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アートはラーメン屋ランキングだ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:田中たぬき(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
いつもはテレビを見ない私が楽しみにしている数少ない番組がある。
火曜日夜8時55分からの「マツコの知らない世界」。
言わずと知れた人気番組だ。
毎回ニッチな世界を独自に追求する素人さんが出演し、自分の偏愛する世界をマツコにあつくプレゼンする。
マツコは視聴者側の目線で時に博識な知見を織り交ぜながら「知らない世界」をおもしろく探っていく。
 
先週のテーマは「マツコの知らない現代アートの世界」。
美大教授の男性が現代アートはいまどうなっているのかマツコにあつく語っていた。
これはと思う無名の若手アーティストの作品を購入し、人気がでるまで所有し続けると作品価値もあがり資産も増える、という投資としての側面に現代アートのうまみがあるということらしい。
草間彌生がまだ若手の頃にその可能性を見いだし、当時数十万円で購入した初期の作品たちはいま数億円の価値になっているという。
 
金のニオイのぬぐいきれない男性の話に「うさんくさいわ~私ちょっとまだ信用できません」とつっこみながらもマツコはこんなことを言った。
「けっきょく私たちって、アーティストがいかに非凡であるかを見たいんですよ。 私たちの常識をはるかに超えたものを見せてくれる。 それにお金を払うんですよね。 それをとてもわかりやすい形でやり続けることができる方なんじゃないですか、草間さんは」
 
マツコの言葉に私は「なるほどー」とうなずいた。
と同時に「確かにそうだけど、でもそれだけでもないような……」とも感じた。
 
私が一年ほど前に出会った「ボタニーペインティング」というアートがある。
蓮や菩提樹の葉、モンステラの葉をキャンバスに並べて絵具で色をつける。
自然の植物の葉っぱを乾燥させたものが画材なので、アートを作るのだけど絵を描く必要はない。
葉っぱを自分の好きなように並べて、自分の好きなように色を塗ると、私だけのオリジナルアートの完成だ。
 
私の知り合いの間で当時、密かに人気になっていたボタニーペインティング。
ちょうどアート制作講座の全国展開がはじまった頃だった。
私の暮らす四国ではまだボタニーペインティングはなかったが、おもしろそう! と思ったらやらずにはいられない私は、岡山で初めて講座が開かれると知ってすぐに申し込んだ。
 
講座当日、岡山駅からほど近い会場のコワーキングスペースに向かった。
ドアを開けると私と同じようにボタニーペインティングは初めてという人たちが集まっていた。女性ばかり私を入れて5人。
男性は講師の先生ひとり。
 
グラフィックデザイナーが本業だという先生は、東南アジアを旅したときに蓮の葉を貼って色をつけた絵をおみやげものとして売っているのに出会い、それを誰でも作れるアートとして日本に広めることができないかと考え、ボタニーペインティングを考案したと説明してくれた。
 
さっそく練習用の紙に菩提樹の葉を2枚並べ、本番で作りたい色をイメージして色を塗ってみる。
ブルーとピンクのグラデーションできらきらさせたい、というイメージ通りに淡くきれいな色に仕上がった。
うん、きれい。これならできるかも。
 
作りたいサイズの木製パネルを選んでいざ本番。
私は基本の正方形パネルを2枚連結させて41㎝×82㎝の大型作品を作ることにした。
まず色のついていない状態で葉をどう並べるかシミュレーションしてみる。
いろいろ配置を変えてみるがどうもしっくりこない。
私「先生、どうしたらもっとよくなりますか?」
先生「えーいまので完璧ですよ。完璧ですけど……そうだなあ、こんなのどうですか」
先生が少し手直ししただけで蓮の葉が流れるように美しく並んだ。
私「わぁ素敵。これがいいです。ありがとうございます」
 
蓮と菩提樹の葉の並びを決めたらパネルにのりづけ。
のりが乾くのを待つ間、自然の色のままの作品をゆったり眺める。
私、やっぱり植物とかお花とか好きだな。
 
そしてスポンジと刷毛を使って絵具で色つけ。
まず蓮の葉から1枚ずつ色をつけていく。
明るいブルーにしたから次の1枚はくすんだピンク、その次は紫…。
できあがったのは最初にイメージしていたブルーとピンクのグラデーションではなく1枚1枚色の違うリズミカルな寒色系だった。
先生「田中さん、イメージ通りの色ができていて素晴らしいじゃないですか」
私「そうですか先生。頭で考えていたのとはちょっと違うものを手が作ったんです。でもそれがなんだかおもしろい」
 
蓮のあとは背景になる菩提樹の葉の色つけ。
私「先生、何色にしたらいいと思います?」
先生「白でしょう。水をできるだけ少なくスポンジで葉脈に押し込むのがこつです」
先生のアドバイスの通りにしていくと、パネルの木の色を透かしてレースのような美しい葉脈が姿を現した。
先生「お! これはいいじゃないですか。こんな風になるとは思わなかった。田中さん、この技法にオリジナルの名前をつけてくださいよ」
私「えーいいんですか(笑) 偶然の産物ですねぇ」
 
最後にニスを塗って完成した作品は、初めてにしては我ながら上出来だった。
なんだろう、すごく楽しいぞ。
私……いま癒されてる。
 
アートってどこか特別なものだと思っていた。
美術教育を受けて確かな技術と優れた才能をもった人だけが、アーティストと名乗るのを許される。
私はそんなの何もない。私にはできない。
 
でも、私はアートが好き。
美しいもの。豊かなもの。そんな世界に触れていたい。
そして私の手でそれを作ってみたい。
絵心もないし不器用だから自分には無理と諦めていた。
ボタニーペインティングはそんな小さく傷ついた心を癒してくれた。
 
教育も技術も才能もなくてもアートは作れるんだよ。
誰でもアーティストなんだよ。
楽しむ心があればいいんだよ。
そう教わった気がした。
 
アートはラーメン屋ランキングだ。
家系ラーメンが好きな人、ばりかた細麺の博多とんこつが好きな人、あっさり塩ラーメンが好きな人。
全国の名店食べ歩きが趣味の人。
近所の昔ながらの中華そばを愛する人。
お店の味を研究して自宅で再現することに余念がない人。
いつもはラーメンを食べないけど一度だけ食べたあの味が忘れられない人。
 
好みも楽しみ方も人それぞれ。
たくさんの人の思いを寄せ集めてラーメン屋ランキングはできている。
 
アートの世界も同じ。
作る人の数だけ、観る人の数だけ、好みも楽しみ方もある。
世界の名だたる巨匠も。
はじめて絵筆をにぎった幼い子供も。
アートが好きだったことを忘れかけていた私も。
みんなランキングのメンバーだ。
あなたはどの味が好きですか?
 
 
 
 

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2019-06-28 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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