倍敏感な世代だとも思う。
 
いつのまにか、不眠や動悸、ミスの連発などに悩まされるようになった。
試しにメンタルクリニックに行ってみると、うつ病ということが判った。
 
そのころから、様々なことをトライ&エラーするようになった。
15万円掛かる営業セミナーに申し込んでみたり、
転職エージェントに登録してみたり、
マインドフルネス講座に通ってみたり、
スポーツクラブに入ってみたり。
スキルアップと心身の健康に良さそうなものを次々試していった。
これらはこれらで、ある程度の効果を感じたのだが、なかなか決定打にはならなかった。
 
そんななか、一つの転機がやってきた。
 
スキルアップの方法を調べることが日課になっていた私は
図書館で1冊の本と出会った。
 
「読書ブログをつけよう
読んだ本を人に紹介することは
営業マンが商品をお客様に紹介するスキルに繋がるんだ」
 
こんなことが書かれていた。
 
幸い、私は幼少期の通知表に“よく本を読んでいる”と書かれたこともあり、
読書は日課になっている。
文章を書くこともどちらかというと好きだ。
 
その日の夜、無料ブログサービスに登録し、1か月で10記事ずつ書くという目標を立てた。案外、10冊というハードルは高かったけれど、児童書も取り入れるなどでなんとかクリアすることができた。
手帳に達成マークをつけていき、毎月、自分の到達度を見て満足する。。
 
目標数値を達成した自分が、少し誇らしかった。
 
中身が充実していく過程も楽しかった。
始めたころは「○○というフレーズが良かった、以上」という程度しか書けなかった。
3か月を超えた頃になると、「○○というフレーズが良かった、なんでこう思うかというと××という経験があるからだ、それは△△も同じだと思う」という書き方を覚えるようになった。
 
自分の思いを言語化できるようになってきている手ごたえを感じた。
 
職場の雰囲気は相変わらずだったけれど、
ブログを通して達成感や自己肯定感を次第に取り戻せるようになった。
抗うつ剤の処方量も少しずつ減らせるようになった。
 
1台のPCが私に与えてくれた自己肯定感は、
抗うつ剤以上の力があったと感じている。
 
その後の話をしよう。
 
仕事では、転勤3年目を機に、本社に戻ることができた。心身が安定してきたころには、運よく社長賞とMVP賞を立て続けに獲得することができ、今は何事もなかったかのように通常業務に復帰している。
余談だが、現在の上司からすると私の報告書は臨場感があるのだそうだ。そういえば手厚く助けて貰っている。
 
ブログ活動は、現在かれこれ4年目になる。
読んだ本の感想をUPするだけでなく、誰かの役に立つ情報を発信したいという欲が出てきた。半年前から、日常で感じる勉強のコツや体調管理方法などのコンテンツに挑戦中だ。わくわくしている。
 
文章を書くことにも慣れてきた。
先日、昇格試験でレポート提出があったのだが、早めに仕上げて訂正しながら、無事に通ることができた。ほかにも、雑誌の読者アンケートに丁寧に回答したところ、嬉しいことに取材依頼をいただいたこともあった。
 
この1件で私は思う。
 
仕事への意欲が高い人ほど、仕事に躓いたときの精神的なダメージが大きい。
“逃げ場”も用意しなければならない。
物書きが好きな人は、是非、文章を“逃げ場”にしてみて欲しい。
きっと精神安定剤になってくれる。
 
それどころか、もっと多くのギフトを与えてくれる。
 
 
 
 
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2019-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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