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「家族葬」で見送るということ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:高山 聖子(ライティング・ゼミ夏休み集中コース)
 
 
この6月、夫の母が88歳で息を引き取った。
今でも思い出すと涙が浮かんでくる、優しい義母の穏やかな最期だった。
 
 
我が家は家族の意見が一致して、近年増えているという「家族葬」で義母を見送ることにした。
 
 
全てが済んだ今思うのは、「家族葬って、夏休みの帰郷のようだった」ということだ。
 
 
家族葬にした理由はいくつもあるが、第一に、義母ならきっと「家族だけで、静かに見送って欲しい」と言うだろうと思ったことだ。
 
 
それに、義母の親族も皆高齢で集まるのが難しいこと、義母は県外出身のため、近所に知り合いがあまりいなかったということもある。
 
 
このような場合は、家族葬を選択肢に入れてもいいと思う。
 
 
反対に、故人に知り合いや親戚が多い場合や、近所付き合いがある場合、現役を退いて間がない場合などは、家族葬ではなく一般葬にした方がいいと思う。
 
 
そういう場合は、葬儀が終わった後での弔問や、お香典の対応に追われることが多いと聞くからだ。
 
 
また、今回のことで葬儀の方法を決める時に一番大切なのは、家族の意見の一致だということも知った。
葬儀場の担当者が「よく葬儀の方法でもめる家がある」と言っていた。
 
 
家族葬にする場合は、前もって親族の了承を得ておくことが大切らしいのだ。
 
 
我が家の場合は、遠方の親族には義母の闘病中に連絡をし、家族葬にすることの了承を得ておいた。
結果的には、何人かの親族は生前にお見舞いに来てくれて、義母もうれしかったのではないかと思う。
 
 
「それでも、うちも家族葬がいい」とおっしゃる方は多いと思う。
そこで、少しでも記憶が鮮やかなうちに、「家族葬って、普通の葬儀とどう違うの?」という疑問にお答えできれば……と思う。
 
 
我が家の場合、義母が倒れてから数カ月の時間があったため、病院通いの合間に、いくつかの葬儀場を見学する余裕があった。
 
 
そこで分かったことがある。
まず、近年ではほぼ全ての葬儀場に、家族葬用の部屋があること。
部屋の新しさや雰囲気、広さなどは、葬儀場によって違いがあるので、もし時間的な余裕があるなら、ちゃんと見せてもらった方がいい。
 
 
新築でホテルのように豪華だが、価格が高いところもあれば、ほどほどの価格でアットホームな雰囲気だが、人数があまり入らないところもある。
 
 
どれくらいの人数を呼ぶかによって、選ぶ葬儀場も違ってくるし、できれば何度も往復することを考えて、自宅からあまり遠くないところを選びたい。
 
 
しかし、「ここがいい」と思っていても、葬儀の日取りが何件も重なってしまった場合、ほかの葬儀場にせざるを得ないこともある。
 
 
大手葬儀社の会員などになっていれば別だが、そうでない場合は、いくつか候補を挙げておくといい。
 
 
実は、どの葬儀場でも言われたのが、「家族葬だと、確かに費用はお安いのですが、お香典があまり集まらないので、最終的には一般葬とあまり変わらない費用になることもあります」ということだ。
 
 
確かに、こじんまりした部屋を使用する家族葬でも、セレモニーとして行うことは一般葬と変わらないので、お香典の額にもよるが、最終的にかかる費用はあまり変わらないように思う。
 
 
だから、「安いから家族葬にしたい」とお考えの場合は、シンプルなプランで費用を抑えてくれる葬儀場を探してみるのがいいと思う。
 
 
さて、入院中の病院で義母が亡くなった時、しばし涙にくれた家族だったが、悲しんでいる暇はそんなにない。
故人をしっかりと見送るため、のこされた家族には、やらなければならないことがたくさんあるのだ。
 
 
まず、真っ先にすることは葬儀場への電話だ。
我が家は、幸いにも第一希望の葬儀場の予約が取れたので、すぐに病院へ義母をお迎えに来てもらう手はずを整えた。
 
 
その後は、菩提(ぼだい)寺へ連絡し、通夜や葬儀の日取りを伝えた。
 
 
葬儀場へ移ってからは、とにかく、葬儀場の担当者に全てお任せだ。
プロに任せておけば、何も心配はいらない。
 
 
僧侶による枕経(まくらぎょう)も終わると、後は、翌日以降の通夜と、葬儀に備えて、家族葬用の部屋でゆっくり故人の思い出話などをして、時間を過ごせばいい。
 
 
家族葬の場合、葬儀場にもよるが、出棺まで同じ部屋で行う葬儀場が多いようだ。
基本的に移動がないのと、祭壇以外は広めの和室なので、ちょっとした仮の住まいのような雰囲気だ。
 
 
お通夜の夜に夫と、夫の姉がその部屋に宿泊したのだが、とてもくつろげたとのことだった。
 
 
「お茶でも飲むかね?」という義母の声が、今にもしてきそうな、そんな雰囲気だったと後から教えてくれた。
 
 
静かな和室に、母を囲んで姉弟が座り、ゆっくりとお茶を飲む。
 
 
家族だけが知っている昔話に花を咲かせて、義母をなぐさめたという。
 
 
通夜、葬儀、出棺、収骨……義母の見送りは滞りなく、終わった。
 
 
こうやって思い返してみると、我が家のお葬式は、お葬式であってお葬式でないような感じだった。
 
 
夏休み、田舎に帰郷すると、まだ元気だった義母が迎えてくれる。
お茶でも飲みながら、いろいろな話に花を咲かせる。
休みが終わると、私たちは帰っていく。
 
 
「バイバイ。また来るからね。それまで元気でね」
 
 
まるで、そんな印象を抱かせるような、アットホームなお葬式だった。
 
 
葬儀場のこじんまりした和室で、義母がニコニコ手を振っている顔が目に浮かぶようだ。
 
 
我が家の家族葬について書いてみたが、実際には、一般葬、家族葬、それぞれに良いところがある。
 
 
一般葬の良いところは、故人をしのんでくれる多くの人が、最後のお別れができることだろう。
 
 
家族葬の良いところは、会葬者への対応の手間がなく、遺族がゆっくりと故人に向き合う時間を持てることだ。
 
 
でも、どちらを選んでも、一番大切なのは、故人のことを思う気持ち。
 
 
故人が心安らかに旅立てるように……という気持ちがあれば、きっと伝わる。
 
 
だから、実は葬儀の形にはそんなにこだわらなくていいんじゃないか、とも思うのだ。

 
 
 
 
 

***

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2019-08-18 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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