メディアグランプリ

宝塚歌劇は甲子園だ


 
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

【10月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

 
記事:松下梨花子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
宝塚歌劇団という劇団の名前を聞いたことがないという人は、この日本にはいないのではないでしょうか。女性だけで構成された劇団、ということで非常に有名だと思います。多くの方が「一生に一度は観てみたいですよね」と言いながら、結局一度も触れずに終わるコンテンツの代表格ではないでしょうか。
その特殊性やきらびやかさから近寄りがたいものと思われがちな宝塚歌劇団ですが、実は、これもまた多くの日本人がよく知っているあるものととても良く似た魅力を持っているのです。
 
ずばり、宝塚歌劇は甲子園である。
 
甲子園といえば、言わずと知れた高校野球の最高決戦です。毎年春と夏に催されるこの大会のために、全国の高校球児たちは青春のすべてをかけて鍛錬を重ねます。そして試合の模様は全国のテレビで生中継され、多くの人に感動を与えます。
汗と泥にまみれた球児たちの熱い戦いと、きらびやかな女性たちの劇団は、一見するととても遠いところにあるもののように感じられます。2者の大きな共通点は、全力を尽くしたパフォーマンスが胸を打ち、感動を与えるということです。
 
宝塚歌劇団に入団するためには、まず宝塚音楽学校という学校に入学し、2年間かけて歌や踊り、芝居といった芸事を学ぶ必要があります。この宝塚音楽学校は日本に1つしかなく、1学年の入学者はたったの40名程度。「東大に入るより音楽学校に入るほうが難しい」と言われるほどの高倍率です。しかも受験できるのは15歳~18歳という4年間のみ。全国の宝塚に憧れる少女たちは、入り口の段階で血のにじむような努力を積んで集まるのです。
2年間の音楽学校生活を終えると、晴れて宝塚歌劇団の団員となります。ここで特殊である点は、入団してからも劇団員はみな「生徒」と呼ばれることです。入団してからの年数は「研究科〇年」として学年で表されます。これはつまり、団員たちは入団して、舞台に立つようになってからも「学び育ち続ける者」という立場であるという意味です。
一般的な感覚で考えると、お金をもらってパフォーマンスをみせるようになればそこからプロフェッショナルで、生徒という立場とは違います。しかし宝塚では全員が「生徒」であり続けることを公言しているのです。たとえ芸歴30年を超えたベテラン団員だったとしても、です!
 
その理由は様々ですが、私はそこにこそ宝塚の大きな魅力があると思います。全員が生徒であり、まだまだ芸は未完成。でも、未完成であるからこそ必死により高みを目指し、日々進化しようともがくのです。
また、宝塚歌劇団の団員は、入団すれば必ず舞台に立つことになります。基本的に仕事がなくなることはなく、役柄の大きさや出演場面の多さに違いはありますが、誰もが必ず自分の出番を持っています。どんなに入団したてで、何もわかっていなかったとしても、自分のパフォーマンスをお客様の目に触れさせ続けなければならないのです。
そのため、実はよく見ると演者のかたの技術的なレベルにはばらつきがあったりします。舞台の端のほうでは、入団したての研究科1年生や2年生が必死に踊っていることが多いです。彼女たち「下級生」は、舞台の中心にたつベテラン団員やトップスターのレベルにはとても及ばない状態。おそらく外部の劇団であれば、舞台に上がるのはもう少し先のことになるでしょう。
また、学年が上がってきても生徒にはそれぞれ「得意」「不得意」がある場合が多いです。もちろん一般人とはかけ離れた高い次元の話ではありますが、「この生徒さんは歌がとても上手だけど、それに比べるとダンスは不得意では?」「お芝居がとても素敵だけど、活舌がよくないのでセリフが聞き取りにくいかもしれない……」などといった声はいつでも、どの生徒さんに対してもよく聞かれます。普通に考えれば、観客はそれに対して文句を言い、「こんな役者は使うべきではない」と言われるのが道理だと思います。しかしながら、宝塚歌劇の団員はみな勉強中の「生徒」であるため、その弱さを一歩ずつ乗り越える過程ごと、パフォーマンスなのです。
もちろん、それは生徒さんたち自身が「未熟でもよい」と思っているということとは全く異なります。そもそも芸の道に「完成」や「完璧な成熟」といったゴールはきっとありません。そのようななかで、それぞれの生徒たちが、毎公演で今出せるベストをギリギリまで発揮しようする努力の過程こそが、宝塚歌劇の大きな魅力なのです。
 
ただうまい野球を見てゲームの内容を楽しみたければ、プロ野球やメジャーリーグを観るのが一番でしょう。しかし、毎年夏になると甲子園のテレビ中継を観て、縁もゆかりもない学校の球児たちのプレーになぜか涙を流してしまったりします。そこが球場であれ、ステージの上であれ、全力を尽くして燃え上がる人々の努力の結晶はきらめいて見えるのだと思います。
 
 
 
 
*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。
http://tenro-in.com/zemi/97290

天狼院書店「東京天狼院」 〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F 東京天狼院への行き方詳細はこちら

天狼院書店「福岡天狼院」 〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階

天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN 〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5

【天狼院書店へのお問い合わせ】

【天狼院公式Facebookページ】 天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


2019-09-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事