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メディアグランプリ

「会話ベタ」が相槌ひとつで楽になる話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:砂口智子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
私は“何か良いこと言わなければ症候群”に罹っている。
覚えはないだろうか? 気の乗らない飲み会、外部セミナーの休憩時間、婚活イベントのフリートーク。いざ人を前にすると急激に自信がなくなり、頭が真っ白になる。自ら意思をもって参加したはずだが「誰だよ、行こうって言ったやつ!」と過去の判断を悔いる。
 
目の前の相手を、まるで“ショー”の様に楽しませればならない。
そんな思考に陥ることを私は“何か良いこと言わなければ症候群”と呼んでいる。沈黙には自らネタを披露し、無ければ、せめても会話の糸口を発掘・提供しなければならないという考え。
 
本来、会話が盛り上がるかどうかの責任(?)はイーブンだと理解はしている。しかし会話とは、見聞を広めたり、価値観を擦り合わせたりすることだと思う。そう思うと自分の中から“何か意味のあること”例えば、その相手の興味のある分野の話であったり、発見だったりを話さねばならない気がしてしまうのだ。
 
そうなると親しい間柄ならまだしも、よく知らない、取っ掛かりの無い相手に対して会話が億劫で仕方ない。愛想笑いしながら必死に自分の脳を漁っても、出社して残業して家帰って寝て……ここ5年位そんな感じですけど! と叫びたくなる。みんなどうやって会話楽しんでいるのか? 起死回生の糸口は見えない。
 
そんな折、私は大阪の実家に帰省した。
久しぶりに会う地元の友人たちと楽しく飲んだ帰りにふと、あることに気が付いた。
 
腹筋が引き攣り、声が枯れるかと思うほど盛り上がった飲み会だったが、改めて話した内容を思いだしてみると、驚くほど些細な出来事の話ばかりだった。
「彼氏の食器洗いが雑」「上司の柔軟剤がいい匂いで、女子よりいい匂い」など
何故あんなに笑っていたのか、冷静になると分からない程に。
一体いつもの盛り上がらない会話と何が違うのか……?
 
暫く考えると答えが分かった。それは話す“スピード”と“リズム”である。
「この前彼氏がさあ……」 「へぇ~、それで?」位のところを
「この前彼氏がさあ……」 「あ~はいはいはいはい、わかるわかる、で?」
この様に体感で4倍ほどの速さで相槌をうっていた。
 
大阪という土地柄のせいか、情報量は同じなのに、発する音の量は4倍。
しかもただ相槌が多いだけではない。なんというか“ドラム”の様に会話に強弱がつくようにリズムを刻んでいるのだ。会話している本人たちは気が付いていないが、話し手の方も絶妙にタメをつくり、見せ場では声が大きくなる。
クライマックスには決め台詞と共に笑い声が響く。
 
そこで私にある風景が浮かんだ。ジャズのセッションだ。
ジャズのセッションは、ベース、ドラム、ギター等、様々な楽器が即興で演奏し曲を作り上げる。実は会話もそれと同じではないだろうか?
 
同じリズムを刻み、盛り上がりに合わせて音の強弱がつく。曲は何かストーリーを含んでいるが、演奏者はどうだろう? 演奏して音を合わせるだけで場の一体感を感じ、この上なく楽しいのではないだろうか。 自由に曲を作れれば尚更。
今まで会話を億劫にしていた“何か意味のあること”が無くても、リズムが合えばそれだけで《楽しい曲》《楽しい会話》になるのではないか。
 
会話は音楽の様に楽しめると気付いた時、とある同僚の女性を思いだした。
他の同僚が口を揃えて言うのが、その女性にバカウケした話題を、自信をもって他の場で披露すると必ず“だだスベリ”するという。私ははじめ、その女性の笑いの沸点が低いのかと思っていた。でも実際は違った。彼女と話すと不思議と言葉がするすると出てくる。何故かもっと話したくなる。きっと話し手が気持ちよく話せるリズムを打ち出す、彼女は相槌が上手い“名ドラマー”なのだ。
 
言葉は“意味”と“音”で出来ている。
短歌が心地いいように、ラップで韻を踏むように、言葉の意味だけでない“音”の心地良さが存在しているのだ。それに気が付くと、今まで会話に対し及び腰だった私に急に光が差した気がした。
 
見聞を広めたり、価値観を擦り合わせたりすることだけが、会話の理由と思い、肩肘を張り過ぎていた。自分の中から何か捻りだそうと躍起になり、勝手にうんざりしていた。
「昨日の晩御飯を失敗した」「好きなアイドルがいる」
 
そんな些細な話題でも、音を合わせる楽しみ、一体感を味わうことが出来れば十分に会話を楽しむことが出来るのだ。自分がトランペットかピアノかそれともドラムかは分からない。でもリラックスして、場のリズムに合わせて声を出せば、それだけできっと会話を楽しめる。
 
気の乗らない飲み会、セミナーの合間、婚活のフリートーク。
“何か良いこと言わなければ症候群”になったら是非“相槌”から試してみて欲しい。はじめは物足りなく感じるかもしれないが、相手と波長が合ってくるときっと楽しくなってくる。十分リラックスが出来たら、その時は貴方の些細なことを話してみて欲しい。今まで以上に自然に話すことが出来るはずだ。
たとえ自分の事が話せなくても「今日は“いい音”奏でたな、またセッションやりたいな~」位力を抜ければ、憂鬱な時間は終わりだ。

 
 
 
 
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2019-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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