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メディアグランプリ

ハリネズミは大阪城


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:三島ちせ(ライティング・ゼミ特講)
 
ハリネズミは、難攻不落の城と知られた大阪城の様な動物だ。戦闘力に例えるならば、小動物ながら防御力100・攻撃力0と防御だけはめっぽう強い。熱帯魚やカメの様な観賞動物で、犬猫の様に一緒に戯れたり、呼んでも寄って来ないうえに人には懐かない、ちょっと一癖ある動物なのだ。
 
今日本でなんらかのペットを飼育している家庭は3割*を超える空前のペットブーム。そんな中でもハリネズミは、犬の様に散歩の必要が無く、猫の様に鳴かず、魚の様に小スペースで飼うことが出来る。マンション住まいでも飼育がし易い部類の小動物だ。
 
かくいう、私もハリネズミを飼っている。実は、私は動物が苦手だ。イヌに噛まれてトラウマになっている。道端で見つけたら、噛まれない様に極力離れて忍者の如く気配を消す努力をする。でないと尻尾を振り振り目をキラキラさせながら寄ってくるからだ。ネコには我が家をトイレ認定され、長年糞害に悩まされている。立派な糞を玄関先に置き土産するのが日課のようで、朝玄関を開けた時にふわっと風に乗って匂う瞬間には辟易する。気づかす誤って踏んづけた事は数知れず。小さい頃近所の子とゴム跳び遊びをしていた時、普段は跳べ無い高さを飛べた瞬間の達成感と、同時に踏んづけた時のズルっと靴越しに伝わる感触。正に天国から地獄にジェットコースターの如く落とされた気持は誰にもわかるまい。
かくして、私は動物に何かと縁があるみたいだが、極力動物から避けるように人生を歩んできたのだった。
 
そんな私がハリネズミを飼うキッカケはひょんな偶然からだった。友人が「ハリネズミを飼わない? 赤ちゃんが産まれたんだ」と打診して来たが即座に、「サボテンすら枯らす私に動物の世話ができるわけが無い」と断った。
 
当時、私は新婚だったが夫は単身赴任で家に独りぼっち。毎日が寂しくて仕方が無かった。友人と出かけたら楽しかったが、灯火の消えた暗い部屋に帰るのは、我が家なのにビジネスホテルの様に無機質な感じがした。夫を思いながら更ける独りの夜は、思い描いていた生活とはかけ離れた毎日だった。
 
そんなある日、「そう言えば今日友達にハリネズミ飼わない? と言われたけど要らんよね」と単身赴任から戻っていた夫に話すといきなり快諾された。私が飼う飼わないと言ってないにも関わらずだ。結局、動物大好きな夫の乗り気に押される様に、飼う事がトントン拍子に決まったのであった。
 
ハリネズミは名前に現される様に、体は針に覆われ、刺さると痛いのだ。針は髪の毛や爪と同じケラチンで出来ており、アルミ缶なら突き破る破壊力を持っていると、たまたま見たNHK番組で言っていた。抱っこしようにも、水揚げされたフグのように全身ハリハリで、怒ると触るコツが全く分からない。飼育書を読み、インターネットで調べても指南書通りにはいかないのが世の常だ。なかなか抱っこも出来ない、呼んでも来ない、夜行性で昼間は寝っぱなし。狭くて暗い所を好みネズミというよりもモグラのようだった。だが、いざ飼ってみると、ツンデレならぬツンツンな気まぐれで、デレの部分は餌をやっても全く見せない。冬の寒い日には、ネコがコタツで丸くなるように、アフリカ原産のハリネズミもコタツで丸くなった。世話しても全く懐かないが、慣れてはくれた。
 
ハリネズミの飼育には、針以外にも厄介なことがあった。暑すぎてもダメ寒すぎてもダメ、温度の変化には敏感だ。温度調整に、冬はヒーターで温め、夏の冷房は必須で電気代は当然ながら上がった。春の寒暖差の激しい季節にはサーモスタットの自動温度調整が大活躍した。警戒心が強く、日中は刺激しない様に努めた。環境が良かったのか、それとも飼主との相性が良かったのか、食欲旺盛な我が家のハリネズミは、ぷくぷくと成長しつづけた。気がつけば平均値を大きく上回る500mlのペットボトルよりも重い650gまで増えた。食事制限やダイエット食で工夫を凝らしたが、成長期過ぎ成熟期を迎えた今も尚、何故か成長している。
 
ハリネズミだけは愛おしく感じる様になり、ハリネズミがいない生活なんて想像も付かない。No ハリネズミ、No ライフと言った所だろうか。
今では、我が家の中心的存在になり、存在自体が癒しになっている。夫婦喧嘩をした時は鎹(かすがい)となり、仕事でクタクタになった時は、抱っこするだけで疲れが取れた。夫は帰ってくると私より先にハリネズミに一目散に駆け寄り、時間を忘れたかの様にニヤニヤしながら見つめている。
 
蝶よ花よとお姫様の様に育てた我が家のハリネズミは現在2歳半。動物が苦手にも関わらず、気がつけばすっかりハリネズミ中心の生活になっていた。
 
最近は、根負けしたのか抱っこしてマッサージをすると気持良さそうに、膝の上で目を閉じている。つまり、難攻不落の大阪城を家康の様に陥落させるのではなく、和解が成立したのであった。
 
*出典:内閣府2010年「動物愛護に関する世論調査」
 
 
 
 
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2019-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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