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メディアグランプリ

変態がつくるかき氷で、夏が来る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:岸本苑子(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
これを食べずして夏は終われない、というかき氷がある。
雑誌のかき氷特集に載っているお店にもいくつも行ったけれど、やっぱりあのかき氷を食べないと、と思ってしまう。
 
地元の商店街にあるそのお店は、普段はおばあちゃんが店頭でお団子を売っているような、地味な甘味屋さんだ。
おしゃれでもなければ、目を引く店構えでもない。
うっかり通り過ぎてしまいそうなそのお店は、夏になると週末2時間待ちは当たり前、という超人気店に変身する。
 
と言っても、単価1000円以上のかき氷屋さんに行ったことがある人なら、「2時間待ちなんてよくあることでしょ」と思うかもしれない。
確かに、某有名店などは整理券をもらうのに1時間待って、実際食べられるのはその4時間後、みたいな夢の国も真っ青な待ち時間だったりする。
それに比べれば、2時間待ちはたいしたことがないかもしれない。
 
でも、考えてもみてほしい。
雑誌の特集にもほとんど載らず、地域住民しか用がないような商店街にある甘味屋さんのかき氷に、2時間も人が並ぶその意味を。
 
このお店の店主を、わたしはひそかに「かき氷変態」と呼んでいる。
 
いやいや、人様を変態呼ばわりするのはいかがなものか。
別の言い方をするなら、「研究者」がいいかもしれない。大学で「授業」という名のお団子を売りつつ、「専門」であるかき氷に生涯を捧げた研究者だ。
「これとあれはどう違うんですか?」
などとうっかり聞いてしまうと、予想の10倍くらいの情報が返ってくる。
生き生きとウンチクを語るその姿は、まさしく研究者……というより、正直オタクっぽい。
そう、カテゴリーとしては、「さかなクン」だ。さかなクンは大学教授だけれど、もともと無類の魚オタクである。当然知識は豊富だし、語りだしたらとまらない。
ひとつのことに突き抜けたその専門性と愛をひっくるめて、わたしは「変態」という呼び方をしている。
 
さて、店主の変態っぷりは、シロップを見れば一目瞭然だ。
フルーツ系だけで常時10種類程度そろえていて、もちろん旬の果物を使うから、夏には夏の、冬には冬の味がある。
当たり前のように指定農園からの直送で、店主自ら買い付けに行くのだとか。果物の出来によっては、入荷したけれどお店には出さないこともあるくらいに、品質に徹底している。
ちなみにこの夏のセレクションの一部は、白桃、南高梅、マスカット、完熟マンゴーなど。ものによっては同じ果物でも、価格が2種類あったりする。品種が違うらしい。
 
定番のシロップには抹茶だけでなく、珈琲に紅茶にワインもあって、これまた普通の専門店より幅が広い。
ここでも店主のこだわりようは突き抜けていて、例えば抹茶系には、茶葉の産地とグレード、小豆金時の有無によって10種類くらいのバリエーションがある。
申し訳ないけれど、素人には違いがまったく分からない。
今年の最高級の茶葉を使用した抹茶玉露金時は、3000円を超えていた。
だれが注文するのだろうと、心配になってしまう。
 
わたしが店主を「オタク」ではなく「変態」と呼びたい気持ちが、お分かりいただけるだろうか。
相当の玄人でないと、彼についていくことはできないのでは、と思わせるだけの情熱が、そこにある。
 
そんな重たすぎる愛のこもったかき氷の中から、わたしはこの夏、シャインマスカットを選んだ。
頂点に乗せられたマスカットは、一粒いくらで値段がつきそうなほどに大粒で、それだけで期待が高まる。
真っ白な天然氷(氷のことは割愛するが、言うまでもなく美味しい)の上にかけられた、透明な黄緑色のシロップの、その美しさ。
マスカットジュースをそのまま飲んでいるかのように風味豊かなシロップは、最後まで味があるのに甘すぎない、氷との絶妙なバランスを保っている。
インスタ映えに振りきった、デコレーションもりもりのかき氷とは真逆のその潔さは、まるで緑の森に流れる谷川のようなすがすがしさを、口にする者に与えてくれる……。
なんてポエム調の感想を言いたくなるほど、さわやかなのだ。
 
この店主の情熱のお値段は、1700円。
専門店でもちょっと高いな、という価格だけれど、これでもこのお店では中堅どころといったところの値段だ。
でもこのお値段で、これだけの幸せが味わえるなら……うん、また来ちゃおうかな。
 
ここのかき氷を食べないと、夏は終われない。
 
本音を言うと、夏の始まりにも食べたいし、終わる前にも食べたい。秋は巨峰、冬は青みかん、春にはあまおうを食べて、そしてまた初夏には梅を味わいたい。
 
店主の変態っぷりにほれ込んだわたしは、夏は暑いさなかに2時間並び、冬にはカイロを握りしめて、店主の語るウンチクを半分聞き流しながら、どれを食べようかと頭を悩ませるのだ。
 
 
 
 
***
 
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2019-08-11 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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