週刊READING LIFE vol.58

自分をどれだけ知っているかで大人の価値が変わる~チュート徳井さんが知らなかったことは「税金」のことではなく、「自分自身」のことだった~《週刊READING LIFE Vol.58 「大人」のリアル》


記事:坂田幸太郎(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 

「チュートリアルの徳井がADHD!?」
私は友人からそんな噂を聞き、つかさず、「チュートリアル 徳井」でグーグル検索をした。すると予測ワードですぐに「ADHD」と出た。
確かに世間ではチュートリアル徳井さんがADHDなのではないか、という憶測が飛び交っているようだった。
なぜ、そのような憶測が飛び交うようになったのか。
 
発端は、徳井さんが納税を怠っていたという報道がされたところから始まる。
その金額は、約1億円。
その大金を未納にしていたという報道が全ての火種だ。
世間は大金持ちを嫌う。
そして、大金持ちの不祥事が大好きな生き物の集合体だ。
この未納額が小さければ笑い話になっていたかもしれない。
当然、未納という罪は額の大小で、変わるものでもないが現実問題、金額と世間の怒りのバロメーターは比例している。
 
今回の騒動は烈火の如く燃えた。
3年未納で1億円は確かに笑い話にならない。
その後、徳井さんは税理士の指導のもと納税が完了したのだが、当面謹慎処分という厳しい処分を受けた。
徳井さんといえば、超売れっ子の芸人さんだ。
その独特なお笑いセンスは唯一無二。
私も、徳井さんが出演されている番組はいくつか拝見している。
とくにNetflixの「テラスハウス」に徳井さんがいないというのは、なんとも物足りなさを感じる。
個人としては早く復帰してほしいが、世間が許さなければ表には出られない。
それが、世の中というものだ。
徳井さんが復帰する日を密かに待つとしよう。
 
しかし、なぜ今回の問題が「ADHD疑惑」へと発展したのだろうか。
似たような不祥事はこれまでもあった。
調べてみると、徳井さんには「忘れっぽい」や「時間の管理が難しい」など、ADHDの方の特性と似たような部分があったという。
ご自身のTwitterでは「ガス代払い忘れてガスが止まった」などの失敗談を多く呟いていたそうだ。
そんな過去の失敗談を拾い上げた人が勝手な憶測を広めたのだろう。
今現在、徳井さんサイドは「ADHD疑惑」についてなにもコメントはしていない。
あくまで憶測だ。
もし、憶測が真実だったとしても謹慎は解けないし、納税義務が免除になるわけでもない。
故に世間はこの疑惑について議論する余地はないのだが、徳井さん本人に限ってはこの疑惑について真摯に考えなくてはいけないと勝手ながら思ってしまう。
 
徳井さんに限ったことではない。
ADHDの方の特性は特異的なものではない。
「時間にルーズ」や「物をすぐ忘れてしまう」などよくありそうな失敗談ばかりだ。
「よく遅刻する人」や、「よく忘れ物をしてしまう人」はあなたの周りにもいると思う。
もしかしたらあなた自身に心当たりがあるのかもしれない。
その時「私よく遅刻するから病気かもしれない」と思える人はどれほどいるだろうか。
徳井さんも「まさか俺がADHDだなんて」と思っているかもしれない。
「まさか」と思いながら病院に行かない人がほとんどだと思うが、私は「まさか」と思った時点で診察を受けるべきだと思う。
「まさか」と思った時点で病院に行って白黒ハッキリさせた方がいいのに、と私は感じてしまうのだが、恐らく賛同してくれる人は少ない気がする。
なぜだろうか。
それは、「自分が病気」ということが判明してしまうことが怖いのだ。
万が一本当にADHDだったらどうしよう、、、という気持ちが先行してなかなか事実を調べようとしないのだ。
その事実を受け止めて生きる方が楽な気がするのだが難しいところである。
 
ここまで、私が事実を知ることをお勧めする理由は私自身が「学習障害」というものを患っているからだ。
「学習障害」とは脳の機能障害によって、文章の読み書きや、計算に支障をきたす障害である。この障害は個人差がある。
私の場合、文字を読んで理解する力が一般の人より低かった。
「学習障害」と判明したのは15歳の時。受験勉強が身に入らないことを心配した親が私を病院に連れて行き、判明したのだ。
繊細な年頃の判明だったので、ショックは大きかったが、得たものもまた大きかった。
私は読んで理解する能力と書いて理解する能力が劣っていたため、書き取りの勉強法を辞め、ひたすら音読した。
文字を文字として理解するのではなく、音に変換し理解することで、勉強が身に入ったのだ。
「自分の苦手」と理解することは「自分の使い方」を理解することかもしれない。
私の場合、「自分の苦手」を15歳の時に理解し受け止めた。
当時は辛かったが今では親に感謝をしている。
親に病院へ連れて行ってもらわなかったら、今でも生きづらい人生を送っていたかもしれない。
 
未成年の時は周りに、「病院に連れて行ってくれる人」が大勢いる。
それは、親だったり、先生だったりするが、自分が大人になってしまったら「病院に連れて行ってくれる人」はいなくなってしまう。
会社に行けば人はいるが、あくまで他人である。
上司でさえも「あなた病気かもよ」なんて言えないだろう。
 
これが、大人の悲劇だ。
周りに自分が病気かもしれないと気づかせてくれる人がいない。
病気と気づかなくても生活に支障がない場合はいいのだが、努力をしても報われないと思う人や周りの人と温度差を感じてしまう人は、もしかしたら「自分の使い方」を理解した方が生きやすいかもしれない。
 
キングコング西野さんは、自分の行動パターンから分析し、「自分は恐らくADHDである」と公言した。
その上で、「税理士にすべてを任せている」と言った。
このように「自分の苦手」がわかれば、苦手をフォローする行動が迅速に行える。
 
また、メンタリストのdaigoさんは、ADHDの人は発想が豊かだからサラリーマンより経営者や、フリーランスに向いていると解説していた。
「自分の苦手」を知ることは時に「自分の可能性」を知ることに繋がるかもしれない。
 
大人になったら自分を知ったつもりになる。
しかし、その「知ったつもり」は、自分を窮屈にさせているのかもしれない。
障害がないとしても、自分を時折分析してみるのも悪くはない。
すぐに病院に行かなくてもグーグルで自分について調べてみるだけでもいいと思う。
なんでも、ADHDについては簡単なチェックリストをチェックするだけでわかるものもあるらしい。それをチェックするだけでも自分を知る第一歩となる。
まずは、自分を分析しようと行動に起こすこと。
大人の成長はそこから始まる。

 
 
 
 

◻︎ライタープロフィール
坂田幸太郎 26歳(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

奈良県育ち、広島在住。大阪大学文学部卒業。大学時代は考古学を専攻し、現場現物主義を東京生まれ東京育ち
10代の頃は小説家を目指し、公募に数多くの作品を出すも夢半ば挫折し、現在IT会社に勤務。
それでも書くことに、携わりたいと思いライティングゼミを受講する
今後読者に寄り添えるライター
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http://tenro-in.com/zemi/102023

 


2019-11-18 | Posted in 週刊READING LIFE vol.58

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